プロフィール

砺波周平
写真家 1979年生まれ、北海道出身。大学在学中から写真家の細川剛氏に師事する。大学のある青森県十和田市にてパートナーと古い家を直しながら暮すうちに、何気ない時間の中にたくさんの感動があることを知る。2007年に八ヶ岳南麓に移り住み、日々の暮らしに潜む感動を写真を通して見つめ続けている。現在、東京と八ヶ岳の二拠点で衣食住を中心とした出版、広告、ファッションなどの撮影で幅広く活動中。写真集『続・日々の隙間』発刊。
ステートメント

LANDING LAND
彼女の妊娠を機に僕らは青春と下積みを過ごした東北の地を離れることにした。
縁を頼りたどり着いたのは山梨県の森の中の一軒家。
南麓にあるそこから北を向くと、空を覆いつくように険しい山々が東西に連なっていた。
それは新しい生活に立ちはだかる壁のようにも、
生まれたての頼りない僕たち家族を見守るようにも見えた。
展示作品の一部と解説


写真家 砺波周平は、八ヶ岳の麓に家族と暮らしながら、全国各地に赴き写真を撮っている。八ヶ岳での生活は一家の土台であり、家族の日常を撮り続ける砺波の写真の源でもある。
細川剛氏に師事した砺波は師の教えを受け、「自分の足元を見つめる」ことにこだわってきた。それは妻や娘たち、犬、猫とのごくありふれた日々を捉えることであり、また、家族を含む地域の人たちが生活を営む八ヶ岳の地を見つめることだ。撮影は常に自然光のもとで行われるため、被写体と相まって写真に“つくり込んだ”感じはなく、砺波家の日常を垣間見ている感覚を抱く。
娘と犬の散歩をしている際に撮影した、山と山を映す水面の写真に、砺波は「空気が透明だ」という言葉を添えている。これは撮影時の新春の冷たい大気を形容した言葉であろうが、砺波の写真はどれも「透明な空気」に満たされているように感じられる。私たちが自分の目で見る世界と写真の中の世界との間には、当然時間と空間の隔たりがある。しかし、砺波の写真を見ていると、まるで自分の目で、写真に写し取られた景色そのものを見ているような印象を抱く。私たちの肉眼とカメラのレンズとの境界が限りなく近いように感じられるのだ。それは、自然光のもと、ふとした瞬間を写し切る技術と写真に向き合う姿勢に支えられており、「透明な空気」は写真から漂い出るように鑑賞者へと広がっていく。それゆ鑑賞者は、砺波の家族の姿や八ヶ岳の峰、四季折々の散歩道など、生活環境は違えども、写真をとおし自らの家族や日常の生活のごく小さな、しかし大切な一場面を思い起こすのではないだろうか。
砺波は札幌での高校時代から写真を撮っており、森山大道などの写真集を買っていたという。森山は1982年に《光と影》というシリーズをまとめた写真集を発表したが、その源には「写真とは何か」という根源的な問いと、フランスのニセフォール・ニエプスによる最古の写真があったという。ニエプスの写真は8時間もの露光により中庭を撮影したもので、それは窓から太陽光を入れることで像を定着させる必要があったゆえだが、窓からの光によって身の周りを写し取るという写真の起源は、砺波の作品に、彼のスタイルとして息づいている。砺波が見つめる山麓の暮らしの風景。その「透明な空気」の中に自らも包まれる体験を味わってもらいたい。
── 太田智子(山梨県立美術館学芸員)


砺波周平 写真展「LANDING LAND 透明な日常」情報
開催日時
2025年1月2日(木)~3月2日(日) 9:00~17:00
休廊日:
月曜日(祝日の場合はその翌日)
祝日の翌日(日曜日の場合は開館)
その他臨時開館・休館あり
入場料
無料
会場

山梨県立美術館
- 〒400-0065 山梨県甲府市貢川1-4-27
- Google Map
行き方・アクセス
<電車>
JR中央本線「甲府駅」からバスで約15分、「山梨県立美術館」下車すぐ
砺波周平 写真集「LANDING LAND 透明な日常」情報

価格:1,980(税込。本体1,800円)
編集デザイン:土屋誠(BEEK DESIGN)
印刷・製本:藤原印刷株式会社
発行:MOKUHON PRESS
※表紙はリソグラフ印刷で2種類あります