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単純なくらし 東海林広太 | 連載 Life is Beautiful. 私の愛する暮らし

連載「Life is Beautiful. 私の愛する暮らし」。
大好きな場所で毎日を丁寧に過ごしながら、日々変わりゆく光や機微をすくいあげ、写真に写す──。自身の暮らしを愛する写真家やクリエイターたちが、日常の中で心動く瞬間とは?すぐそばにある美しさに気づくことの大切さを学びます。
全8回の連載、第5回は、独自の視点でジャンルレスに活躍する、写真家/フォトグラファーの東海林広太さんです。

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目次

プロフィール

東海林広太

写真家/フォトグラファー 1983年生まれ、東京都出身。アシスタントを経て、2007年にスタイリストとして独立。2014年より独学で写真を始め、写真家に。国内外問わずコマーシャルワークから作家活動までジャンルレスに活躍中。
愛用カメラ:PENTAX 67、CONTAX 645、Mamiya RZ 67
愛用レンズ:smc PENTAX 105mm/135mm、Planar T* 80mm、Mamiya sekor 110mm

単純なくらし

当たり前を見直す、ということを大切にしている。

2024年「バルコニーの水溜まり。バルコニーは特別な場所なので、思い入れがあります」。

「今回のテーマ『単純なくらし』は、茨木のり子の<部屋>という詩からの引用です。とても好きな詩で、生活のことを考えた時にこの詩を思い浮かべます。単純なくらし、というものに憧れているんだと思います」。

2019年「二度と撮ることはできない“青”。携帯の待受はずっとこの写真です」。

2022年「コーヒーに虹を架ける、ある作家へのオマージュ」。

2025年「自室。西陽が差す数分間、美しいなと感じます」。

僕にとって、写真は時間の記録。そして、執着と惰性。

2024年「自室にて、パートナーと“光”」。

2024年「 集めたオブジェをバルコニーで撮影」。

2023年「キッチンの洗い物。料理が好き。食べたら残らないというところが好きです」。

2019年「コンタクトシート。“青”の写真は何度も見返してしまう」。

2024年「セルフポートレート。その場にあった三脚と祖父が残したブランケットでシェルターを作る。愛猫の“祈”が寄ってきたので抱っこした瞬間、タイマーでシャッターが切られた」。

いつか無くなる物事への防衛本能のようにシャッターを切る。

「当たり前を見直す、ということを大切にしています。猫が元気でいてくれるとか、読んだ本の言葉に考えさせられるとか、夕焼けの美しさとか…そういうことを享受できるのは当たり前じゃないということを忘れないで暮らしたい。こんな風に考えるようになったのは、30代になり写真を始めて、猫と暮らし始めてからでしょうか。朝起きたらコーヒーを飲み、バルコニーからの空を見て撮影します。撮影の仕事がなければ大体部屋で本を読んだり、猫と遊んだり、気が向けば室内やバルコニーで撮影します。陽が傾きだすと、夕方の散歩をします。展示や制作がある時以外は、とにかくのんびりしています。そして、その時の何かを残したいなと思う時に、シャッターを切ります。撮ることは残すことだから、いつか無くなる物事への防衛本能みたいな行為なのかもしれません。特に撮りたくなるのは、猫が可愛い時(大切だから。それなのに、いつかいなくなっちゃうのを知っているから)、パートナーがふざけている時(意味がわからなくて面白いから)、そしてなんでもない時間(後で思い出すのは大体そういう時が多いから)。写真を撮っておけば、明日でも10年後でも見返すことができます。もう会えない人や物事でも、写真の中では見ることができます。写真だけではやっぱり喪失感や寂しさは埋まらないとしても。僕にとって、写真は時間の記録、そして執着と惰性です」。

GENIC vol.74 【Life is Beautiful. 私の愛する暮らし】
Edit:Satoko Takeda

GENIC vol.74

2025年4月号の特集は「It’s my life. 暮らしの写真」。

いつもの場所の、いつもの時間の中にある幸せ。日常にこぼれる光。“好き”で整えた部屋。近くで感じる息遣い。私たちは、これが永遠じゃないと知っているから。尊い日々をブックマークするように、カメラを向けてシャッターを切る。私の暮らしを、私の場所を。愛を込めて。

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