増田彩来
写真家・映像作家 2001年生まれ、東京都出身。静止画の中に動を残すことを大切に、その瞬間を閉じ込めたような写真が魅力の写真家。20歳になる節目のタイミングに、個展「écran(エクラン)」を開催し、来年1月にも写真展を開催予定。現在は、自主制作映画やMVの監督を務めるなど、映像作家としての活動も注目されている。
愛用カメラ:Nikon FM10、OLYMPUS PEN FT、NATURA CLASSICA
愛用レンズ:AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G
山田ジャンゴ
俳優 1996年生まれ、北海道出身。映画やドラマ、MV、雑誌などで活躍。増田彩来による初めての中編映画『ブルーバーズの詩』では主演を務めた。
アイツとワタシ
撮りたいって思った。撮り続けたいって思った
![](https://cdn.clipkit.co/tenants/568/item_images/images/000/149/988/large/dadecc48-cf41-4733-bfd7-bef636c97653.jpg?1675048610)
![](https://cdn.clipkit.co/tenants/568/item_images/images/000/149/989/large/ac346839-4552-45e6-8e32-47786ec44633.jpg?1675048645)
side Sara「出会いは2020年1月、私の自主映画のオーディションだった。ただ、ジャンゴを"撮りたい"って思って選んだ。みんなで話し合いながら進めていくうちに、"撮り続けたい"って思うようになって、以来、月1で撮影をしている」。
side Jango「彩来がシャッターを切るタイミングは心地よくて、最初からフィーリングが合っていた。写真には新しさが感じられて、撮影にのめり込んでいく感覚が俺にはあった。自分の表情や、その場所で何を拾ったらどんな写真になるのか、探して見つけていく訓練になっていた」。
![](https://cdn.clipkit.co/tenants/568/item_images/images/000/149/995/large/4a7130c8-262e-4098-887e-0e9856da1692.jpg?1675049502)
side Sara「それでも1年目は、理由や意味は求めていなくて、ただ楽しくて、撮りたいから撮っていた。大きな変化があったのは、2年目。きっかけは、ジャンゴの撮影前日に恋人から別れを切り出されたこと。写真なんてどうでもいいってなるほどキツかった」。
side Jango「今日は行けないって連絡が来たけど、やっぱり撮る、と。彩来は泣きながら撮っていた。でも、そこから撮影は変わった。苦しくても撮る、何があっても絶対に撮るってなっていった。その翌々月は、はじめて都内を離れて、阿蘇に行った。最終日、氷点下の森林で、ヌードを撮ってほしいと伝えた」。
![](https://cdn.clipkit.co/tenants/568/item_images/images/000/149/934/large/4e63e199-38fc-43b1-850d-048255a9180e.jpg?1675047424)
"近すぎる"関係は、互いの自己中で成り立っている
![](https://cdn.clipkit.co/tenants/568/item_images/images/000/149/996/large/82b66d2f-7507-48b1-82b3-9e37ff54bb37.jpg?1675049644)
side Sara「すごくよい作品になった。阿蘇では、いろんなことを話した。今苦しいことは何か、嫌なことは何か……睡眠も足りてなくて、寒くて、極限状態の中で限界まで撮った。自分たちが出せるもののすべてを出し切った撮影が阿蘇だった」。
side Jango「その時から、撮影は自分のことを立ち返る場所になった。写真には生きてきた自分が出るから、1ヶ月何もしてこなければ変化はなくて、お互いもそれに気づく。いろんなことをがんばらないといけないし、がんばる理由になっていった」。
好きとか嫌いとかじゃない、これは愛。シャッターを切るって、大げさじゃなくて愛だから
![](https://cdn.clipkit.co/tenants/568/item_images/images/000/149/997/large/85b3cb12-7d2d-48b6-ba30-18dc2141814a.jpg?1675049992)
side Sara「阿蘇を終えて次何するか、じゃあ毎日撮ろうって。やってどうなるかなんてわからなかったけど、やるしかない、と。同じ部屋で、同じ服を着て、同じろうそくを灯して、1日1時間ずつ1ヶ月、31時間」。
side Jango「それは決して、"二人でやろう"ということではなかった。なくなっていくろうそくの儚さや切なさに、自分は毎日1時間どう向き合って、表現していくのかというのを考えていた」。
![](https://cdn.clipkit.co/tenants/568/item_images/images/000/149/998/large/c365322a-fc6d-48f4-beac-ac7a9ca40143.jpg?1675050020)
ジャンゴの見る景色を信じてるし、その目に未来を見ていきたい
![](https://cdn.clipkit.co/tenants/568/item_images/images/000/150/002/large/df48d2b2-4d1d-420e-bf01-a9c4e2688a8a.jpg?1675050523)
![](https://cdn.clipkit.co/tenants/568/item_images/images/000/150/003/large/83304582-06e8-4fb1-9b01-68015b57d70c.jpg?1675050547)
![](https://cdn.clipkit.co/tenants/568/item_images/images/000/150/001/large/7e2da282-3dc5-438b-bd5a-c5127976dbda.jpg?1675050471)
side Sara「私はそれをどう撮って、どう残すのか、感情に合わせて切り取るってどういうことだろうって考えていた。毎日向き合うってすごく苦しい。でも何もない部屋でジャンゴだけを撮っていく中で、美しいなって強く思った。ちょっと先に個展を控えていて、作品のテーマは〝未来〞だった。人に聞かれた『未来って撮れると思う?』という問いに、私のたどり着いた答えは『できる』だった。相手の未来を想像して撮っていくことは、未来を撮っていることになるのではないか。私はジャンゴの見る景色を信じてるし、その目に未来を見ていきたいと思った。だから自分の未来を切り取るなら何を撮るかと考えたときに、ジャンゴの目を撮ることにした」。
![](https://cdn.clipkit.co/tenants/568/item_images/images/000/150/005/large/96460ce8-4d45-4811-93de-9054fba60a3d.jpg?1675050862)
side Jango「個展を終えたその年の12月、彩来に強く後押しされて、北海道の実家へ帰った。俳優として成功するまでは帰らないと決めていて、上京してから5年経っていた。誰か連れて帰るなんて想像もしてなくて、彩来とそこまで行っている、行ってしまっていることに、俺らがやってることの深さを見た」。
![](https://cdn.clipkit.co/tenants/568/item_images/images/000/150/004/large/78f0f014-a8b4-459e-87e2-458233f80db6.jpg?1675050630)
ずっと探していく。これは生きることそのもの
![](https://cdn.clipkit.co/tenants/568/item_images/images/000/150/007/large/312292de-ea44-4f6a-871d-aa4aa5fc7614.jpg?1675050976)
![](https://cdn.clipkit.co/tenants/568/item_images/images/000/150/008/large/ea0cc187-1489-4220-8dc1-d9a02a9ec350.jpg?1675051032)
side Sara「作品と記録の境目って、あるといえばあるし、ないといえばない。一人の人を撮り続けていく中で、阿蘇のような作品があって、その作品があるから、じゃあその人が生きていく分岐点を撮らなくていいかっていうと、それは違う。実家に向かう道中で泣きそうになってる顔とかも、ちゃんと残したいし、見ておきたいと思った。薄っぺらくなっちゃわないように、すべてを含めて、深く見たいし、残したい」。
![](https://cdn.clipkit.co/tenants/568/item_images/images/000/150/009/large/0736e7d5-802f-4474-b5d7-472d0d893c36.jpg?1675051056)
![](https://cdn.clipkit.co/tenants/568/item_images/images/000/150/010/large/d4a199cf-90fe-4697-a72b-4bf709ecb83a.jpg?1675051090)
side Jango「生きていても残らないものを、無理やり残している。俺たちがやっていることは、生きているだけなのかもしれない」。
side Sara「探し続けているし、生き続けている。一生撮り続けるって本気で思ってる。でないと、ジャンゴを未来になんて当てはめなかったと思うから」。
GENIC vol.65【「記録と記憶」ドキュメンタリーポートレート】
Edit:Chikako Kawamoto
GENIC vol.65
![](https://cdn.clipkit.co/tenants/568/item_images/images/000/149/981/medium/c12e8736-992a-4f98-9e6b-59718ae680eb.jpg?1675045856)
GENIC1月号のテーマは「だから、もっと人を撮る」。
なぜ人を撮るのか?それは、人に心を動かされるから。そばにいる大切な人に、ときどき顔を合わせる馴染みの人に、離れたところに暮らす大好きな人に、出会ったばかりのはじめましての人に。感情が動くから、カメラを向け、シャッターを切る。vol.59以来のポートレート特集、最新版です。