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北国で、愛着を育む暮らし sachi | 連載 Life is Beautiful. 私の愛する暮らし

連載「Life is Beautiful. 私の愛する暮らし」。
大好きな場所で毎日を丁寧に過ごしながら、日々変わりゆく光や機微をすくいあげ、写真に写す──。自身の暮らしを愛する写真家やクリエイターたちが、日常の中で心動く瞬間とは?すぐそばにある美しさに気づくことの大切さを学びます。
全8回の連載、第3回は、「北海道の民芸品収集が好き」という、エディトリアルデザイナーのsachiさんです。

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目次

プロフィール

sachi

エディトリアルデザイナー 1992年生まれ、北海道出身。北海道教育大学岩見沢校美術コース情報デザイン研究室卒業。卒業後、帯広市の印刷会社に入社。2023年、フリーランスのデザイナーとして独立。2024年10月に北海道の湖のある地域の古民家を購入・リノベーションし、移住。写真歴10年。
愛用カメラ:FUJIFILM GFX 50R、PENTAX67、Nikon Zf
愛用レンズ:MINOLTA MC ROKKOR-PF 58mm F1.4、SMC PENTAX 67 105mm F2.4、NIKKOR Z 40mm f/2(SE)

北国で、愛着を育む暮らし

北海道という広大な自然に囲まれた環境の中で、暮らすことの喜びを感じられるように、日々を過ごしています

「朝、台所でゆっくり珈琲を淹れるひととき。古いものが好きなので、台所も昭和の家のような雰囲気になるようリノベーションしました。お気に入りの場所となり、台所に立つのが楽しいです。この写真のように部屋の一部を切り取ることもありますが、家でとくに撮ることが多いのが、食べ物。料理がおいしそうにできたときやその準備中、『撮りたい!』という気持ちになります。自分が作ったものの記録にもなるし、食べ物の写真は見るだけでも幸せな気持ちになれます」。

「少し車を走らせたところにある湖で撮影した1枚。到着したときは霧に包まれていた湖も、空がだんだん晴れていき、その姿を現しました。優雅に泳ぐ白鳥と、まだうっすらと霧がかかる湖が美しく、シャッターを切る手が止まりませんでした。私には、今住んでいる地域に訪ねてきた人、またこの地域に住む人々が、この場所に愛着を持ってもらえるようなお店を開きたいという夢があります。お店で出合ったものを持って湖畔に行き、心穏やかな時間を過ごしてもらえるような…そんなざっくりとした夢を思い描いています」。

一軒家を自分好みにリノベーションしたことで、家が大好きに

「真ん中のうさぎのような耳がある木彫りは、網走の民芸品『セワポロロ』。その奥の熊の木彫りは旭川の民芸品『熊ボッコ』。北海道の民芸品を収集中。どれもとびきりかわいくて、眺める度に愛着が湧いてきます。北海道は美味しい食べ物や食材はもちろん、魅力的な民芸品や手作り品がたくさんあるので、なるべく北海道で生まれたものを手に取るように心がけています。そうすることで、北海道愛がどんどん大きくなり、今の暮らしへの愛着につながっているのだと思います」。

「家には黒猫と三毛猫の2匹の猫がいます。猫のベッドにしようと購入した古いこね鉢は入ってくれるか不安でしたが、しっかり収まってくれました。古いものと猫の組み合わせがたまらなく好きです。2匹の猫がくっついて寝ているとき、あたたかな日差しが部屋に差し込んできたときなど、いつも“愛おしい”と感じたときにシャッターを切りたくなっているように思います」。

「厳冬期の早朝カヌー。あまりの寒さにカメラも途中からおかしくなってしまったけれど、このときカヌーから見た景色はあまりに幻想的で忘れられません。美しい景色や瞬間に出合えたとき、その中に浸ってただ眺めている時間がとても好きです」。

シャッターを切りたくなる瞬間は、いつも心の中に“愛おしい”という気持ちがあふれています

「余っていたにんじんで作ったキャロットケーキ。断面の美しさを差し込む光が際立ててくれていて、お気に入りの1枚です。食器類を選ぶのも楽しく、このときはお皿もカップも同じ作家さんのものを選びました。黒のテーブルクロスに白い器が映えました」。

写真は大切な趣味であり、 暮らしの一部

「天気の良い日はすぐ近くの湖畔でカヌーをしたり、森の中を散歩したり、ドライブしたり、星空を眺めたり……、北海道の大自然を感じ、楽しむ暮らしを送っています。一軒家を自分好みにリノベーションしたことで家も大好きになりました。猫と暮らしていることもあり、家の中は常に整理された状態を保っていて、散らかることがないように意識しています。そのおかげで結果的に、家の中でいつでもシャッターを切れる状態になっているように思います。暮らしの写真を撮ることは、自分の成長記録としての価値があると考えています。年を重ねていくごとに感性や考え方などが徐々に変わっていっているように感じていますが、それは暮らしにも反映されているものだと思っていて、自分がそのときどのようなことを感じていたのかを、写真を見ることで振り返ることができます。日々の積み重ねがあって、今の自分がいるので、その過程を記録しておくことができるということに大きな魅力を感じます。また、写真をはじめていなければ、北海道の景色や自然に何も感じず過ごしていたかもしれません。移住先であるこの地にたどり着いていなかった可能性もあります。写真はさまざまな美しさや魅力に気づかせてくれた大切な趣味であり、暮らしの一部です」。

GENIC vol.74 【Life is Beautiful. 私の愛する暮らし】
Edit:Chikako Kawamoto

GENIC vol.74

2025年4月号の特集は「It’s my life. 暮らしの写真」。

いつもの場所の、いつもの時間の中にある幸せ。日常にこぼれる光。“好き”で整えた部屋。近くで感じる息遣い。私たちは、これが永遠じゃないと知っているから。尊い日々をブックマークするように、カメラを向けてシャッターを切る。私の暮らしを、私の場所を。愛を込めて。

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