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プロフィール

川野恭子
写真家 神奈川県出身。「日常と山」を並行して捉え、自身に潜む遺伝的記憶の可視化を試みた作品制作を行う。ここ数年は山小屋勤務を経験しながら山の歴史・文化に造詣を深めることに努めている。メディアへの写真提供、撮影、執筆、講師、テレビ出演(NHKにっぽん百名山ほか)など、多岐にわたり活動。京都芸術大学通信教育部美術科写真コース非常勤講師。著書に、写真集『山を探す』(リブロアルテ)、織田紗織氏との共著『山の辞典』(雷鳥社)ほか多数。
愛用カメラ:OM SYSTEM OM-5、FUJIFILM GFX 50R、RICOH GR IIIx
愛用レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO、MINOLTA MC ROKKOR 58mm F1.4など
暮らしは光とともに


語るほどのテーマは無いけれど、いつも太陽を意識して暮らしているかもしれない



日々の何気ないものから“尊い”を発見することに、幸せを感じます

作り込みすぎず、ありのままに写すこと。“自分らしい写真”であること




美しい光に恵まれて、暮らしは成り立つ
「山に登るようになってから、より太陽を意識するようになりました。山では『早出早着』が基本と言われ、日のあるうちに行動するので、日の出日の入りを強く意識します。夜明けのころ、日が差し込んだ途端に気温が暖かくなっていくのを肌に感じるたび、太陽の力は本当に偉大だと改めて思います。昔の人は夏至や冬至などを意識し、太陽に感謝していたけれど、現代において、私自身その意識が薄くなったように感じていて。だから山に登り始めたことで、太陽の存在の大きさに改めて気づかされたのだと思います。自宅の東側に大きな窓があり、毎朝差し込む太陽の光に癒されています。時間帯によって光の差し込む位置が変わるし、季節によって光の柔らかさも変わる。そうした光の変化がもたらす光景を楽しみにしながら暮らしています。普段は見過ごしてしまうようなものが、太陽の光を浴びて輝く瞬間、なんてことのないものが尊いと思えた瞬間、その光景をずっと見ていたいという思いで写真に閉じ込めています。暮らしを撮ることは、自身の『幸せ』を認識する手段としての価値があり、その幸せを収集することによって、達成感や満足感を感じているのかもしれません。写真を撮っていると、毎日同じ光は見られないことに気付かされます。転じて、当たり前に過ごしている日常そのものも永遠ではないことに気付かされ、より大事にしたいと思うようになります。そして、自分に関すること、自分の記憶に関わること、または自分の経験から導き出された気付きが含まれた写真は、“自分らしい写真”になると考えています」。
GENIC vol.74 【Life is Beautiful. 私の愛する暮らし】
Edit:Chikako Kawamoto
GENIC vol.74

2025年4月号の特集は「It’s my life. 暮らしの写真」。
いつもの場所の、いつもの時間の中にある幸せ。日常にこぼれる光。“好き”で整えた部屋。近くで感じる息遣い。私たちは、これが永遠じゃないと知っているから。尊い日々をブックマークするように、カメラを向けてシャッターを切る。私の暮らしを、私の場所を。愛を込めて。