砺波周平(Shuhei Tonami)
写真家 1979年生まれ、北海道出身。大学在学中から、写真家の細川剛氏に師事。日々の暮らしに潜む感動を、写真を通して見つめ続けている。『暮らしの手帖』の巻頭扉写真を担当中。私家版写真集「続 日々の隙間」が、http://tonami-s.com/2891にて販売中。
愛用カメラ:Canon EOS R5、PENTAX 67II
愛用レンズ:RF50mm F1.2L USM、smc PENTAX 6×7 90mm F2.8
愛しい4人の女性たち
2018年「我が家のファミリーカー、1980年式ランドクルーザー40。エンジン音はうるさく、ガタゴト乗り心地は悪く、長距離は正直辛い。だけど、この車で無理なく行ける範囲が我が家にはちょうど良い」。
非日常より日常を見つめたいから、家族を撮る
2021年 長女はな、猫すみ「テスト勉強がんばってるな、と思って部屋をのぞいたら、猫と一緒にぐっすり」。
2018年「女子だけの世界。男子はただ、遠くから見ているしかない」。
「妻、三姉妹、犬、猫、屋根裏にネズミ」との田舎暮らし
長野県・八ヶ岳山麓にて自分たちで改装した家で暮らす、砺波さん夫婦と13歳、10歳、5歳の三姉妹。砺波さんが切り取る家族の写真には、飾らない日常の中での幸せが詰め込まれている。
「非日常よりも日常を見つめたいというのが、家族を撮る理由。撮影場所のほとんどが家か、いつも散歩で行く森に限られています。日常の空気を壊したくないので、レフも照明も使わず、レンズもほとんど交換しません。表情のディレクションなどもせず、場の空気を壊さないよう静かに素早く簡潔に撮るよう心がけています。特に撮りたくなるのは、相手の気持ちが爆発して揺れ動いている時や、逆に気持ちが凪状態の時。家族だからといって自分本位に撮らず、相手とちゃんと向き合って良い表情が撮れた時に喜びを感じます」。
2020年 三女あさ「感情のままに生きられるって、うらやましい」。
2020年 次女はる、三女あさ「こういう何でもない瞬間が幸せなのかも」。
撮る時はカッコつけず、素の状態で真正面から相手に向き合う
「人を魅力的に撮影するためには、自分もカッコつけず、素の状態で真正面から向き合うことが大切。子供はどんどん成長していきますが、こちらは相変わらずバカな大人として動揺せずに撮り続けています。あたり前すぎて見過ごしがちな身近な人や事柄に目を向けていくことを意識しているのですが、歳を重ねても自分が死ぬか相手が死ぬまで、身近な人を撮り続けたいと思っています」。
2020年 三女あさ、猫すみ「梅雨が明けた、日曜の朝」。
2019年「たま~に行く東京は、彼女たちにとってはSFの世界」。
2020年 長女はな、次女はる「コロナであまり出かけられず、1日だけ日帰りで海に行ったらとても楽しかった。夏の思い出って、たくさんはいらないのかも」。
シャッターを切りたくなるのは被写体の気持ちが揺れ動いている時か、逆に気持ちが凪状態の時
2018年 次女はる、三女あさ「ダンボールは最高のおもちゃ」。
2015年 長女はな「鏡の前で、大人っぽくすましているけれど…」。
ずっと変わらずに死ぬまで身近な人を撮り続けたい
2020年 妻、長女はな、三女あさ、妻の友人「仕事をしていたら、にぎやかな話し声が。女子たちが縁側で、楽しそうにおしゃべり」。
2010年 妻、長女はな「2人目を妊娠して、つわりがひどい日々。雑然とした部屋と妻の精神状態がシンクロしているように見えた」。
GENIC VOL.59 【DEAR MY PEOPLE 愛する人を撮る】
Edit: Satoko Takeda
GENIC VOL.59
特集は「だから、人を撮る」。
最も身近にして最も難しい、変化する被写体「人」。撮り手と被写体の化学反応が、思ってもないシーンを生み出し、二度と撮れないそのときだけの一枚になる。かけがえのない一瞬を切り取るからこそ、“人"を撮った写真には、たくさんの想いが詰まっています。泣けて、笑えて、共感できる、たくさんの物語に出会ってください。普段、人を撮らない人も必ず人を撮りたくなる、人を撮る魅力に気づく、そんな特集を32ページ増でお届けします。