岩倉しおり
写真家 香川県出身・在住。うつろう季節、光を大切におもにフィルムカメラにて撮影している。地元、香川県で撮影した写真を中心にSNSで作品を発表するほか、写真展の開催、CDジャケットや書籍のカバー、広告写真などを手掛ける。2019年3月、初の写真集『さよならは青色』(KADOKAWA)を出版。
愛用カメラ:CONTAX Aria
愛用レンズ:Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4
物語を感じる写真
「足元に落ちる木漏れ日がゆらゆらして、とてもきれいだったので、上からのアングルで撮影。木漏れ日を撮る時は実際に自分がその場所に立って、自分にあたる光の形を見てから、被写体の位置を決めることもあります」。
一眼レフを初めて持った時、撮りたいと思ったのは“人”でした
「人を撮り始めたことに大きなきっかけはないのですが、初めて一眼レフを持った時から、まず撮りたいと思ったのは人でした。その後に、風景や光、季節などが入ってきたように思います。自分の作品を言語化するのは難しいですが、物語を感じる写真でしょうか。そこに人がいることで、物語性が加わるのが人を撮る楽しさだと思います。ただ、人だけを撮ろうとは思っていません。そこにある風景に光、季節、気温…すべて写真に写ってほしいと思い、シャッターを切っています」。
「カメラのレンズに反射した光がきれいに見えました。高知県で撮った1枚です」。
「浴衣とえりあしが美しいなと思い、あえて日の丸構図にはせずに、顔が見えないように撮影しました。香川にはのんびりとした日本の夏の光景があり、どこか懐かしい感じで、誰かの記憶の中のような気持ちになります」。
人がいることで物語性が加わる
「爽やかな夏のコーディネートに、青と白の壁がとても合うなと思いました」。
「もともと、絵を描くことが子供の時から好きで、画家になりたかったのですが、自分が表現したいものを描くツールとして写真が自分には合っているのかなと感じました。だから自分が思い描いているものを絵にするように、1枚の絵を完成させるようなイメージで写真を撮っています。私の場合は人物を魅力的に撮る、というような写真ではないと思うんです。こんな世界に入り込んでみたい、というような気持ちで撮っていますね。私が見た”好き”を皆さんにも見てもらえるとうれしいです。世界には美しい光景があるんだよということを伝えたいし、知ってもらいたい。私自身、ファインダーを通して見る世界に心が救われています」。
「友達と川へ遊びに行った、夏の日の写真です。スイカにかぶりつく2人が可愛くて思わず撮りました。季節の中で一番、終わるのが名残惜しくなるのは夏です」。
ファインダーを覗いている間は映画を見ているような感覚
「窓際で、夏の学校の昼休みの雰囲気を撮りたいと思った1枚です」。
「入道雲や木漏れ日、お祭りなど、夏の光景はキラキラと眩しく見えるのでとても好きです。この写真は空の広さを表現したくて、土手の下から煽るような形で撮影しました」。
「映画を見ることがとても好きなので、映画のワンシーンのような瞬間に出会うと思わず撮りたくなることがあります。ファインダーを覗いている時は、映画を観ているような感覚ですね。好きだな、と思った瞬間にシャッターを切っています。その時の私は、目の中がキラキラして、幸せな気持ちになります」。
「夏の爽やかな写真が撮りたくて、プールにて撮影。動きのある写真にしたかったので、水しぶきと一緒に」。
「プールの水面の光がゆらゆらとしている様子に見とれました。動きを出したくて泡まで写した水の中の1枚です」。
美しい光景の中にある人や季節や気温を全部 絵を描くように写し出す
「1枚の写真にいろんなことやものが写ってほしいと思っているので、人とロケーション、どちらかにフォーカスを当てようということはあまりないです。もちろん何かを重視したい場合もありますが、人や光景、色や光、すべてのバランスを考えて撮っています。静かな雰囲気の写真にしたい時は夜明け前に出かけるといったように、その場所に合った季節、天気、月や太陽の位置を考え、撮影する時間やタイミングも大事にしていますね」。
「きれいに波紋が写り込むように、海の中に入った後、水面が落ち着くまで待ってから撮影しました」。
「トワイライトの頃、空の青色のグラデーションがとてもきれいだったので、より印象的に見えるように、砂浜ではなく防波堤の上に立ってもらって撮影しました」。
GENIC VOL.58 【表現者が人を撮る理由】
Edit: Yuka Higuchi
GENIC VOL.59
特集は「だから、人を撮る」。
最も身近にして最も難しい、変化する被写体「人」。撮り手と被写体の化学反応が、思ってもないシーンを生み出し、二度と撮れないそのときだけの一枚になる。かけがえのない一瞬を切り取るからこそ、“人"を撮った写真には、たくさんの想いが詰まっています。泣けて、笑えて、共感できる、たくさんの物語に出会ってください。普段、人を撮らない人も必ず人を撮りたくなる、人を撮る魅力に気づく、そんな特集を32ページ増でお届けします。