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【写真家が旅する理由:4】上田優紀

なぜ旅をし、そして写真を撮るのか──。
旅と密接にかかわり生きる4名のフォトグラファーに、旅する理由を伺いました。
第4回は、強い信念を持って世界の極地へ旅する写真家、上田優紀さんです。

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上田優紀

写真家 1988年生まれ、和歌山県出身。大学卒業後、24歳のときに世界一周の旅に出発し、1年半かけて45カ国を回る。帰国後、株式会社アマナに入社。2016年よりフリーランスとなり世界中を旅しながら僻地や極地の撮影を行っている。近年はヒマラヤの8000m峰から水中、南極まで活動範囲を広めており、2021年にはエベレスト(8848m)に登頂した。
愛用カメラ:Canon EOS R5
愛用レンズ:RF15-35mm F2.8 L IS USM、RF24-70mm
F2.8 L IS USM、RF70-200mm F2.8 L IS USM

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上田優紀 WEB

想像もできない風景を届けるために

旅は、写真家として人生を賭してやりたいこと、やるべきことのために欠かせない過程

「パタゴニアの氷河をボートから撮影。自然の写真はあるがままに伝えることが正しい姿だと思っていて、できるだけ自分の意識をのせないようにしています。写真であっても、風景を見た人の気持ちはその人のもの」。

「エベレスト登頂を目指している途中、標高7,500m地点から撮影。ここまでにすでに2カ月半、まだこんなに遠い。それまでぼんやりとしたイメージしか抱けていなかったエベレストの、大きさを実感した瞬間でした」。

「初めての作品撮りで訪れたボリビアのウユニ塩湖。ウユニ塩湖にテントを張って、40日くらい寝泊まりしていました。その間、これだけの星空が見えたのはほんの数日。天候などさまざまな条件がそろった瞬間です」。

展示や写真集などで写真を人に見てもらったときに初めて、喜びを感じる

「標高6,000~7,000mまで来ると、空気中に不純物がなく遠くまでクリアに見える。空もよどみのない色をしていて、それはヒマラヤを象徴する風景のひとつだと感じています。アマダブラムを登っているときの一枚」。

「山岳写真家ではなくネイチャーフォトグラファーである、という意識がある。エベレスト登頂をひとつの区切りに撮影のセクションを広げていこうと思い、最初に訪れたのがタヒチのルルツ島。クジラの撮影をした」。

撮ることではなく届け、伝えることが使命

「旅に出るのは撮影をするため。少し掘り下げると、僕は写真という手段を使って、"想像もできない風景"をたくさんの人に伝えたいと思っています。そんな風景と出会ったとき、人の心は豊かになると考えているからです。僕自身、想像もしていなかったような風景や文化との出会いにいつも心が躍り、豊かになるのを実感しています。未知なる風景を求めて、旅先はいつも地球の隅にある自然の中。気を付けているのは、とにかく死なないことです。じつは、旅先で渾身の写真を撮っても手応えや喜びを感じることはまったくありません。喜びを感じるのは、展示や写真集などで作品を人に見てもらったときです。僕の役目はその風景を届け、伝えることであり、作品を持ち帰ることなく死んでしまったら意味がない。なので、過酷な環境に耐えられる装備はそのときどきに合わせて万全にしています。写真を始めたきっかけは、24歳のときに出た世界一周の旅です。そのときはせっかく1年以上旅するなら記録用にカメラを持っていくか、くらいの軽い気持ちでした。しかしこの旅で、自分達が暮らしている世界とはかけ離れた地球の風景は、国籍や宗教、目の色、老若男女関係なく、人々に感動を与え、好奇心を植え付けるものだと知りました。以来、写真家となり、それを伝えることを自分の使命にしました。地球の片隅にある、ほとんどの人が辿り着けないような未知の風景を届けるツールとしてカメラがあり、その風景を僕が届けることで、少しでも誰かの心が豊かになったらうれしいなと思っています」。

GENIC vol.68【写真家が旅する理由】
Edit:Chikako Kawamoto

GENIC vol.68

10月号の特集は「旅と写真と」。 まだ見ぬ光景を求めて、新しい出逢いに期待して、私たちは旅に出ます。どんな時も旅することを諦めず、その想いを持ち続けてきました。ふたたび動き出した時計を止めずに、「いつか」という言葉を捨てて。写真は旅する原動力。今すぐカメラを持って、日本へ、世界へ。約2年ぶりの旅写真特集。写真家、表現者たちそれぞれの「旅のフレーム」をたっぷりとお届けします。

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