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作家性を見出す手段 川原崎宣喜

作品を撮って、それを自分らしい形で発信する、自身のメディアを持つ写真家たち。スケジュール調整もオファーも自身でこなし、さらに制作費用も自分持ち。それでも好きな作品を撮って、自分流に発信する。クリエイティブな自己表現を続ける理由、作り続ける意味に迫ります。
「フォトグラファーが創るメディアの世界」第2回は、『FRUITSAND』を主軸としたZINEの制作やイベントを開催する、川原崎宣喜さんです。

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目次

プロフィール

川原崎宣喜

写真家 1992年生まれ、大阪府出身。関西学院大学教育学部臨床教育学科卒業後、2017年、スタジオ勤務、カメラマンアシスタントを経て独立。カメラ歴8年。雑誌やWeb媒体を中心に幅広いジャンルの撮影を手がけている。
愛用カメラ:Leica M9/10、Contax T3、Nikon FM2
愛用レンズ:SUMMICRON-M F2.0/50mm、LIGHT LENS LAB M 35mm f2、Nikon AI Nikkor 50mm f/1.4S

フォトグラファーが創るメディアの世界

ZINE『FRUITSAND』とは?

モデルの阿久津ゆりえ×フルーツサンドを被写体とした、川原崎さんが手がける一冊。

Model:阿久津ゆりえ
Styling:神野里美
Hair&Make-up:高松由佳
Graphic design:渡辺慧
Illustration:庄子佳那

阿久津ゆりえ

モデル、タレント、ラジオパーソナリティ。

作家性を見出す手段

ZINE『FRUITSAND』を作った理由は?

「実は『FRUITSAND』というZINE自体はかなり前に出版したものなんです。モデルの阿久津ゆりえちゃんが一緒に写真を撮ろうと声をかけてくれて、1年半くらいかけてのんびり撮ったものを本にしました。作品撮りをしてもインスタにのせると一瞬でサーっと流れてしまう。でもせっかく皆さんの力を借りて作り上げるのだから何かシリーズ化したいということになり、フルーツサンドを題材に写真を撮ることになりました。他の人とはかぶっていないもので、可愛い(モデル)×可愛い(フルーツサンド)を撮るのはどうかな?って感じで決まりました」。

紙にすることでじっくりと写真を味わってもらいたい

紙媒体にした理由は「写真をじっくり見てもらえるからです。写真ってプリントして初めて写真っていう気がします。紙への印刷は、インクを吸いすぎて色が転んだりすることもありますし、すべてをコントロールできない楽しさがZINEの魅力だと思います。ただ、部数にもよりますが製作費に何十万円もかかりますし、編集さんがいない分、写真以外のところにも気を配ることが増えるので、大変だなとも思います。みんな楽しんでるかな?撮りたいもの撮れてるかな?って。全員がハッピーな作品にしたいんです。最終的にメンバーそれぞれに仕事や人脈となって戻ってくるのが、ベストな作品撮りの形だと思っています」。

FRUITSAND ZINE

締め切りを決めずのんびり作っていけるのもZINEの魅力

『フルーツサンドとロゼと写真』イベントを開催した理由は?

「『FRUITSAND』と同じスタッフでまた作品作りをして、何かイベントもやりたいなと思い『フルーツサンドとロゼと写真』というイベントを亀戸駅の“ナチュラルワインと青空 めくる”というバーで開催しました。ZINEを購入してくださった方に、今回のイベント用に撮り下ろした写真をプリントして差し上げたり、壁一面にポスターを貼っていただいたり。フルーツサンドに合うワインを用意していただいて、ゆるっとお酒を楽しむようなイベントでした。おかげ様で大盛況で二日間のイベントでしたがパンパンでした。亀戸に引っ越してきて、街の人と何かできたらいいなって思っていたんです」。

子供がこれから育っていく場所を写真の力で活気づけたい

「実は僕、町内会にも属していて(笑)。子供がこれから育っていく場所でもあるので、いい街にしたいなと思っているんです。普段仕事では関わらない方と繋がりができたことも貴重でした」。

「あとは改めて写真の楽しさを実感しましたね。仕事での撮影ももちろん楽しいんですが、例えばカタログだと服を見せることに必死になりすぎて、本当にいい写真が選ばれずちょっと残念だなって思うこともあって。でも作品撮りは全部自分でセレクトできる。スタッフも信頼しているメンバーなので、とくにこちらから何も指定しなくても素敵な作品に仕上げてくれる。だからまたフルーツサンドを題材に作品撮りをしたいと思っています。いずれはコーヒーや、地域、農園とかとコラボするイベントができたらいいなって思っています。年に1回でもいいんです。締め切りを決めずのんびり作っていけるのも魅力かもしれないですね」。

自分の作家性を見出し発信し続けることが重要な時代だと思う

子供に向けた手紙の代わりとなる自費出版の写真集を制作中

「近くの川辺を子供と散歩しながら川面の写真を撮っています。発売日も未定ですが写真集にできたらと思っているんです。風が強い日は何も映ってないけど、穏やかな日はきれいに景色が映り込みます。子供の未来も心穏やかな日もあれば騒がしい日もある。子供への手紙でもある写真集にしたいんです。自費出版なのである意味切腹モノですけどね(笑)。だけど年を重ねるごとに作家性だったり、自分らしさって大事だなって実感するんです。もともと商業写真をやりたくてフォトグラファーになったこともあり、ZINEや写真集にはそこまで興味がなかったんです。だけど、先輩方を見ていると商業だけで長くいい仕事をするのは今の時代には少ししんどくなっていると実感しています。写真家の数が増え、誰でもきれいな写真を撮って発信できる世の中ですし、一緒に仕事をしていた編集さんが別部署に異動することで仕事が途切れてしまうことも多々あります。そこで改めて作家性が必要になってくるなと。この人に仕事をお願いしたいと思ってもらえるよう、作品を発信し続けることが大事になってくると思っています。自分らしさが何なのか、まだ明確な答えは見出せていませんが、結局撮って撮って撮りまくっていたら自分らしさ、自分だけの作家性を見出せる、そう思っています」。

GENIC vol.71【フォトグラファーが創るメディアの世界】
Edit:Megumi Toyosawa

GENIC vol.71

2024年7月号の特集は「私の写真世界」。
写真は生き様が反映されるアート。何を感じ、何を受け取って生きてきたのか。写真に投影されるのは、自分自身です。自分らしさとはいったい何なのか?その回答が見つかる「作品」特集。私の写真世界へようこそ。

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