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【写真家が旅する理由:3】かくたみほ

なぜ旅をし、そして写真を撮るのか──。
旅と密接にかかわり生きる4名のフォトグラファーに、旅する理由を伺いました。
第3回は、中判フィルムカメラを愛し、光を繊細に捉えるフォトグラファー、かくたみほさんです。

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好きな光がクリアに輝くフィンランドに恋をして

緯度が高く、斜光の時間帯が長い。空気が綺麗で、私の好きな光がクリアに感じられる

「夏至の時季、ラップランド地方では太陽が1日中沈みません。真夜中の太陽を撮りたいと思い、電車とバスを乗り継ぎ向かいました。あたりには動物以外誰もいず、寒暖差による美しい朝もやに包まれる中、深夜1時ごろに撮影しています」。

「国定公園に指定された自然豊かな場所にあるサウナを訪れたときの一枚。大きな湖にはサウナ用や釣り用などいくつか桟橋があり、そのひとつでおじいちゃんとお孫さんのような感じで、釣りを楽しんでいる二人が目に留まりました」。

「フィンランドはりんごの木が多く、みんなジャムやシードルにするそうで、一般家庭の庭にもよく植えられています。このときは散歩中で、落ちているりんごがかわいいなと思いました。その瞬間を大切に、見つけたときの距離感で撮りました」。

すべてに"芽吹き"を感じた6月のフィンランドに魅せられて

アイスランドやノルウェー、ラトビア、エストニアなど、北欧やバルト三国へと足しげく訪れている写真家のかくたみほさん。
なかでも好きなのは、フィンランド。2006年に初めて訪れて以来20回近く訪問しており、かくたさんにとってフィンランドは旅の代名詞といっても過言ではない存在。
「初めてフィンランドに行ったときは仕事で、10月の枯れ木しかないような閑散とした時季でした。ガイドさんに『6月にまたおいで』と言われて、翌年にプライベートで訪れたら、何もかもが生き生きとしていた。植物だけでなく、暗い冬を乗り越えて夏を待ちわびる人々の姿……、すべてに芽吹きを感じたんです。その雰囲気がすごく気に入って、何度も訪れるようになりました。そうしていまフィンランドに惹かれる一番の理由は、光です。緯度が高いので斜光の時間帯が長く、自分が好きな光の中で長い時間写真を撮ることができる。ボリビアやペルーの光も好きだけれど、フィンランドは治安も、日本からのアクセスもいい。また、もともと宇宙や天文が好きな小学生だったので、夏の白夜や冬のオーロラや極夜といった、地球を天体と感じられるようなフィンランドの現象や気候も好きな理由にあります」。

初めて見るもの、知ること、体験──。私にとって旅は社会勉強みたいなもの

「フィンランドの巨匠・アアルトの建築が素晴らしいユヴァスキュラ大学での、放課後の何気ないシーン。フィンランドの建築も好きで、このときはユヴァスキュラ大学の卒業生でもある友人に案内してもらい、校内を散策しました」。

「フィンランドの北の果て、人よりもトナカイが多いのではないかという田舎の町・イナリに向かう途中の町・イヴァロで夏の晴れた日に、一瞬だけ降った雹によって水たまりができていた。建物の屋根が映っているのが目に留まり、カメラを向けました」。

「首都・ヘルシンキの一番の観光スポットである大聖堂。近くに大学もあり、地元の人の憩いの場所でもあります。10月、マフラーを巻いた女の子と、黄色っぽい秋の西日がいいなと思い撮影」。

「ハメエンキロに広大な敷地でハーブや植物を育てているオーガニックコスメの会社があり、そこの畑を撮りたいと思って訪れるも、時季的に1種類くらいしか植えられていなくて。夕日を浴びた幻想的な、普通の家を撮りました」。

「わかさぎ釣りのようなツアーに参加したのですが、誰ひとり釣れず。写真は、ツアー会社の方が事前に仕掛けた罠にかかっていた魚。気温-20℃で魚もすぐ凍ってしまうので、出した瞬間を急いで一枚。形がいい感じに撮れていました」。

都市の先の、その先へ。何もない場所に感じられても、そこでしか出会えない瞬間、光景は必ずある

「初めてオーロラを撮影したときの一枚。ノルディックウォーキングをしている人たちがいたのですが、当たり前すぎでオーロラには見向きもせず。ホテルに戻ると、『こんなに寒いのに撮りに行っていたの』と驚かれました(笑)」。

何度訪れても、必ず新しい出会いと楽しみがある

「写真は私にとって、飽きずに熱中できる好きなこと。そして旅は、私にとって初めて見るもの、知ること、体験することができる社会勉強だと思っています。今でこそ北欧ブームがありますが、行き始めたころはフィンランドの情報があまりない時代で、行くたびに新しい知識が増えていった。国の制度や文化、エコ、デザイン、自然との付き合い方など、人々がどのように暮らしているかを知っていく楽しみがありました。それは今も続いていて、毎回違う喜びがある。写真も、同じ光で同じ景色というのは二度とないから、本当に一期一会。何度撮っても楽しいです」。
作品撮りには中判フィルムカメラを使っていて、撮りたいと思ったタイミングで自分の目の前のものが撮れたとき、早く現像したいとわくわくするのだそう。そんなかくたさんの旅のスタイルは、首都から田舎へと出て、移動しながら撮っていくというもの。
「都市部の、その先が好きなんです。果てに行くほど手つかずの自然の景色が広がっている。自主性を重んじるフィンランドでは、注意・禁止板などの看板がほとんど存在しません。その在り方自体も好きだし、撮影もしやすい。最高のディスティネーションだと思います」。

かくたみほ

フォトグラファー 1977年生まれ、三重県出身。スタジオ勤務、小林幹幸のアシスタントを経て独立。ファッションブランドのカタログやCDジャケット、雑誌などで活躍中。自然光を活かした作風が高い評価を得ている。写真集『キラリキラリ』(パイ インターナショナル)他、『あふるる』、ソール・ライターのアトリエ取材時のZINEなど自費出版も多数。15年以上作品撮りに通っているフィンランドの写真集に『MOIMOI そばにいる』、『光の粒子』(共に求龍堂)がある。
愛用カメラ:Hasselblad 503CX、Canon EOS R6 MarkII、OLYMPUS PEN-F、CONTAX T2
愛用レンズ:Planar 80mm f2.8、RF24-105mm F4 L IS USM

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GENIC vol.68【写真家が旅する理由】
Edit:Chikako Kawamoto

GENIC vol.68

10月号の特集は「旅と写真と」。 まだ見ぬ光景を求めて、新しい出逢いに期待して、私たちは旅に出ます。どんな時も旅することを諦めず、その想いを持ち続けてきました。ふたたび動き出した時計を止めずに、「いつか」という言葉を捨てて。写真は旅する原動力。今すぐカメラを持って、日本へ、世界へ。約2年ぶりの旅写真特集。写真家、表現者たちそれぞれの「旅のフレーム」をたっぷりとお届けします。

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