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まだ見たことがない光景を求めて 岩倉しおり

まだ見ぬ光景に出会うために、愛しき瞬間を集めるために。
何を心掛け、どのように行動しているのか?
カメラとともに旅するフォトグラファーたちがこだわる旅先でのMyルールを通して、旅への想いや、その人流の「世界の歩き方」に迫ります。
フォトグラファー流 “旅のMyルール” 1人目は、うつろう季節や眩しい光の中で情景を写す写真家、岩倉しおりさんです。

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まだ見たことがない光景を求めて

どんな光景が待っているんだろうと、さまざまな可能性を考えるのが楽しい

2020年 滋賀県。「早起きをして、ドライブをしながら見つけた三日月。木々の間に三日月が見えるように撮影」。

「田舎や、ゆったりとした時間が流れている落ち着いた場所へ行く旅が好きです。旅で心掛けているのは、まだ見たことがない光景を探すこと。それを叶えるために、天気や季節、自然現象などを事前に調べます。どんな光景が広がっているかを想像する時間も楽しく、旅の醍醐味のひとつです。この天気だとこう見えるかも、この季節だとこんな花が咲いているかも...などを考えると知識やアイデアが常に増えるので、どんな状況でも撮りたい写真のイメージが広がるようになっていきます。そして大切にしているのは、何より旅を楽しむこと。私は旅と写真はセットだと考えていて、どちらが先ということはありません。写真をメイン目的にした時に思うような写真が撮れなかったら残念な気持ちになりますし、写真ありきで観光などを楽しめなくなるのはもったいないです。旅自体を楽しむ。そして、スケジュールや先入観に捉われず、好きと思ったらシャッターを切る。その気持ちが、いい写真を撮ることにつながっていると思います」。

【rule:01】日の出と日の入りの時間、月の満ち欠けを調べる

2022年 徳島県。「日没時間や月の満ち欠けを事前に調べ、月の沈む方向で撮影場所を決めました。山登りをして、山頂で日没後に撮った一枚」。

「これは旅に限らず日々調べていますが、旅先ではさらに方角なども合わせて調べます。朝日や夕日、月の撮影がメインの目的ではありませんが、これを調べることでいろいろな可能性が広がり、旅に行くのが楽しみに。たとえば三日月が何時に出るからその方向に行ってみようとか、新月だから夜は満天の星が見えるかも、とか。宿は朝日の方角だから、早起きしたら部屋に素敵な光が入ってくるかも...など、旅に出る前から、どんな光景が待っているかと想像してワクワクした気持ちになります」。

【rule:02】いつもは起きていない時間を楽しむ

2021年 高知県。「深夜に出発し、夜が明ける前に海に到着。夜明けから朝日までの時間に撮影しました。夜明け前の淡い色味がとても気に入っています」。

「ルール1につながることですが、事前に今後の雲の動きを調べます。良さそうであれば深夜や早朝などに一度起きてみて、行きたい方角の空がイメージに合いそうなら出発します。いつもは起きていない時間に行動するとなんだか特別な気がして、より充実した旅になります」。

【rule:03】天気によって見える景色を想像して行動する

2022年 鳥取県。「雪が降りそうだったので、鳥取へ。大粒の雪が写真にもはっきり写りました。静寂な、白と黒だけの世界」。

「良い天気=晴れ、というわけではないと思っています。雨や曇り、雪や霧の天気だって素敵です。海で夕日を見る予定なのに雨が降ってきたとしても、日没後の町へ行ってみたら、淡い水色の情景に町灯りがポツポツと灯っているかもしれない。朝日が見たかったのに真っ白な霧で何も見えなくても、ランプを持っていったら幻想的な光景になるかもしれない。星空が見たくて深夜に起きたのに雪が降っていたとしても、光があるところへ行けば、雪が光って白い玉ボケとなって面白い写真が撮れるかもしれない。こんな風に、いつだってその天気から見える光景を想像します」。

2022年 北海道。「宿に到着した際、車の窓ガラスに雪の結晶ができていて、美しいと思って撮った一枚」。

【rule:04】スケジュールはおおまかに

2019年 香川県。「船で、夏の島旅へ。船の中に入ってきた光を捉えることを意識しました」。

「旅に出る時は、おおよその行きたい場所しか決めません。事前に調べると有名な場所が出てきますが、知られていない素敵な場所もたくさんあるはず。それを見つけるために、レンタカーやレンタサイクルで行動することが多いです。まだ知られていない場所だったり、入道雲や虹が出ていたり...撮りたい瞬間って、突然やって来たりするものです。さらに気になる場所は、自分の足で歩いて探索します。行き当たりばったりで巡ることが多いので、スケジュールはおおまかにしておきます」。

【rule:05】いろいろな想定をして荷物の準備を

2021年 高知県。「水中カメラを持参。川の水が青く、どこまでも透明で美しかったのを覚えています」。

「さまざまなパターンを想定し、それぞれの場所や季節感、天気に合いそうな服などを準備します。また、場所や光景によってカメラを選んで使っているため、カメラはすべて持って行きます。私の場合、フィルムカメラ(メイン)、デジタルカメラ(昼用)、デジタルカメラ(夜用)、ハーフカメラ(思い出用)の4台をシーンによって使い分けています。行き先によってはランプなどの小道具や三脚、水中カメラなども持参します」。

2018年 北海道。「夜に雪が降ってきたので、街灯の光に持参したランプの光を加えて撮影。雪が白い玉ボケになり、幻想的に」。

岩倉しおり

写真家 香川県出身。おもにフィルムカメラにて撮影。地元、香川県で撮影した写真を中心にSNSで作品を発表する他、写真展の開催、CDジャケットや書籍のカバー、広告写真などを手掛ける。
愛用カメラ:CONTAX Aria、FUJIFILM GFX50R、Sony α 7C
愛用レンズ:Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4

岩倉しおり Instagram
岩倉しおり X

GENIC vol.68【フォトグラファー流「旅のMyルール」】
Edit:Satoko Takeda

GENIC vol.68

10月号の特集は「旅と写真と」。 まだ見ぬ光景を求めて、新しい出逢いに期待して、私たちは旅に出ます。どんな時も旅することを諦めず、その想いを持ち続けてきました。ふたたび動き出した時計を止めずに、「いつか」という言葉を捨てて。写真は旅する原動力。今すぐカメラを持って、日本へ、世界へ。約2年ぶりの旅写真特集。写真家、表現者たちそれぞれの「旅のフレーム」をたっぷりとお届けします。

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