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過去と未来をつなぐ旅 坂東龍汰

第一線で活躍する俳優やアスリートの中にも、旅と写真をこよなく愛する人たちがいます。彼らが旅先で何を感じ、なぜその瞬間にシャッターを切ったのか。そして旅をすることが自身にどんな影響をもたらしているのか。それぞれの視点をのぞかせてもらいました。
俳優、アスリートたちが撮る「旅のフレーム」 1人目は、俳優の坂東龍汰さんです。

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過去と未来をつなぐ旅

「家族で洞爺湖へ。天気もよくて泳ぎ日和でした。Nikon F2は、現像したらこんなに心地いい色で出るんだなって感動しました」。

「洞爺湖の周りを5分くらい歩いていたら信じられないほどガラス石が落ちていたので並べて写真を撮りました。ガラス石を見つける瞬間って、なんか宝物を見つけたみたいな感じですごくいいんですよね。オブジェとかアクセサリーとか何かに使えたらいいなと思って持って帰ってきました」。

カメラはただでさえ楽しい旅をもっとワクワクさせてくれるもの

「この夏、地元・北海道で映画の撮影があり、そのあと1週間くらい実家に帰りました。今回の写真は、その時に家族でショートトリップに出たときのもの。夏になかなか帰ることができていなかったので、すごく嬉しくて。初めて自分が運転した車に家族を乗せての旅でした。夏の北海道は星空もキレイだし、子どものころからよく行っていた洞爺湖の水もびっくりするくらい透明で。気温も快適で気持ちがよくて、その空気感に浄化されたし、家族もいるので思いっきり充電できました。帰省ではあるけれど、自分にとっては癒しの旅でもありましたね。元々持っていっていたRollei35 SEと、実家に長年眠っていた父のNikon F2、二つのフィルムカメラで写真を撮ってきました。テーマは『感じたことを素直に撮る』。あまり考えすぎず、行き当たりばったりで『今撮りたい』と思った景色を撮れたらいいなと思いながら。Nikon F2は初めて使うカメラだったのでちゃんと撮れているのか不安でしたが、露出に気を付けて丁寧に撮影しました。フィルムなので、普段ならここでシャッターを切るだろうなと思うところで我慢してみたり、今までの感覚とはまた少し違った写真の撮り方ができたと思います。手元に写真が届くまでどんな色味が出るのかずーっとドキドキしてました。カメラはただでさえ楽しい旅をもっとワクワクさせてくれるものだと改めて実感しました」。

「函館の岬で撮った、車の窓に映っている僕」。

「洞爺湖畔沿いにある父のワイン畑からの景色。変わらず静かにどっしりとそこにいる、洞爺湖の湖中島である“中島”はかっこよかったです。今までは『THE夕日』みたいな絵に惹かれることが多かったんですけど、気づいたらこういう薄いピンクに染まる空が好きになってました」。

「夜は満天の星の下でキャンプをして家族で語り合いました。これは親父が引っ張り出してきたオイルランタンに弟が必死で火をつけているところです。中に入れたオイルが違ったのか、火が大きくなりすぎる直前の写真ですね(笑)」。

当時の僕のようにカメラを持った弟の姿がキラキラとしていました

「実家近くの海で。よくここで学校帰りにのんびり海を眺めていたのを思い出しました。小学一年生だった弟が中学三年生になっていて、当時の僕のようにカメラを持ってキラキラとした姿で写真を撮っていたのでそれを写しました」。

「畑で見つけたカナブンをどっちが上手く撮れるか、弟と対決していました。知り合いからニコンのデジタルカメラを譲り受けたらしくて、それを駆使していい写真を撮ってました。まぁまだ僕の勝ちでしたけどね(笑)。でも弟の見えている世界はすごく独特でいい写真を撮るなって思いました」。

心に響く景色も、撮れる写真も変わっていく。そう感じた旅

「幼少期に父が建てた『海の家』で。自分で画角を決めて、ピントを合わせて弟に撮ってもらった写真だったと思います」。

「幼少期の頃から変わらずそこにある巨大な流木。この日は波も穏やかで少し神秘的な空気感でした。今回の写真を見返したときに印象的だった1枚」。

これからは写真を撮る理由や前後の物語を大切にしたい

「中学生の弟がカメラをゲットしていたので、一緒に写真を撮りに行くことができました。兄弟で写真を撮りに行ったのは初めてだったので、すごく楽しかったです。北海道にいた頃の僕も、同じ場所で同じようにカメラを構えていたことを思い出しました。見慣れた景色のはずなのに、そこに成長した弟がいることで、過去の自分と今の自分が見ている世界の違いや時の流れを感じましたね。歳を重ねたからなのか『うわぁ、キレイだな』と思う風景や感じ方も変わりましたし、写真を撮る理由や写っていない前後の物語を大切にするようにもなりました。それは写真家の井崎竜太朗さんと仕事をさせていただいたのが大きくて。『ただシャッターを切るのではなく、なぜ撮りたかったのかを聞かれたとき、その理由を話せた方が面白いよね』って話をしてくれたんです。それは写る側としても大切な視点だなと思いました。今回の旅は家族との旅なのでそこまで『理由』を意識はしませんでしたが、また次に北海道で写真を撮るときは、きっとまた見える世界が違うだろうし、弟のさらなる成長を撮る楽しさもあるだろうし、新しく出会ったカメラとももっと仲良くなって撮れる景色も変わっているはず。昔の記憶の断片を辿りながら、まだ見ぬ未来を想像することもできた、過去とこれからの自分をつなぐような、そんな旅だったように思います」。

「弟が撮りたいと言い出して函館の夜景を撮りに函館山へ。初めて行ったんですが本当にキレイでした。頂上は霧が強かったので、ロープウェイの中からガラス越しに撮影しました」。

「家の近くの海。昔は『THE夕日』を撮ることが多かったんですが、今回は夕日になる直前の陽とキラキラ光る水面の輝きに惹かれてシャッターを切りました」。

坂東龍汰

1997年5月24日生まれ、北海道出身。2018年、ドラマ『花へんろ 特別編 春子の人形』でドラマ初主演。『フタリノセカイ』(22/飯塚花笑監督)で映画初主演をし第32回日本映画批評家大賞の新人男優賞(南俊子賞)受賞。その他出演作に、映画『閉鎖病棟 -それぞれの朝-』、『スパイの妻』、『峠 最後のサムライ』、TVドラマ『ユニコーンに乗って』、『リバーサルオーケストラ』、『王様に捧ぐ薬指』など。現在、映画『春に散る』、『バカ塗りの娘』が公開中。カメラ歴は約12年。
愛用カメラ:Canon EOS Kiss X5、Rollei 35 SE、OLYMPUS PEN-F、Sony α 7R、Nikon F2
愛用レンズ:EF 50mm F1.8 II

坂東龍汰 Instagram
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Information

舞台「う蝕」
【作】横山拓也
【演出】瀬戸山美咲
【出演】坂東龍汰 近藤公園 綱啓永/正名僕蔵 新納慎也/相島一之
【日程】2024年2月10日(土)~ 3日3日(日)
【会場】シアタートラム(兵庫・愛知にてツアー公演あり)

GENIC vol.68【俳優、アスリートたちが撮る「旅のフレーム」】
Edit:Megumi Toyosawa

GENIC vol.68

10月号の特集は「旅と写真と」。まだ見ぬ光景を求めて、新しい出逢いに期待して、私たちは旅に出ます。どんな時も旅することを諦めず、その想いを持ち続けてきました。ふたたび動き出した時計を止めずに、「いつか」という言葉を捨てて。写真は旅する原動力。今すぐカメラを持って、日本へ、世界へ。約2年ぶりの旅写真特集。写真家、表現者たちそれぞれの「旅のフレーム」をたっぷりとお届けします。

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