古性のち
写真家・エッセイスト 1989年横浜生まれ。10代の頃「世界を旅しながら生きたい」と思い、手に職を持つことを決意。美容師→Webデザイナー→Webライター→フォトグラファーとどこにいても仕事ができる環境やスキルをもとめ転職を繰り返す。それまで部屋の隅で埃を被っていたカメラを連れ出すキッカケになったのは、2016年の世界一周の旅。各地で写真を撮りつつ、帰国後、本格的に仕事としてスタート。その後も国内外、世界中を飛び回りながら生きる。現在はタイ・チェンマイと岡山県玉野市の二拠点生活。飾らない日々をドラマチックに表現することが得意。SNSでは美しい日本語と写真を組み合わせた作品を発表中。著書「雨夜の星をさがして 美しい日本の四季とことばの辞典」(玄光社)、共著に「Instagramあたらしい商品写真のレシピ」(玄光社)。2024年2冊目となる著書を発売予定。
【BIOGRAPHY】
<2001年>
中学校でリレー作文が流行る。友達と原稿用紙に物語を書きながら交換する創作活動に明け暮れる日々。
<2002年>
ホームページを開設。詩やエッセイなど雑記を書くのが日課に。この頃フリー素材として出回っていた写真をphotoshopで加工して遊んでいた。
<2006年>
オンラインゲームと出会う。現実の世界よりも楽しくなり、もともと好きではなかった学校生活から離脱。不登校への道へ。
<2007年>
本屋で見つけた旅人・高橋歩さんの本に感化される。「オンラインゲームの世界の中のように自由に好きな所へ行ける大人になりたい」と思い、世界を旅しながら生きることを決意。
<2009年>
はさみ1本で世界中を旅するために美容師になる。
<2010年>
当時一目惚れした人の気を引きたくて一眼レフカメラを購入。
<2011年>
美容師の激務に心が折れ離脱。大好きなパソコンで仕事をすることを決める。
<2014年>
Webデザイナーに転職。転職した先の会社で社内ブログを書く。1記事目がネットで大々的に広まる。「ネットの力ってやっぱりすごい」と「文章書くの楽しいな」を再認識。
<2015年>
世は空前のwebライターブーム。社内でwebライターに転職。この頃から仕事で写真も撮るように。
<2016年>
遂に念願の世界一周へ。「仕事をしながら世界を回る」が当時珍しく、SNS等で注目される。各地から写真と文章のコンテンツを発信。
<2017年>
2016年の旅がきっかけで写真と文章のセットの仕事が増える。
<2019年>
タイ・バンコクに移住。コロナの到来と共に1年足らずで日本に帰国。
<2020年>
「日本をもっと好きになりたい」と思い「美しい日本語と写真」の作品作りをスタート。SNSフォロワーが一気に10万人を超える。
<2022年>
言葉と写真を軸に仕事の幅を広げる。初の著書「雨夜の星をさがして 美しい日本の四季とことばの辞典」(玄光社)を出版。
<2023年>
2度目のタイ移住。チェンマイと日本の二拠点生活をスタート。
私とカメラの関係の始まり
ガラケー時代から写真を撮り始め、”片思い”をきっかけに一眼レフカメラを購入
写真はずっと、ガラケー時代から撮っています。中学生の頃は自分で撮った写真を加工し、ホームページを作っていました。写真屋monogramさんから出版された「誰がなんと言おうと大好きな写真 2011」という本に写真を掲載していただいたのが、「世に写真が出た」の第一歩。本当にうれしかったです!当時片思いしていた彼が大好きだったmonogramさん。「写真が掲載されたら褒めてもらえるかもしれない!」という邪な思いで応募しました(笑)。その彼の気を引きたくて、2010年彼と同じ一眼レフカメラを購入したのが、私のファーストカメラです。
2020年、Zシリーズと出会う
GENICの仕事でZ 6に触れたのが、Zとの付き合いの始まり
Zとの出会いは2020年。GENICとの仕事を通じてZ 6を手にとりました。初めてフルサイズミラーレスカメラが私の人生にやってきて、ドキドキしたのを覚えています。その後Z 6IIと付き合うようになって、当たり前のように一緒にいることが多くなりました。私もカメラも徐々にお互いがお互いの存在に慣れてきたような感覚で、気がつけば、一緒に歩いていける存在に。今はZ 6IIと、もともと使っていたカメラの2台を愛用しています。
正直、Z 6IIに一目惚れはしませんでした。持ち運んでいる間も「重いなー」と思っていましたし、手放しで見た目も好み!とは言えません。「このカメラ、好きかもしれない」と思ったのは、岡山県で日が沈んでいく時間に写真を撮ったとき。今まで使っていたAPSCのカメラでは捉えることのできない、美しい夜の世界が広がっていたのがきっかけで、ぐっとZ 6IIとの距離が近づきました。
Z 6IIの好きなところは、時間・気温・季節を問わずに写真を楽しめること。プライベートはもちろんですが、特に仕事の場面で力を発揮してくれます。Z 6IIがあれば大丈夫だな、と余計なことを考えずに安心して作品づくりに集中できる。スペック面では、さまざまな機能を自分好みにカスタマイズできるところ。特にフォーカスポイントをワンプッシュで中央に戻すカスタムと、サイレント撮影が気に入っています。あとは、ダブルスロットで撮影データをバックアップ記録できるところも。万が一のデータが消えてしまうリスクを最小限に抑えながら撮影にのぞめるので、ストレスなく撮ることができます。
無条件で安心できる画質で、Z 6IIが仕事の心強いパートナーに
ポスターの撮影でZ 7IIを使用したとき、初めての長期ロケで緊張していたのですが、思い通りの作品を撮ることができました。以降、仕事の現場には必ずZ 6IIを連れていっています。私自身も安心ですし、突然「これ印刷することになりました」とクライアントに言われても「Zで撮っているから大丈夫だな」と無条件で安心できる。仕事のパートナーとして頼りになるところはやはり画質です。あと頑丈さやバッテリーの持ち、多少の雨にも負けないタフさ!私は心配性なので、少しでも不安なことがあるとそっちに意識を持っていかれてしまいます。写りはどうかな?とか、本当にこの装備で大丈夫かな?とか。Zと一緒だとそういう心配をする必要がなく、安心した気持ちでZに任せられるのが大きいです。
Z 6IIとたくさん仕事をしてきたので、特に印象に残っているものを選ぶのが難しいのですが……あえて出すとすれば、手に入れてから一番はじめに書いたZ 6IIについての記事でしょうか。写真は岡山県で撮影をしました。初めてZ 6IIを手にしたときの喜びがあふれていて良い記事だな、と(笑)。今読み返しても「愛がこもっているなあ」としみじみ感じます。そして、今見てもやはり夜の写真、良いですね。我ながら、見ていて星空を撮影したくなりました。
なんでも撮れるNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sを愛用
レンズはお仕事で使用させてもらったことがきっかけで、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sを愛用しています。普段、これを絶対に撮る!と決めて出かけるより、街中でふらっと気軽にスナップを撮ることのほうが多いので、荷物は極力少なく済ませたい。だから焦点距離が24-70mm、というなんでも撮れる数字が気に入りました。これを1本持って遊びにいけるので重宝しています。
感覚的な人間なので、あまり特性について語れることが多くないのですが、そんな私でも、このレンズとカメラの相性は「良いな」と思えます。そして見たままの世界をそのまま、もしくはそれ以上に美しく残してくれる。写真を仕事にする上での大事なパートナーです。
Z 6IIと仲良くなって表現の可能性が広がった
Z 6IIは「今日は写真を撮りたい気分だな」と思ったときには極力連れて出るようにしています。持ち出す日はかならず「1枚はシャッターを切る」と決めていますし、やっぱりスマートフォンで撮影するよりも思い出に残ります。
Z 6IIに出会うまでは被写体がパキッとした写真を撮ることが多かったのですが、Z 6IIで出せるボケ感が気に入り、そこから抽象的な写真を撮ることが増えました。葉っぱの裏を接写してみたり、ピントを合わせずに空を撮影してみたり。特に雨の日の玉ボケをぼんやり写すようになってからは、雨の日がご褒美になりました。
あとは海ですね。太陽のキラキラした光を受けた海を、ぼんやり写すと宝石みたいに水面が光るのが気に入って、晴れの日の海でよく撮るようになりました。
そして描写力が安定したおかげでフォトプリントを販売したり、グッズを制作したりできるように。今までは印刷に手を出せなかったのですが、一度頼んでくださった方がまたリピートで依頼くださるなどと、お客様側にも満足していただいている肌感があります。
Z 6IIで撮った思い出深い写真といえば、当時運営していた写真コミュニティのみんなと公園に秋を探しにいったときの秋桜。この頃、多重露光での作品づくりを模索していて、この写真が撮れたとき、「そうそう!こういうのが撮りたかったんだよなあ」と心が躍った瞬間を昨日のことのように覚えています。
まわりの評判が良かった作品はやはり「写真と日本語」のシリーズでしょうか。特にZシリーズで撮影したものは写真単体でもよく目を引くので、美しい日本語と組み合わさったときのSNS上での反応は強いです。
新たな表現、新たなZとの出会い
刺激をもらえるGENICのイベント出演
フリーのフォトグラファーをしていると、なかなか他のフォトグラファーの方と関わる機会がないので、GENICとNikonのイベントで同じNikon Creatorの方に会うと、「こんなにもカメラを楽しんでいる仲間がいるんだ!」と肌で感じられることが心強いですし、刺激を受けています。一度Zユーザーになった人って、その後もずーっとZユーザーなイメージ。イベントでたびたび顔を合わせる方もいて、その方たちの進化を実際に目にすることも多く、そのたびに「私ももっと上手になりたい!」と背筋が伸びます。
イベントなどの仕事を通じて触れたZシリーズの魅力
「初心者カメラ教室」をさせていただいたZ fcは、カメラを持つのが初めてな人にも安心しておすすめできるカメラ。ボディのカラーラインナップもたくさんあって楽しいですし、フィルムカメラ譲りのデザインは部屋に置いてあるだけでも気分が上がる。ダイヤル式なので丁寧に写真を作っている感じが味わえるのも、うれしいポイントだと思います。
フルサイズのイメージが変わる小柄で持ち出しやすいZ f
2023年10月に発売されたZ fを借りたので、少しの間チェンマイで一緒に暮らしてみました。タイは年間を通して本当に日差しが強く、気温も高くて蒸し蒸ししていて、なかなか重いカメラを持ってお散歩というのが厳しいのですが、Z fならストレスなく持ち出せます。また、海外はどんな国でもやはり防犯面には気をつけねばならず、大きいカメラは持ち出しにくいですが、小柄なZ fはクオリティを落とさず、そこを回避できるので、とても重宝しました。鮮やかなタイの景色を細部まできちんと写してくれています。
Z fを初めて手にしたとき、まずは「本当にこれ、フルサイズなのかな?」と思いました。フルサイズの印象ってもっとゴツいイメージがあったので……。その後、コンパクトで可愛いこの見た目で、しっかりとした画質で出してくれるんだ!と気づいたとき、テンションが上がりました。クラシックなデザインもとても気に入っていますし、さらにバッテリーの持ちも良い。まさに私のように歩きながら撮影することが多い人にとって、良いパートナーだなー!と感じました。
”カメラとの行動範囲”を広げてくれたZ f
気に入っているのは普段から使用しているZ 6IIと同様、さまざまな機能を自分好みにカスタマイズできるところやダブルスロットにバックアップ記録できることなど。よりストレスなく持ち歩けるため、家の近くのカフェにも一緒に出かけるなど、カメラとの行動の幅が広がりました。
現在、チェンマイの雑貨店と一緒にワンピースブランドを立ち上げ中で、試着品を友人に着てもらって撮影したのですが、モデルではないためカメラを向けると緊張してしまい...…!そのときにコンパクトで大袈裟ではないZ fを向けられるのは、うれしかったです。
Z fと一緒にNIKKOR Z 28-75mm f/2.8のレンズも試用させていただきましたが、まさになんでも撮れるレンズでした!ボケ感も綺麗ですし、何個かレンズを持っていても、ついこの子ばかり連れていってしまうという……(笑)。歪曲収差もほとんど感じられなくて、最強のズームレンズだと思います。
動画作品に挑戦したCP+オンライン登壇
2022年、2023年とCP+オンライン登壇させていただき、単純に「呼んでいただけるんだ!うれしい!」ってなりました (笑)。 CP+は私にとっても思い入れのあるイベントなので、こうして何度も関わることができてとてもうれしいです。
【古性 のち】「Z 6IIがわたしにくれた表現の広がり~SNSと動画での表現~」Z 6II、Z 24-70mm f/2.8 Sなど│ニコンCP+2022オンライン
2022年に発表した動画作品は、そうですね……。とにかく動画作品を作ったこと自体が少なかったので「どうすれば飽きずに観てもらえるか」を必死に考えて絵コンテを切った記憶があります(笑)。至らない点も多いですが、レモンソーダのしゅわしゅわーっとなるシーンが個人的に撮りたかった画とぴったりのものを出せたので、満足しています。今見返すと「あれもこれも直したい!」ってなりますが……(笑)、 それでも本当に動画初心者の私がなんとか観られる作品に仕上げられたのは、それこそこの作品で使用したレンズの画力なのかなと。Z 24-120mm f/4 S、やはりいいですね。撮りたいものなんでもまるっと受け止めてくれて、懐が広いです。
【古性のち】「Moderato Z 6IIが在る暮らしのこと」Z 6II、Z 24-70mm f/2.8 S、Z 24-120mm f/4 S│ニコンCP+2023オンライン
2023年の作品でのこだわりは、音楽と動画が切り替わるところの気持ちよさ。いろいろなパターンを試しながら何度も何度も調整しました。瀬戸内での暮らしをvlog風に収めた作品なので、普段の暮らしから遠いもの(過剰な演出など)をいれないよう、日常の中の美しさを切り取って集めました。2022年に続き、私の動画技術はまだまだなのですが……動画って写真と違って、少しの粗もごまかせないというか、結構シビアだなーと感じる部分が多くて。でもZ 6IIだと寄りも引きもカクカクせず、画質のクオリティも高いので、作品の世界観に集中できるな、と感じました。
写真家・コラムニストとしての現在地
二拠点生活をしながら、言葉と写真で表現する活動を幅広く
現在タイのチェンマイと岡山で二拠点生活中です。”撮ること”や”表現すること” に関しては、特に劇的な変化は感じていません。ただ、海外のフォトグラファーたちと接する中で、自分の写真の個性や癖を見つけられたような気がしています。今は写真と日本語を使って、もっと広い世界にアプローチできないかを模索中です。
仕事は写真単体での表現は珍しく、いつも詩や短歌、美しい日本語を添えることが多いです。その組み合わせでものづくりすることが多いので、写真とコピーライティング、写真と短歌など、写真と言葉に関する何かを組み合わせて表現する機会がよくあります。先日はホテルのロビーに飾るアートを制作しましたし、自治体との仕事をはじめ、本当に幅広く活動しています。
フォトグラファーと胸を張って名乗れるように
2022年のCP+で話しましたが、Zを使うようになって、挿絵だった写真が言葉と同等になりました。今の私にとって、言葉と写真の関係性は「互いに互いを引き立て、支え合っているもの」。Zは、今まで言葉だけでは物足りなかったところに、力を貸してくれる存在だなと思います。また、これまで自分の表現したい世界に画力が追いつかなかったのですが、そこを補填してくれているという印象が強いです。Zがいたからこそ胸を張って「フォトグラファー」と名乗ることができているんだと思います。
そして私は、動画を実際にやってみて、改めて写真と向き合っていきたいと実感しました。良くも悪くも、動画はわかりやすい。でもわかりにくいところに美しさや繊細さは宿るのかなあ、と。私自身、動画作品を観るのは好きなのですが、撮るのは写真の「美しい一瞬を捉える、逃したら終わり!」な世界観のほうが面白いなと感じています。私にとって写真は、世界の見え方や私の可能性をこれからも無限に広げてくれる、お守りのような存在なんです。
Zシリーズと描く未来予想図
私たちが生きているこの星の美しさに改めて気づかせてくれるZと、これからも
今年は撮影の仕事が増えそうなのと、私自身も表現の幅を広げたいので、手持ちのレンズをもう少し充実させたいです。ほしいのは望遠レンズ!以前お借りした NIKKOR Z 24-120mm f/4 S が楽しすぎたので、狙っています。
去年は二拠点生活を始めたばかりで、暮らすことで精一杯だったので、今年は仕事でも、チェンマイのいろいろな場所で写真を撮りたいです。その写真を発表する場も、チェンマイと日本どちらでも持てたらうれしいですが、今はチェンマイで個展を開きたいなと思っています。あとは趣味レベルでもいいので、AIを使った写真生成を自分の実際に撮影したものと融合して、新しい表現を探してみたいです。プライベートでは世界一周で訪れた国をもう一度Zと回りたいですね。特にアイスランド。
最初は「仕事なのでマストで使うカメラ」だったZ。その仕事が終わってからも「もっとこのカメラで世界中を覗いてみたい」と感じた理由は、ファインダー越しの世界の輪郭が艶やかでキラキラしていたから。以前、記事にも書いたのですが、「これはきっと特別な人のためのカメラじゃなくて、自分たちが生きているこの星をもう一度、美しいと思い直したい人のためのカメラだな」と感じています。今も昔も、美しい瞬間をたくさん連れてきてくれる。これからもZは、仕事もプライベートも一緒に過ごすことができる心強いパートナーです。