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プロフィール
古屋呂敏 Robin Furuya
俳優/フォトグラファー 1990年、京都生まれ、滋賀/ハワイ育ち。2016年より独学でカメラを始める。Nikon Zfを愛用。父はハワイ島出身の日系アメリカ人、母は日本人。MBS/TBS「恋をするなら二度目が上等」(2024年)などに出演。俳優のみならず、フォトグラファー、映像クリエイターROBIN FURUYAとしても活動。2022年には初の写真展「reflection(リフレクション)」、2023年9月には第2回写真展「LoveWind」、2025年6月、ニコンプラザ東京 THE GALLERY、2025年7月、ニコンプラザ大阪 THE GALLERYにて、写真展「MY FOCAL LENGTH」を開催。写真集に『MY FOCAL LENGTH』(ミツバチワークス)がある。
初めてシャッターを切った日の気持ちを役柄に重ねて
写真を撮る役柄という点でご自身と重なる部分も多いかと思いますが、本作ではどのように役作りに臨まれましたか。
役作りの中で一番大切にしたのは、自分が「初めてカメラに触れた瞬間の感動」や「写真を撮ることに対する純粋なワクワク」をできるだけ鮮明に思い出して、もう一度自分の中でしっかり感じ直すことでした。僕は「この瞬間を残したい」「誰かに見せたい」という衝動こそが、写真やカメラの原点だと感じています。この物語の根っこにあるのは、上手く撮れるかどうかではなく、ファインダーを覗いたときに世界が少し違って見えた、あの最初の高揚感。だから今回の役作りでは、細かく作り込むということはあまりせず、基本的には「作らずに演じる」というスタンスを意識しました。役としてカメラに触れるたびに、自分が初めてシャッターを切った日の気持ちや、なにげない風景が特別な一枚に変わった感覚を重ねていたんです。ショートドラマという形式上、理仁の過去や細かな時間軸を積み上げていくよりも、その一瞬一瞬で理仁が何を感じ、どう心が動いているのかが何よりも重要だと感じたからです。この場面で正解の感情は何だろう?と常に自分に問いかけながら、自然に湧き上がってくる感情を信じるようにしていました。
俳優として「写真を撮る人物」を演じて、普段ご自身が写真を撮るときとどのような違いを感じましたか。
俳優としてカメラの前で「写真を撮る人物」を演じるにあたり、自分の癖や、写真に慣れすぎている感じが出てしまわないよう、できるだけ意識的に排除することを大切にしました。普段、自分が写真を撮るときは集中していますので、どんな格好をしていようと、変な表情になっていようと、まったく気にしません(笑)。シャッターを切ることだけに意識が向いていて、周囲からどう見えているかを考えることはほとんどないのですが、今回は、その「撮っている姿そのもの」をカメラに収められる立場だったので、無意識のうちにこなれた動きが出てしまうと、嘘になってしまう気がして。だからこそ、いつも以上に慎重になり、上手く見せようとするよりも、あえて不器用さや戸惑いが残るような佇まいを心がけました。
第二話でポートレート撮影するシーンは、普段のご自分に近い感覚でしたか?演技とリアルの違いについて、お聞かせください。
ポートレート撮影のシーンは、今回の中ではむしろ一番「演じている」と強く感じた瞬間です。まず思い出したのは、自分が初めて人物撮影をしたときのこと。人を撮るという独特の緊張感。相手の表情や空気を読み取りながら、距離感を探るようにシャッターを切っていた感覚。さらに、当時はまだカメラへの理解も十分ではなかったので、「ちゃんと撮れているだろうか」という、言葉にしづらい小さな怖さのようなものもあったと思います。そのひとつひとつを自分の中でしっかり感じ直すところから、あのシーンに入りました。そこから、ファインダー越しに相手と向き合ううちに、少しずつ緊張が和らいで、撮ること自体に夢中になっていく。その不安から没入へと変わっていく感情のグラデーションを無理に作ろうとせず、自然に立ち上がらせたい。そう思いながら演じていました。
リアルとシネマティックな美しさが溶け合う瞬間が随所に
今回のドラマの見どころや、特に注目してほしいポイント、そしてこの作品を通して感じてほしいことはありますか?
このドラマの大きな見どころは、全編を通してNikon ZRで撮影している点だと思います。映像でありながら、まるで写真の一枚一枚を切り取ったような構図やフレーミングが随所に散りばめられていて、その“画”の美しさがとても印象的です。撮影中、撮った映像をモニターで確認する機会が何度かあったのですが、その時点ですでに色味や世界観が完成されているようなシーンが多くて、ZRが持つ描写力や空気感の出方に素直に感動しました。それから、実際に廃校になる学校を舞台に、そこに通っていた生徒さんたちと一緒に撮影できたことも、このショートドラマにとって非常に大切な要素だったと思います。作り込まれたセットではなく、リアルに時間が積み重なってきた場所で、実際にそこで過ごした人たちと交わることができた。だからこそ物語に嘘のない温度が生まれたと思います。映画的な美しさを持ちながらも、ふとした一瞬にドキュメンタリーのようなリアルが入り込む。その境界線が溶け合う瞬間は、とても心に残っています。
お気に入りのシーンがあれば教えてください。
お気に入りのシーンは本当にたくさんあるんですが、特に印象に残っているのは、第一話の屋上のシーンと第三話のラストで映し出される空の美しさとその色味です。どちらのシーンも、言葉で説明しすぎずとも、画そのものが感情を語ってくれているように感じました。特に空の色は作ろうとして作れるものではなく、その瞬間にしか存在しないもの。光というのは、どれだけ準備をしても、どれだけ計算をしても、最後は天候次第。そういう意味でも、あのシーンは「神様が味方してくれた瞬間」だったのではないかなと感じています。
撮影現場での印象的なエピソードはありますか?
イチョウの木は、今回の撮影の中で個人的にとても強く印象に残っている存在です。撮影は12月で、正直その時期にあれほど立派なイチョウが残っているとは思っていなかったので、素直に驚きました。あいにく撮影初日は天候があまり良くなかったんですが、ふとしたタイミングで強い風が吹き、一気にイチョウの黄色い葉が舞い上がった瞬間がありました。まるで雪が降ってくるかのように、静かに、そして大量に葉が落ちていくその光景に、場の空気が一変したのを今でもはっきり覚えています。あまりにもノスタルジックで美しく、思わず声が出てしまいました。
その時ちょうど、2台のカメラが僕を撮影していたんですが、僕の表情を見たスタッフの方々がイチョウに何かが起きたと気づいたようで、僕に向いていたカメラを一斉に反転させて、イチョウのほうを撮り始めたんです。その切り替えの速さと空気感があまりに面白くて、思わず笑ってしまいました。計算された演出ではなく、その場でしか生まれなかった偶然の美しさ。僕の反応がきっかけで、被写体が一瞬で切り替わったあの瞬間は、この作品が持つ「リアル」と「シネマ」の境界線を象徴するような、忘れられないひとときです。
「空気感や感情、時の流れまで閉じ込める、写真の可能性を感じてほしい」
日頃から愛用されているZfを俳優として使用されて、いかがでしたか?ドラマをきっかけにこのカメラに興味を持つ方も多いと思いますが、お気に入りの理由や魅力、古屋さんにとってZfがどのような存在かを教えてください。
Zfの魅力は、外観がかっこいいだけではないところです。Nikonの名機FM2を思わせるクラシックなデザインを継承しながらも、写りのクオリティや操作性において、十分すぎるほど満足感があるし、使うたびに所有欲を満たしてくれる一台だと感じています。シャッタースピードやISOをダイヤルで操作する感覚は、まるでフィルムカメラで撮影しているかのようです。一枚一枚を慎重に、丁寧に撮ろうという気持ちに自然となれます。写真にしっかり向き合える、その時間そのものがとても贅沢だと思います。また、切り換えレバー1つでモノクローム撮影に切り換えられる点も、自分にとっては大きな魅力です。今ではZfは、親友のような安心感を与えてくれる存在といえます。俳優としてZfに触れるのは今回が初めてでしたが、構えたときの高揚感、手にフィットする感触はいつもと同じで、自然と気持ちが落ち着きました。その小さな安心感は、どこかで芝居に影響を与えていたかもしれません。
写真との向き合い方について、ご自身と今回演じられた役柄とで、共通点や異なる点があれば教えてください。
「写真との向き合い方」というテーマからは少しずれてしまうかもしれませんが、理仁が抱いている「もっと写真が上手くなりたい」「ちゃんと練習しなくちゃいけない」という心の動きには、とても強く共感しました。僕自身、今でも常にそう思いながら写真と向き合っています。経験を重ねても、その気持ちが消えることはなくて、写真ってむしろ撮れば撮るほど「まだ先がある」と感じさせられるものなんです。理仁が写真を通じて、少しずつ新しい発見をしていく姿を見ていて、「ああ、自分も同じような経験をしてきたな」と重なるシーンがいくつもありました。理仁との違いを挙げるとすれば、彼ほど真面目ではないところかもしれません。僕の場合は、「まあ、いいか」「とりあえずシャッターボタンを押してみようか」なんていう瞬間もたくさんありますから。
写真の魅力や思い出を残すことをテーマにした作品に出演されて、写真が持つ意味について改めて感じたことはありますか?
カメラが持つ魅力や美しさを、改めて強く感じました。カメラとは単に写真を撮るための道具というだけではなく、それに触れることで心に深く残る瞬間を体験させてくれる存在です。僕自身、カメラを好きになったことで出会えた人、経験できたことは数えきれないほどあるし、自分ひとりではきっと見ることのなかった景色をたくさん目にすることができました。振り返ってみると、カメラは世界を切り取る道具であるのと同時に、自分自身の世界を広げるきっかけだったと思います。役者という仕事は、誰かの人生を生きることです。登場人物の過去を辿り、その記憶や感情を通して、観ている人の「今」に何かを手渡していく。その感覚は、今回この作品に携わる中で、写真が果たしている役割ととても近いものだと実感しました。写真は、確かに一瞬を切り取るもの。でもそれは、時間を止めるだけではなく、その場に流れていた空気や時間の流れ、そして写す側・写される側の感情まで閉じ込めてくれるものだと思っています。このドラマを通じて、そんな写真の持つ可能性や奥行きを、観てくださった皆さんに少しでも感じていただけたら、うれしいです。そして本当にまっすぐなメッセージにはなりますが、「カメラって本当に楽しい!そして魅力的だ!」ということが伝わればと願っています。
監督・橋本侑次朗さん、撮影担当・軍司拓実さんからのコメント
監督・橋本侑次朗さん
呂敏さんは、初めて現場でお会いしたときから、私たちスタッフと距離感の近いところで一緒に作品と向き合ってくれました。ご本人も普段、写真を撮られているということで機材の話で盛り上がり、会話をしていて、すぐに心奪われました。怪盗ロビン。
終始楽しそうにお芝居されている姿を現場で見ていましたが、彼の温かさは映像にも出ているのではないでしょうか。スケジュールの関係上、撮影初日に映像の仕上がりイメージもわからない中でモノローグ収録を行ったのですが、呂敏さんが「仮編集を終えて映像が仕上がったタイミングで、改めて行いませんか?」と提案してくださったのは、うれしかったです。限られた時間の中で三篇を撮りきらないといけない状況で、このショートドラマを仕上げることができたのは、作品に対する呂敏さんの気持ちの熱さのおかげだと思っています。
個人的な見どころは、第三話の子どもたちとのシーンです。今年3月で廃校になる、実際の小学校の生徒さんたちに出演していただきました。単なるフィクションではなく、確かにそこに息づいている、誰かの日常の延長線にあるような、愛くるしい時間になっていると思います。「写真ってなんだろう?」「人はどうして写真を撮るんだろう?」そんな普遍的な問いに正面から向き合い、スタッフと時間をかけて作りました。この作品をきっかけにカメラを通して見る世界に興味を持ち、日常の中にあるなにげない“ひかり”にふと目を向ける瞬間が生まれたら、メチャメチャうれしいです。
橋本侑次朗
映像ディレクター 東京都出身。日本大学芸術学部放送学科卒業後、映像制作会社biogon pictures inc.に所属。2018年4月独立。広告・企業映像・ドキュメンタリーなど、幅広いジャンルで企画・演出を手がける。物語とリアリティの間に立ち、空気や余白を見つめながら、観る人の記憶に残る表現を追求している。2020年「映像作家100人」に選出。
撮影担当・軍司拓実さん
呂敏さんとは、以前にも別のお仕事でご一緒させていただいており何度かお会いしていたことから、お人柄もよく知っていました。そのおかげで、現場は終始とてもスムーズで、心地よい空気の中で撮影を進めることができたと思います。俳優としてだけでなく、フォトグラファーとしても活動されている呂敏さんは、今回の“全編ZRを使う”という試みについても、ひとりのクリエイターとして純粋に撮影を楽しまれているように感じました。私自身、今回ZRを初めて使用させていただきましたが、サイズ感が非常にいいですね。このコンパクトさでREDのRAW(R3D)を収録できるのは革命的だと言えます。シネサドルなどを用い、ハンディでの撮影が多かったのですが、立ち回りがしやすく、結果としてカット数も多く稼ぐことができました。一方で本体モニターはひと回り大きく、画の確認がしやすい点も印象的。アングルを探る際にも非常に有効でした。
軍司拓実
写真家/映像監督 1995年生まれ。株式会社コエ所属。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業後、DRAWING AND MANUALへの参加を経て、2021年にフリーとして独立。自ら撮影・編集を行うスタイルで、MVを中心に様々な映像を制作している。
ドラマのワンシーンをチラ見せ
軍司拓実さんがZRで撮影したドラマ「ひかりと、まばたき。」のワンシーンをお届け。
「ひかりと、まばたき。」公開スケジュール
第一話:2月25日(水)公開
ドラマ『ひかりと、まばたき。』 | 第一話「四角い空」
第二話:3月7日(土)19:00公開予定
第三話:3月14日(土)19:00公開予定
BTS対談:3月15日(日)19:00公開予定
CP+2026でスペシャルトークショー開催
世界最大級のカメラと写真映像のワールドプレミアショー CP+2026にて、スペシャルトークショー「古屋呂敏と制作陣が語る、ドラマ『ひかりと、まばたき。』制作の裏側」が開催されます。
主演の古屋呂敏さん、本作の監督である映像ディレクターの橋本侑次朗さん、撮影を担当した写真家/映像監督の軍司拓実さんの3名が、ドラマ撮影の裏側や映像秘話を語ります。会場でしか聞くことのできない特別トークをお楽しみに。
開催日時
2026年2月28日(土)11:10~11:55
会場
- パシフィコ横浜 Nikonブース Nステージ
- CP+2026会場マップ
- ※CP+2026の入場チケット(事前登録で無料)が必要です。