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プロフィール

横浪修
写真家 1967年生まれ、京都府出身。文化出版局写真部を経て、中込一賀氏に師事。自身の作品制作を行いながら、ファッションや広告、CDジャケットなど多岐にわたって活動。写真集に『100 Children』『1000 Children』『Assembly』『Assemblysnow』『MIZUGI』など。
愛用カメラ:PENTAX67、 Canon AE-1P/F1/EOS R5/EOS 5D Mark III/EOS 5D Mark IV
Q. 横浪修さんが、広告の人物撮影で心掛けていることは?
A. 空気を読む。

臨機応変に現場の空気を読みながら、自分のやりたい方向に持っていく

「広告の撮影現場って、雑誌と違ってピリピリしていることが多い。だから、空気を読みながらやっています。特に俳優さんなどの場合、なかには気難しい人もいます。馴れ馴れしくてもダメ、かといって何も喋らないのもダメ。そのへんは現場の雰囲気次第で、臨機応変に。モデルさんの場合は気難しいとかはないですが、初対面の人とは、やっぱり空気を読みながら徐々に自分のやりたい方向に持っていきます」。

少し無茶をして走ってもらったり、ジャンプしてもらったり…。そこを撮りたいのではなく、その後の崩れた状態を撮りたい

「モデルの動きや表情がちょっと違うかな、というときは動いてもらいます。少し無茶をして走ってもらったり、回ってジャンプしてもらったり…。そこを撮りたいわけではなく、その後の崩れた状態を撮りたいんです。準備体操をしながら、いい瞬間を探していく感じです。撮影時のテンションは、『いいね、いいね』と盛り上げるタイプではないけど、変なおじさんタイプで面白がってもらえることが多いですね。僕の口癖が『待てよ』と『知らんけど』で、ノッてくるとそれが出るみたい。キムタクよりも、そして少し前の流行語よりも、僕の方が早く言っています(笑)。計算しているわけではないけど、不思議なノリで場が和むみたいです」。
常にニュートラルな状態で、マイペースかつ柔軟に

「撮影前の心構えとしては、設定を固めすぎないようにしています。シミュレーションしすぎると、そうならなかった場合にドツボにハマるので。ニュートラルで、どっちのギアでもOKという状態にしておきます。被写体が大御所の俳優さんでも、若手の人でも、やることは同じ。マイペースに、普段通りの自分でいることがいいパフォーマンスにつながると思っています」。
光の入り方とか、その場の空気とか、ライブ感を大切にしたい

「ライティングも2パターンくらい作って、どっちでもすぐいけるようにしておくとか、柔軟に対応できるよう心掛けています。広告だと背景や画面を先に決めて、そこに人を当て込む場合が多い。でも僕としては、光の入り方とか、その場の空気とか、ライブ感を大切にしたい。その感覚は、自由度が高い雑誌撮影の経験によるものかもしれません。とはいえ、広告の場合は大きな予算のもとに求められるハードルがとても高い。そこに、自分の作品性とかエゴを出すつもりはありません。クライアントからのリクエストには、基本的にすべて応えます。その上で、リクエスト以外の選択肢を提示することもありますが、そこは僕の中で絶対ではありません。まずはNOと言わず、そして最後まで油断せず、求められていることに対して最大限の結果を出すようにしています」。
人を撮ることは、僕にとって生理現象のようなもの

「カメラを始めた頃から、そもそも人を撮ることに興味がありました。田舎のおじいちゃん、おばあちゃんを撮って、大阪の街で人に声を掛けて撮って…専門学校の時にはちょっと怖いところに行って、路上生活者の方達を撮ったりもしました。カメラで撮る=人を撮る、という感じです。風景を撮るにしても、どこかに人がいる、というようにどうしても人に反応します。作った瞬間ではない、その人のふとした表情に惹かれてシャッターを切ります。『写真がなければ、人生が成立しない』と以前のインタビューで言いましたが、人を撮ることは僕にとって、生理現象のようなもの。ご飯を食べるのと同じくらい、日常の中でなくてはならない行為です」。
掲載写真はすべて、カメラと写真映像のワールドプレミアショー「CP+2025」のキービジュアル用にGENICの企画・プロデュースで撮影したもの。「イベントの開催地である横浜の街の雰囲気が出ること、どこかのカットにエアカメラのポーズを入れること、というのがGENICからのお題でした。最初は引き気味に撮り出し、次第に光とかモデルさんの雰囲気を見て、寄りのカットを増やしていきました」。
※CP+2025のメインポスターに起用された、パシフィコ横浜で撮影した写真はコチラ
GENIC vol.73【Portrait Q&A】Q. 横浪修さんが、広告の人物撮影で心掛けていることは?
Edit:Satoko Takeda
GENIC vol.73

2025年1月号の特集は「Portrait Q&A」。ポートレートの答えはここにある
人にカメラを向けるからこそ、迷いはなくしたい。自分の写真をちゃんと好きでいたい。そのためにどうするか?「答え」はここにあります。写真家や俳優、モデルなど41名が答えた、全45問のQ&A特集です。