menu

Look/Mother 川原崎宣喜

被写体の自然な魅力を温かく写し出すフォトグラファーの川原崎宣喜が、写真を始めた頃に初めて買ったカメラとレンズで試しに撮影したのは、目の前にいた母。作品は誰かのためではなく、素直に自分のために撮る、と語る川原崎さんに、オリジナルのプロジェクト「Look/Mother」について伺いました。

  • 作成日:
目次

プロフィール

川原崎宣喜

フォトグラファー/写真家 1992年生まれ、大阪府出身。2017年、スタジオ勤務、カメラマンアシスタントを経て独立。写真集『RIVERSAL LETTER』をウェブにて発売中。東京の湿度感を、ファッションを通して表現する『Mist』というZINEを仲間と制作。
愛用カメラ:Contax T3、Leica M9、Nikon D780
愛用レンズ:Summicron-M F2.0/50mm、Nikkor 58mm f/1.4G

Look/Mother

母を撮るのは、自分の大切なものを見失わないため

「自分のために人生の時間を割いてくれた人の姿くらい、 ちゃんと見ろよ」という意味を込めて

「約11年前、写真を始めた頃、初めて買ったカメラとレンズで試しに何か撮ってみようと構えたとき、目の前にいたのが母でした。最初の1枚は、母がチラシを読んでいるモノクロの写真で、それ以来続いている習慣のようなものです。タイトルの『Look/Mother』は、初めて買った写真集で今も大好きな小浪次郎さんの『父をみる/Looking at my father』の影響を受けています。僕の場合、被写体は母なので『Looking at my mother』が直訳的には正しいですが、“自分のために人生の時間を割いてくれた人の姿くらい、ちゃんと見ろよ”という意味を込めて、あえて命令形に。「/」は自分の中でのシャッター切るときの間をイメージして入れています。この作品で大切にしているのは自分のために撮ること。普段の仕事はクライアントさんのために撮っているので、作品は誰かのためではなく、素直に自分のために撮ります。自分の大切なものを見失わないためにも」。

母が私や家族のために時間を使ってくれた確かな証しがそこにある

自分を大切にしてくれた誰かの存在を 思い出してくれたらうれしい

「僕が母を撮るのは、親が自分の子どもを撮るのと同じ理由、同じ意味だと思います。1枚撮らせて、と伝えることもありますが、ほとんど何も指示はしません。スタイリングせず、かっこつけず、母が料理したり、洗濯したりしているところをそのまま撮影しています。あとはテーブルに置かれたメッセージなど、母の匂いが残っているようなものを見つけたときに。本人よりも静物の方が、母らしさが残っていると感じるので。撮り始めた当初は少し照れくさそうにしていましたが、今は慣れた様子です(笑)。作品を見返していて思うのは、写真を始めた頃からスキルは上がっていても、眼差しはたいして変わっていないということ。ここには彼女が私や家族のために時間を使ってくれた証しが確かにあります。自分が親になって、赤子を育てて、人は誰かの助けなしには生きていないことがよくわかったというのもありますが、たとえ親でなくても誰かに大切にされた経験がない人は1人もいないわけで。この作品を見てくれた人が、自分を大切にしてくれた誰かの存在を思い出してくれたらよいなぁと思います。このプロジェクトをやってよかったと実感できるのは、まだまだずっと先のこと。これは母と会えなくなる日がくるまで続きます」。

作品=自分。自分の興味のベクトルが どこに向いているのかを再認識できるもの

「オリジナルのプロジェクトを持つことは、自分の“好き”を知る機会になると思います。僕にとっては、自分の興味のベクトルがどこに向いているのかを再認識できるもの。自分と向き合える時間です。モデルさんを起用するプロジェクトは、スタッフとの会話から始まることが多いですが、それ以外のものは自分が今、何を撮りたいのかを見つめ直す時間に生まれます。短期的なプロジェクトよりも、一生撮り続けるライフワーク的なものの方が、より自分らしさが残る気がしますね。またワンテーマで撮り続けることで、自分の視点がより明確になると思います。ネーミングは僕の場合、撮りためていく過程で変化していくケースがほとんど。タイトルはプロジェクトの第一印象を作るものでもありますが、わかりやすさよりも、自分の中で一番しっくりくるものにしています。そして撮った作品は、できるだけ写真集などの形にするのが理想です。作品=自分なので、形にするときは一層緊張感がありますが、自分のために作ったものが、誰かのものになる瞬間があれば、それはとても幸いなことだと思います。プロジェクトを行う上で何より大切なのはプロセスというよりも、とにかく続けること。途中でやめないこと、それに尽きます」。

Photo Book『Look/Mother』

GENIC SHOP:川原崎宣喜 写真集「Look/Mother」(送料無料)

GENIC vol.76 【Look/Mother】

GENIC vol.76

2025年10月号のテーマは「 撮ることのその先へ This is My Project.」

あなたは「何」を撮っていますか? 自分の表現を説明できますか?
タイトルをつけることができますか?
オリジナルのプロジェクトを持つことは、自分の写真を「言語化」すること。
1つの企画によってまとめられた作品群からは、“作家の声”が聞こえてきます。

あなたも、写真プロジェクトを始めませんか。
一歩進む。撮ることのその先へ。

GENIC SHOP

おすすめ記事

作家性を見出す手段 川原崎宣喜

「Q.15 ファッション誌で人を撮るときに気をつけていることは?」川原崎宣喜|Portrait Q&A 15/45

次の記事