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写真と動画のはざまで魅せる、Photographic motion。第2回 加藤 光「時間を少し重ねることで、より伝わる空気感」

1枚の写真を撮るようにフレーミングし、ほんの少しの“気配”だけを映す、写真と動画のあいだにある表現「Photographic motion(フォトグラフィック モーション)」。その場の空気を数秒だけ切り取ることで、写真とは異なる余韻が立ち上がります。「動画だ」と身構えずに写真と同じようなプロセスで撮って編集できるのも、Photographic motionの魅力です。
この連載では、Photographic motionという表現を軸に、写真の感覚で動画を撮るクリエイターたちの思考と制作のプロセスを紹介していきます。第2回は、フォトグラファーの加藤 光さん。加藤さんは今回、写真に少しだけ時間を重ねた『写真と動画のあいだにある新しい表現』として、Photographic motionに取り組みました。

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目次

プロフィール

加藤光

フォトグラファー 愛媛県出身、東京都在住。「日常に差し込む光の美しさ」をテーマに、家族写真やライフスタイルフォト、旅先で出会う風景の撮影を中心に活動。自然光を生かした柔らかい描写や、空気感まで伝える透明感のあるトーンが特徴。広告撮影からSNS向けの写真、映像制作まで幅広く携わり、近年はLightroomプリセットの開発やコラム執筆にも取り組んでいる。

新たな表現手法「Photographic motion」

Photographic motionとは、写真を撮るときと同じ感覚でカメラを構え、ほんの一瞬を数秒の動画として記録する表現方法です。特別なカメラワークや演出に頼ることなく、光や空気、その場に流れる時間を残すことを大切にした映像です。写真からほんの少しだけ踏み込んだPhotographic motionはシンプルで、あえて作り込まないからこその素直な美しさが映し出されます。

加藤 光の「Photographic motion」

「写真は一瞬を切り取る表現ですが、Photographic motionは、その瞬間にほんの少しだけ時間を重ねるイメージです。展開やストーリーを強く意識することなく、写真を撮る感覚のまま撮影できます。写真を撮る際のフレーミングや光の捉え方をそのまま用いることができ、それでいて静止画では表現しきれない『空気の流れ』や『わずかな動き』を写し取れるところに、Photographic motionの魅力を感じました」。

「光と風」

読み込み中

加藤光1

カメラ:SONY α7 Ⅳ レンズ:FE 35mm F1.4 GM フィルター:NiSi Allure Soft fps:60fps シャッタースピード:1/8000 Log撮影:なし

「写真でも十分に美しい光でしたが、静止画だと風に揺れるカーテンやゆっくりと動く光の様子までは、完全には伝えきれないと感じました。その点、Photographic motionなら光のゆらぎや空気感など、この場所に流れる静かな時間まで残せるのではないかと思い、撮影してみることにしました。その場所に立っているような、より自然な空気感を残せるよう、三脚はあえて使用せず手持ちで撮影し、撮影後に少しスローモーションをかけています。ノイズを抑えたり、揺れや光の変化をより印象的に魅せるためにスローモーションで編集することも想定し、環境音はあえて録らないようにしています。写真と変わらないフレーミングで数秒だけ時間を重ねることで、空間の持つ雰囲気がより伝わる表現になったと感じます」。

「木漏れ日」

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加藤光8

カメラ:SONY α7 Ⅳソニーα7Ⅳ レンズ:FE 35mm F1.4 GM フィルター:NiSi Allure Soft fps:60fps シャッタースピード:1/2500 Log撮影:なし

「風に揺れる葉や、木漏れ日がキラキラと変化していく様子など、繊細な自然の変化をそのまま残せると思い、Photographic motionで撮影しました。太陽の光が葉に当たり、背景の玉ボケとともに光がゆっくりと揺れ動く様子は美しく、穏やかな時間の流れまでも表現されていると感じます」。

写真と同様に手軽にできる「編集のプロセス」を公開

「『動画』というと難しく感じてしまいますが、Photographic motionは写真を撮る感覚のまま、ほんの数秒だけ時間を切り取るような表現です。写真を撮る延長で撮影することができ、特別な機材を準備したり場面構成を考えたりする必要もありません。それでいて、写真では残しきれない光の変化や時間の流れ、空気感まで表現できる。実際に撮影をしてみて、Photographic motionは普段写真を撮っている人ほど楽しめる映像表現だと思いました。編集も写真同様にLightroomを使って行っています」。

<編集STEP>スマートフォンのLightroomで写真と同じようにお手軽編集

1. 動画をLightroomに取り込む

自作の「オリジナルプリセット」を適用。基本的な色作りは、このプリセットでほぼ完成する形になっています。

2. シーンに合わせて、「ライト」で露光量やハイライト、シャドウ調整

自然光の柔らかさや空気感が残るよう整えます。

3. 「カラー」と「カラーミキサー」で、色温度や各色の彩度などを少しだけ調整

色ごとに、色温度や彩度などを写真同様に調整します。

4. ショート動画編集ソフト「Edits」で、尺や速度を調整

完了したらLightroomから動画を書き出し、Editsアプリに読み込んで尺やスローモーションの速度調整を行い、シーンに合う音楽を追加します。

「写真の仕上げと同じように、明るさや色温度を調整し、自然光の柔らかな印象を大切にしながら色を整えています。その上で、Photographic motionでは動きが加わるため、色を強く作り込みすぎず、光の変化が自然に感じられるトーンをとくに意識しました」。

加藤 光「写真家として大切にしていることを生かしながら、その先の表現を手に入れる」

「写真は一瞬を撮るのに対して、動画は時間の流れを組み立てていく必要があり、双方の撮影手法には距離があるように感じていました。実際に動画を撮ろうとしたこともありましたが、やはりストーリー構成やカメラワーク、音など、動画は考える要素が多く、写真とは違う難しさを感じていました。その点、時間を少しだけ切り取るPhotographic motionは、動画でありながら写真の延長として撮影することができるのが利点です。一般的な動画制作のようにストーリーを作る必要がなく、写真と同じようにフレーミングや光を意識しながら撮れるところが、動画撮影へのハードルを大きく下げてくれました。写真家として普段から大切にしている『光』や『空気感』をそのまま生かしながら、時間の流れを少しだけ加えられるのは大きな魅力。自然な形でチャレンジできる表現であり、同時に、写真と動画のあいだにある新しい感覚の表現だと思いました」。

Photographic motion撮影で使いたいレンズフィルター

動きの中で自然光をやさしく残す「NiSi Allure Soft」

シャープネスを落とし被写体をソフトに描写する効果と、光を拡散して光源の周辺にハレーションを生むグロー効果を得られるソフトフィルターです。大きな魅力は、ソフトフィルターでありながらピントの芯がつぶれず、高いコントラスを維持すること。フレアはハイライトに反応して発生するため黒が締まり、柔らかさの中にもメリハリがある表現が可能です。

「NiSi Allure Softを使用すると、光が柔らかく広がり、ハイライトが自然ににじむ印象があります。強すぎない柔らかな表現になるため、自然光の雰囲気を大切にした撮影との相性がとてもいいと感じました。光の柔らかさや煌めきをより自然に写し出せるため、空気感のある表現がしやすく、Photographic motionのような光の変化を撮るシーンにおいてとても効果的です」。

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