心に刻んだあの日
競技をしている私にとって旅は生活の一部。忘れたくない景色の前でシャッターを切る。
「2023年3月に撮影。ノルウェーのオスロのジャンプ台で。丁度よく風が吹いて国旗が綺麗に見えていました。旗がピーンっと伸びているタイミングを狙ってシャッターを切りました。現像が上がってくるまでドキドキでした」。
「RAW AIRノルウェーツアーで訪れた際のジャンプ台から見た景色です。ここはスキージャンプの起源にもなったとも言われるジャンプ台で、私にとって特別な場所の一つ。天気がいいと街が一望できて気持ちがいいです。いつも私が見ている景色を一緒に眺めて頂けたらと思い選びました。足を入れてみましたが、高さや距離感伝わりますか?」
いつか、砂漠の国を訪れてみたい。競技では行かないから。
「スキー遠征で一年中ヨーロッパを飛び回っています。旅に出ていないのは4月から5月の一ヶ月間程でしょうか...。競技をしながら旅をしているのでもはや生活の一部でもあります。旅写真も遠征先での写真がほとんですが、普通の旅行では訪れないような場所に行くことが多いので、私しか撮れない、私らしい旅写真もたくさんあるなと思っています。どんな場所でも、その時、その場で心が動いた風景や可愛いと思った人やモノ、そして忘れたくない、心に残しておきたい景色を見つけた時にシャッターを切ることが多いです」。
遠征以外にプライベートで旅に出ることは?「一年に一度、会いたい人に会いにいきます。競技柄、砂漠の国には行かないので、いつか行ってみたいなと思っています」。
「小樽の食堂の店先でニシンを焼いているお母さん。美味しく焼いてくれそうだなと思い撮りました。ニシンが美味しく写りそうな角度を探りました」。
「小樽の食堂の店先。ローカル感といい、暖かそうな日差しといい、初めて訪れた場所なのに、なぜか懐かしい気持ちになれる場所でした。淡い光が写るように工夫しました」。
「2023年5月に合宿で訪れた秋田で。近所に咲いていた八重桜が綺麗でした。桜ってベタかもしれないけど、見るとやはりテンション上がってしまう自分がいます。気づいたらこの時期はフォルダが桜だらけに」。
旅先での写真は自分へのお土産を撮り溜めている感じ
「遠征先のドイツのホテルに置いてあった掃除機がぞうの形をしていて可愛かった。この子と目があった時つい笑ってしまいました。『何でも吸い込んじゃうよ』って言ってるみたいで。上目遣いになるような位置から撮りました。億劫な掃除も楽しくなりそうな感じが伝わるといいなと思います」。
「LAからのロードトリップ中、休憩したガソリンスタンドで。建物の入り口の配色と恐竜のマークが可愛いすぎました」。
普通の旅行では訪れないような場所の私しか撮れない、私らしい旅写真
「従兄弟が住んでいるベルギーのアントワープを散歩中に見かけたかっこいいお婆ちゃん。こんな歳の取り方って素敵だなぁと思いました」。
「ノルウェーを街ブラ中に見つけたカフェで。ここのお店のシナモンロールは特にふっくらもっちりしていて美味しかったです。写真からもそれが伝わるといいなと思います」。
「ノルウェーをお散歩中。ここは多分レインボーストリートなんですけど、たまたまパーティーのバルーンを持った人たちが歩いてきてつい写真を撮ってしまいました。レインボーの道だけでも幸せな気分になれるんですけど、幸せそうな人たちがいたのでつい撮ってしまいました」。
髙梨沙羅
1996年10月8日生まれ、北海道出身。小学2年生でジャンプを始め、2018年平昌冬季五輪では銅メダルを獲得。FISワールドカップでは男女を通じて歴代最多の63勝、また男女歴代最多115回目の表彰台に立つ偉業を達成。写真が趣味でカメラ歴は約4年。
愛用カメラ:CONTAX T3、FUJIFILM GW690II Professional、Canon EOS 6D Mark II
GENIC vol.68【俳優、アスリートたちが撮る「旅のフレーム」】
Edit:Megumi Toyosawa
GENIC vol.68
10月号の特集は「旅と写真と」。まだ見ぬ光景を求めて、新しい出逢いに期待して、私たちは旅に出ます。どんな時も旅することを諦めず、その想いを持ち続けてきました。ふたたび動き出した時計を止めずに、「いつか」という言葉を捨てて。写真は旅する原動力。今すぐカメラを持って、日本へ、世界へ。約2年ぶりの旅写真特集。写真家、表現者たちそれぞれの「旅のフレーム」をたっぷりとお届けします。