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「写真(プロジェクト)は自身の映し鏡」瀧本幹也 ~吉沢亮写真集/写真展『FOSS』より

自身のプロジェクトも、オファーがあって取り組むプロジェクトも「常に自問自答をしながらやっている」という瀧本幹也。「作品にステートメントを付けることは大切。そもそも、一言添えることができる写真が“いい作品”であり、答えがなければ、それは“なんとなく”でしかないから」。自らが提案したアイスランドで、俳優を超えた人類としての吉沢亮を捉えたい、と撮り進めた、吉沢亮写真集/写真展「FOSS」を中心に、「いつでも“自分の写真”を撮り続ける」写真家 瀧本幹也のプロジェクト論を伺いました。

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目次

プロフィール

瀧本幹也

写真家/撮影監督  1974年生まれ、愛知県出身。藤井保氏に師事後、1998年より広告写真をはじめ、コマーシャルフィルムや映画など幅広い分野の撮影を手がける。第一人者として広告写真界を牽引する一方で、自身の作品制作も精力的に行い、写真展や写真集として発表。代表作に『BAUHAUS DESSAU』、『SIGHTSEEING』、『LAND SPACE』、『LOUIS VUITTON FOREST』、『CHAOS』、『LUMIÈRE』、『PRIÈRE』他、2025年9月に奈良・平安時代の重要物品を納める東大寺の正倉院正倉を撮影したモノクロームの作品を収録する写真集『正倉院』を発売。

「写真(プロジェクト)は自身の映し鏡」

FOSS #50 ©2025 Mikiya Takimoto

撮りたいものはいつも自分の中にあふれている。それでも、最初から解像度が高いわけではない。撮っていくうちに選択に迫られ、選択するうえで明確な理由を見いだし、方向性を決めていくことで具体性を帯びていく。自身のプロジェクトも、オファーがあって取り組むプロジェクトも常に自問自答をしながらやっている」と瀧本幹也さんは話す。

FOSS #47 ©2025 Mikiya Takimoto

「FOSS」はアイスランド語で「滝」を意味する。写真集のタイトルにもなった、アイスランドの雄大な滝を背景に撮影した作品。瀧本さんは撮影中、タイトルのヒントになるような言葉を見つけるたびにメモ代わりに写真に撮っていた。宿泊先の近くに『FOSS』と書かれた看板が掲げられており、「語呂がいいな」と写真に収めていた。

FOSS

FOSS #106 ©2025 Mikiya Takimoto

地球を感じる場所で、芯のあるポートレート写真集ができたら ——。

FOSS #30 ©2025 Mikiya Takimoto

FOSS #68 ©2025 Mikiya Takimoto

心が動いたものを飛躍させて、テーマに付属させていく。

FOSS #02 ©2025 Mikiya Takimoto

実際に撮影していくなかで、解像度が高まっていく。

FOSS #04 ©2025 Mikiya Takimoto

FOSS #05 ©2025 Mikiya Takimoto

アイスランドで撮影中、吉沢さんの足元に転がっていたひとつの小さな石が瀧本さんの目に留まった。波に削られ、長い歳月の末に生まれた小石のかたち——、心が動いた瞬間だった。写真集には、小石を手にした吉沢さんの姿やその手の寄り、小石の姿をポートレート的に捉えた作品も収録されるほか、表紙のくりぬきデザインにも採用。8月に東京で行われた展示『FOSS』では、持ち帰った小石自体の展示も行うなど、現場で心が動いた瞬間の出会いを大きく飛躍させた。

写真を撮る際、すでに編集イメージを考えながら撮っているという瀧本さん。
「写真集の編集って、映画的でもあるんです。引き画で状況を伝えるマスターshotがあり、そこから主観的なshotにつなげたりなど。片ページには手元の寄りがあった方が良いなとか、モノクロを少し入れたほうが良いなとか、そういったことを現場で思い浮かべながら撮影を進めています」。

瀧本幹也さんが撮影した吉沢亮写真集『FOSS』。2025年7月に先行販売をスタートし、8月には都内2か所で展示も行われた。約3カ月に及んだ映画『国宝』の撮影を終え、30歳の節目を迎えた吉沢さんと瀧本さんが向かったのは、白夜のアイスランド。「大きな仕事をやり遂げた直後の、生身の彼の姿を、大自然の中で見てみたいと思いました」と、瀧本さん自ら撮影地を探し、溶岩の大地や氷河などの雄大な自然の中で撮影に挑んだ作品が収められている。

写真集『FOSS』に加えて、2つの展示も展開した。

2025年8月7日(木)~24日(日)の期間、代官山ヒルサイドフォーラムで行われた吉沢亮写真展『FOSS』の展示風景。写真集と同様のストーリー性を持たせつつ、展示ならではの見せ方に趣向を凝らした。

吉沢亮 写真展『FOSS』 代官山ヒルサイドフォーラム 展示風景

『FOSS』 瀧本幹也 写真展 旧朝倉家住宅 展示風景

展示『FOSS Satellite Exhibition』は、国指定重要文化財でもある大正8年に建てられた旧朝倉家住宅にて開催
された。「日本家屋の床の間には、時折、宇宙のような広がりを感じることがある」と瀧本さん。そんな空間に調和する写真作品を、掛軸などに仕立てあげた。

プロジェクトテーマを明確にするのは、絶え間ない自問自答と素直な心の躍動。

海から生まれた生命、人類を、地球目線で捉える——。吉沢亮写真集『FOSS』には、瀧本幹也さんが描く壮大なストーリーが存在する。NHK大河ドラマ『青天を衝け』で主役を演じ、映画『国宝』で李相日監督との3カ月に及ぶ撮影を経て、「30歳という節目を迎えた吉沢亮の姿を、撮っておきたい」と瀧本さんに依頼があった。吉沢亮さん本人から名前が挙がったのが一昨年3月のこと。“国宝”という大役を演じきった直後の顔は、何かこれまでとは違うと思った。そこから写真集の根幹をどうしていくか、まずは方向性を詰めていくという形で、写真集『FOSS』の制作は進んでいった。

「はじめは、いわゆる“タレント写真集”にしたくないという思いがありました。吉沢亮という人間を、おおげさですが、人類の代表のように撮りたいと。それでまずは、『アイスランドの大風景の中で撮影したい』ということを伝えました。タレント写真集というと恋人や友達目線になりがちですが、そうではなくて、もっと大きな視点で、地球目線で吉沢さんを捉えたいと考えたのです。アイスランドは惑星としての景色が残っていて、地球が星として生きている様子が感じとれる。大きな視点にならざるを得ないようなその場所で、このタイミングでしか撮れない彼の本気な表情や美しさを、俳優としての吉沢亮を超えて、人類としての吉沢亮を捉えた、芯のあるポートレート写真集にしていきたいというのがスタート地点でした」。

瀧本さんの作家活動において、地球という惑星と生きものとの共存や、生命の循環は一つの大きなテーマだ。その根源は、天体観測の虜になっていた小学生時代までさかのぼる。天体望遠鏡を操作し、毎夜月や土星の環を観測し、それでは飽き足らず、父のカメラを望遠鏡に取り付けて撮影していた。小学生のときに撮った星空の写真には、そのときの瀧本さんにとって一番興味があってワクワクするものが写っている。

「写真やプロジェクトって、自分自身の映し鏡のような感じがあります。その時代、社会、自分の居場所、環境…それらに自分がどう反応しているのかっていうのが、自ずと滲み出てくるのだと思います。それもまた、自分にとってプロジェクトを形作る大きな要素です。とはいえ毎回、始めるときにはまだ、完成形のイメージが見えているわけではありません。どんなプロジェクトも進めながら、より具体的にしていく。そのためには選択を迫られる場面も多く、また選択の際には理由を明確にする必要があります。自問自答を続けることで、自分がそのとき一番関心があり伝えたいと考えているテーマが固まっていくものだと思います」。

答えがなければ、それは “なんとなく” でしかない。一言添えることができる写真が、いい作品。

瀧本さんは、作品にステートメントを付けることは大切だという。見る人にとって作品に対する興味や理解が深まるという理由だけではなく、そもそも、“一言添えることができる作品がいい作品”だと考えているからだ。考え、答えを出すことをしなければ、それは“なんとなく”でしかないから。と同時に、小学生の頃に天体写真を夢中になって撮っていたときのように、“心が躍動する”ことに正直に向き合うこともまた、テーマを明確にするうえで大切な要素だと話す。

「『FOSS』では、 “小石”が一つの大きなテーマとなりました。写真集全体の構成はロケハン前にぼんやり作っていましたが、その時点で小石は構想の中に存在しておらず、撮影中、吉沢さんの足元に転がっていたのが目に留まったことがきっかけです。その場所に行ったからこそ惹かれるものがある。心が動いたものを飛躍させて、ストーリーを生み出し、テーマに付属させていくということをする。心の動きに素直に向き合い、同時に考え続けることで、プロジェクトは形になっていくのだと思います」。

吉沢亮 写真集「FOSS」情報

タイトル:吉沢亮写真集『FOSS』
撮影:瀧本幹也
発売元:アミューズ
税込価格:8,800円
仕様:ハードカバー/A4 変形版/164ページ

A!SMART:「FOSSS」

GENIC vol.76

2025年10月号のテーマは「 撮ることのその先へ This is My Project.」

あなたは「何」を撮っていますか? 自分の表現を説明できますか?
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