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【恋する目線のシューティング #11】古性のち(フォトグラファー)

気がつけば、目で追っている。ついシャッターを切ってしまう。
「好き」を撮った写真には、きっとその人だけの恋する眼差しが表れているはず。
#11では、写真と言葉で世界を表現するフォトグラファー、古性のちさんの目線と恋心に迫ります。

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古性のち

BRIGHTLOGG,INC 取締役/フォトグラファー 1989年生まれ。「世界中を飛び回れる仕事が良い」と思い、web デザイナー兼ライターからフォトグラファーへ転身。企画や撮影、コミュニティの運営などに携わる。主宰する「写真を通じ日々に心を寄せるオンラインコミュニティ.colony」は3年目を迎え、2020年7月リニューアルスタートしたばかり。
愛用カメラ:Nikon Z 6II/FUJIFILM X-T3

共鳴しあう 言葉と写真が美しく 互いに引き立てる

1 年の半分を世界のどこかで過ごす生活を続けてきた古性さん。いろんな国を旅すればするほど、日本語が表現する「時」や「色」、「感情」の豊かさに驚くことが増えたそう。「四季があり、それを全身で感じながら表現する日本人の感性に、とても心動かされたんです。一方で、大和言葉や俳句の季語に使われる表現は日常から失われている。どうすれば興味のない人にも届けられるかなと考えて、行き着いた答えが写真とともに視覚で届けることでした」。

「写真が言葉を補足してくれて、情景を広げてくれるものができたときに“これは!”と思うことが多いです。最近だと『瑞風』の作品。スカートを水に見立てて撮ったのですが、ふわりと広がった裾と瑞々しい言葉が上手にマッチした作品だと感じています」。

写真だけでも言葉だけでも届かないところに運んであげたい

古性さんの琴線に触れるのは、美しい表現や語感をもった日本語たち。「例えば、雨を表す言葉は400 種類以上ありますが、細かく空中を漂うような雨を「小糠雨(こぬかあめ)」、細く降り注ぐ雨を「糸雨(しう)」と分けて呼びます。同じ雨でも、情景や匂いが変わるような表現の細やかさに出会うたび、ああ、なんて美しいんだ!と心が震えてしまいます」。そうした経緯で始めたInstagram の新アカウント@nocci_kotoba では、写真と美しい日本の言葉にフォーカス。「今、私が写真と言葉でしたい・できる表現方法は“美しい日本語を世の中に伝え、若い世代に残していくこと”。日本という国は美しいことを改めて伝えたくて、“恋する”というより、勝手な使命感をもって黙々と作っています(笑)」。

特にお気に入りの日本の美しい言葉。

「@nocci_kotoba を始めた頃に出会った『鳥曇り』という言葉は、日本で冬を越した鳥たちが北へと帰る様子からついた、春の曇りの日の名前。鳥たちがゆったりと飛び立つ様子が、少しまどろんだ春のあたたかさとともに頭にぱっと浮かぶ言葉で、とても気に入っています」。

表現の細やかさに出会うたびに 日本語はなんて美しいんだ!と心が震えてしまう

繊細な日本語の魅力を表す言葉の一例。

「その日の気温や気持ち、世の中の様子などを考慮しながら気に入った言葉をピックアップするのですが、“この言葉、美しいなあ”から入って、それを表現するための写真を選ぶことが多いですね。写真も直接的な表現より、少し見る人の想像力を掻き立てるようなものを選びます」。

打算のない言葉がすっと写真に溶け込んでいくとき、両思いになる

言葉と写真が両思いになったと感じた、@nocci_trip に投稿した沖縄・波照間島で編んだ作品。

「"打算のない言葉がすっと写真に溶け込んでいくとき、両思いになる"
この言葉は毎日、全身で自然のエネルギーを感じながら島に1ヶ月住んでいたとき、何度も降りてきました。そのたびにシャッターを切っていたので、写真が言葉にぴったり寄り添ってくれたのだと思います。嘘偽りない、打算も何もない言葉がすっと写真に溶け込んでいくような気持ちでした」。

自然に惹かれるようになってから 木漏れ日に夢中です

今、恋する被写体は自然。「20代はかわいいドリンクなど、人工物に夢中でしたが、30代に入って、自然が作る影や色、音や形に惹かれるようになりました。最近は木漏れ日に夢中です」。

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GENIC VOL.56 【恋する目線のシューティング】
Edit:Yuka higuchi

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