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プロフィール
増田彩来
写真家/映像作家 2001年生まれ、東京都出身。16歳で写真家として活動を開始し、作品発表のほか、企業広告、雑誌、映画スチール、CDジャケットなど幅広い分野で活躍。映像作家としても活動し、ミュージックビデオの監督やカメラマンとして映像制作に携わり、表現の場を広げている。短編映画『カフネの祈り』では、SHORT SHORT FILM FESTIVAL & ASIA 2024のジャパンカテゴリーでオーディエンスアワードを受賞。2025年時点、Instagramフォロワー数は16万人を突破。
愛用カメラ:Nikon FM10、PENTAX 645、 FUJIFILM NATURA CLASSICA
愛用レンズ:NIKKOR 50mm F1.4、NIKKOR 35mm F2.8
リル・ツアー
最初に写真を好きになった理由がここに詰まっている
はしってのぼって 飛び込む
ぷかぷか風がそこにいて 陽だまりに出会って
小さくて おおきくて
きらきら探して
浮かんだり 追い越したり
くるくるまわって
そのあと、空を見上げる
リル・ツアー
写真を撮るための旅ではない。何かに出会いに行くための旅で、その上で写真が生まれる
「このプロジェクトを始めたのは昨年の秋。自分が今本当にやりたいことをやろうと思い立った時、人と見る景色が好きで、旅しながら撮ることが好きだと改めて気づきました。新しいものや出会いを探しに行くことは遠い場所であろうと、近所であろうとワクワクするもので、自分にとっては旅、ツアー。それは写真を始めた時から、ずっと変わってないところだと思ったんです。『リル・ツアー』のリルはリトルの砕けた言い方ですが、言い換えれば大人じゃない状態のことだと私は思っています。大人という枠を全部取っ払ってファインダーだけを覗いていられる時、私はすごく自由なんです。自分が生きていて楽しいと思うこと、頭ではなく心から本当に好きなことをやろうと考えたのが、この企画です。一緒に旅したいと思い浮かんだのが当時8歳の親友エイトでした。『リル・ツアー』で大事にしたいのはやはり初期衝動。どこ行きたい?何したい?を私1人では絶対に決めないようにしています。もう一つは、心地のいい違和感。そこに何があるとストーリーが生まれるかを自由に発想して、素直にやってみたいことを実行に移しています。あと、一番大切にしていることは『リル・ツアー』は写真を撮るための旅ではなく、何かに出会いに行くための旅であって、その上で写真が生まれるということ。エイトと冒険の旅に出て、自分の心が動いた瞬間を切り取る。一緒に探して、見つけた好きなものを大親友と教え合うような感覚。そこには大人も子どももなく、いい意味で対等です」。
忘れたくない“好き”の瞬間、忘れたくない感情を記憶するために
「『リル・ツアー』は私の生き方を写しているような作品で、最初に写真を好きになった理由や一番好きなものが詰まっている、自分にとってすごく大事なプロジェクトです。そもそも旅すること、何かに出会うことが好きで、生涯やっていきたいことだと思っていますが、このプロジェクトはまさに生涯続けたいもの。私は撮らないと忘れてしまうような、でも好きだった瞬間がたくさんあって、それを忘れたくないから撮っていて。画としてというより、そこにのっているのは感情で、楽しいから撮る時もあれば、悲しいから撮る時もある。忘れたくない感情を留めておくために撮っているとも言えます。そういう意味で『リル・ツアー』は、自分にとって忘れたくない記憶なのかもしれません。この撮影では撮ろうとせずに、気づいたら撮っている感じがものすごくあって、純粋に走り回って、寝っ転がって、探し回って、すごく幸せな瞬間の積み重ねです」。
「『リル・ツアー』は見る人にも『リル』的な動きをしてもらえたらいいなと思って、展示の時はしゃがんで見てもらえるように低めを意識しました。写真集も、あるページに写真を挟んで落ちる仕様にして、拾うという動作をしてもらえるようにしています。どちらも当たり前に見ている世界の位置をちょっと変えてみてという意図です」。
何よりも忘れたくない時間を自分1人ではなく、人と一緒に作ること。続きを探す旅が楽しい
「プロジェクトというのは写真を撮って終わりではなく、なぜこれを長く続けたいかを含め、いろいろと考えるもの。そこには衝動で撮る以上のものが絶対にあって、意外な出会いがあることや、シャッターを切るだけでは見えないものが見えるのが、面白さだなと思います。時間をかけて作っていくうちに、関係性も変化していくし、新しいと感じることも変わっていく。1回目の撮影と2回目に望むものは違って、次はもっといけるんじゃないかと欲張りになれる。1回の撮影にも一つのストーリーがありますが、プロジェクトは回数を重ねていくごとにその続きが見られる、続きのストーリーを探す旅が楽しいのだと思います」。
プロジェクトの一番大きな目的は自分が愛せるものを作り続けていたいから
「一つひとつの目的はそれぞれですが、どんなプロジェクトにも共通するのは、自分が愛せるものを作り続けていたい、まだ知らない何かをもっと知りたいということ。最終的には私を含め、関わってくれた人みんなにとって本当に忘れられないものになるといいなと思います。もちろん展示もやりたいし、写真集も作りたい、でも私にとってそれは目的では絶対にないです。何よりも忘れたくない時間を自分1人ではなく、人と作ること。愛しているものや知りたいことをみんなで一緒に探しに行って、それを見つけられることが理想のゴールです」。
「その人とまだ見ていない世界を想像するとすごく広がりを感じることがあって、プロジェクトはそういう時に生まれる気がします。目的が完全に決まっていないとやってはいけないものではなく、長くやるものだからこそ縛られすぎなくてもいいのかなと。大事なのは無理をしないこと。無茶はいいけど、無理して続けることは難しいので、自分のパーソナルな部分と繋がっていることをやるべきだと私は思います」。
GENIC vol.76 【リル・ツアー】
GENIC vol.76
2025年10月号のテーマは「 撮ることのその先へ This is My Project.」
あなたは「何」を撮っていますか? 自分の表現を説明できますか?
タイトルをつけることができますか?
オリジナルのプロジェクトを持つことは、自分の写真を「言語化」すること。
1つの企画によってまとめられた作品群からは、“作家の声”が聞こえてきます。
あなたも、写真プロジェクトを始めませんか。
一歩進む。撮ることのその先へ。