Focal Length
今回のテーマは「YOUR FOCAL LENGTH」。
これまで写真を通して向き合ってきたのは、「自分がどのように世界を見ているのか」「どんな
距離感で世界と関わっていたいのか」という、自分自身の“焦点距離”だった。
レンズを通して、自分と被写体との距離を測りながら、心の中のピントを探すような感覚。
自分自身を探すような旅が何よりも楽しい。
けれど最近、他のフォトグラファーたちの“FOCAL LENGTH”を覗かせてもらう機会があり、その
世界を共有することの楽しさを知った。
そこには、自分では見たことのない風景や感覚が広がっていて、まるで誰かの視点を通して新しい
世界を旅するような体験だった。
第一弾は、昨年の「CP+(カメラと写真映像のワールドプレミアショー)」での出会いをきっかけにご縁がつながった、フォトグラファーの別所隆弘さん。
お互いの地元である滋賀の、別所さんの特別な思い入れのある場所を一緒に巡りながら撮影。彼の巧みな話術でZfを使う僕が、さらにZ8を購入するきっかけにもなった。
(もちろん良い意味で)
同じ場所に立っていても、彼が切り取る風景と僕のフレームはまるで違う。
その違いには、それぞれの人生の積み重ねや感性がにじんでいて、まさに“表現”の面白さそのもの
だった。
GENIC 2026年1月号で、その作品と対談が掲載されているので、誌面にてご覧いただきたい。
今回お見せするのは、フォトグラファー・小春ハルカさんとご一緒した「YOUR FOCAL LENGTH」。
彼女は花をメインに撮影をされるフォトグラファーで、別所さんと同じくNikon Z8と、Zfをこよなく愛されている。
そこで10月末の時期にコスモスを撮影しにいった。
普段自分があまり撮らない環境で、彼女の世界観の中に身を置くことで、改めて“撮ること”の原点に戻れた気がした。
静かにカメラと向き合う時間はとても新鮮で、何より楽しい。
そこには正解がないからこそ、彼女からのアドバイスを通して、自分なりの「距離感」を見つけていくプロセスがあった。
よく「写真が上手くなるにはどうすればいいですか?」と聞かれる。
僕が思う一番の近道は、まず“自分が好きな写真”を見つけて、その真似をしてみることだ。
何度も繰り返すうちに、少しずつ“自分だけの焦点距離”が見えてくる。
そしてその先に、自分らしい世界の見え方が生まれる。
他者の焦点距離を通して、自分の距離感を見つめ直す。
それが「YOUR FOCAL LENGTH」というテーマの本質であり、僕がこの数ヶ月で感じた最大の
発見だった。
誰かのレンズを覗くことで、自分のピントが少しだけわかっていく。
そんな体験を、今回の出会いを通して味わうことができた。
お互いがNikon Creatorだからこそできる、レンズの交換や、フィルターの貸し借り。
そんなことも僕にとって全く新しい体験で新鮮だった。
Nikon Zfとの出会いに改めて感謝したい。
プロフィール
古屋呂敏
俳優・フォトグラファー 1990年、京都生まれ滋賀/ハワイ育ち。2016年より独学でカメラを始める。Nikon Zfを愛用。父はハワイ島出身の日系アメリカ人、母は日本人。MBS/TBS「恋をするなら二度目が上等」(2024年)などに出演。俳優のみならず、フォトグラファー、映像クリエイターROBIN FURUYAとしても活動。2022年には初の写真展「reflection(リフレクション)」、2023年9月には第2回写真展「LoveWind」、2025年6月、ニコンプラザ東京 THE GALLERY、2025年7月、ニコンプラザ大阪 THE GALLERYにて、写真展「MY FOCAL LENGTH」を開催。写真集に『MY FOCAL LENGTH』(ミツバチワークス)がある。