目次
プロフィール
平野愛
写真家 大学在学中の2000年より、ダンス・パフォーミングアーツジャンルの写真家としてキャリアをスタート。2008年、フォトカンパニー「写真とプリント社」(現在・写真と色々)を大阪にて共同設立。今年2月、映画『港に灯がともる』公式記録として神戸での撮影に1カ月密着して残した街と人々の風景をまとめた写真集『LIGHTS』(ミナトブックス)をリリース。他、引っ越しに密着した写真集『moving days』(誠光社)、写真担当書籍に『恥ずかしい料理』(誠光社)など。ドラマや映画でのスチール担当として活躍するほか、「住まい」「暮らし」「人」を軸に撮影から執筆まで幅広く手がけている。
愛用カメラ:PENTAX 645N、PENTAX 645N II、FUJIFILM KLASSE S
愛用レンズ:SMC PENTAX-A645 45mm F2.8、SMC PENTAX-FA645 75mm F2.8
撮ること(わたし)を“受け入れてもらっている”という喜びとともに
家族3人、そおっと真冬のニューヨークに旅立った。久しぶりに、自由に“ああいいな”と思った時に撮っていた── (waiting days)
『waiting days』は、ニューヨークで撮影した、平野さんにとって初めて極私的な家族の物語を紡いだ個展。息子さんは、言葉がうまく出てこないという悩みを抱えている。日常に疲れ、学校も行けなくなったとき、母として「動くことや変化することを休んで、少し立ち止まって待ってみよう」と、家族3人で旅立った先がニューヨークだった。
内向的だった自分が社交的になれたのは、写真と出会ったから。撮影しているときの自分は、ほとんどいつも笑っている
鮮明に覚えている感動、たった一枚の写真から
丸眼鏡にベレー帽、雪駄を履いて、首からはクラシカルなフィルムカメラを提げている。当時18歳、芸術大学に入学して5日目、平野愛さんはキャンパスを歩く男性が放つその佇まいに目を奪われた。凝視する平野さんに気づいたその男性が声をかけてくれたことがきっかけで、平野さんもフィルムカメラを買い、翌月には共に写真部を立ち上げる。写真と共に生きる人生が始まった。「もともと人見知りで、10代の頃はとくにその傾向が強く、最初は部屋で独りりんごを撮ったりしていました。それから少しずつ人を撮ってみたいと思うようになって、緊張しながらも幼馴染を撮らせてもらいました。現像が上がって写真を見ると、その中に一枚、それまでずっと目では追い切れていなかった本当にいい表情が写っていたんです。『何だこれは!』ってすごく感動して、相手にその写真を渡すとすごくうれしそうにもしてくれて。誰かを撮って、自信を持って見せることの喜びを知り、その瞬間から写真が好きになっていったように思います」。それから今日までの28年、写真を撮り続け、好きの気持ちにブレはない。
「撮っているときも、現像が上がるまでのドキドキも、写真を渡して喜んでもらう瞬間も、全部好き」だと平野さん。そのなかでも格別なのが、撮影中。「撮っているとき、自分はほとんど笑っています。嬉しいな、楽しいなという気持ちが伝わっているのか、被写体となる方々も一緒に微笑んでくれていることが多い。撮ることを、私自身を受け入れてもらっているように感じられて、すごく幸せな気持ちになります。人見知りだった私が、今では誰かを撮ったり、チームになってみんなで何かを達成していったりすることを、心から楽しいと感じるようになっている。写真は、それくらい自分を変えてくれました」。
ニューヨークはひとつのチャレンジだった。帰国して、“新しいことをしてみよう”とまとめ上げた写真集──(LIGHTS)
GENIC vol.75 【PHOTOGRAPHY IS LIFE. 私が写真を好きな理由】
Edit:Chikako Kawamoto
GENIC vol.75
2025年7月号のテーマは「I love photography ただ、写真が好きで」。
写真は移ろいゆく季節に目を向けることを教えてくれた。
写真は心の奥にしまい込んでいた自分の感情に気づかせてくれた。
写真は自分らしく生きていいよと励ましてくれた。
写真はかけがえのない仲間と巡り会わせてくれた。
写真は素晴らしい世界の見方を示してくれた。
写真から、たくさんのものをもらってきた。
だから、好きな理由はひとつじゃない。