片渕ゆり
佐賀県出身・東京在住。大学卒業後、コピーライターとして働いたのち、どうしても長い旅がしたいという思いからフリーランスに。2019年から旅暮らしをはじめ、TwitterやnoteなどのSNSで旅にまつわる文章や写真を発信している。2021年、『旅するために生きている』を上梓。
Canon EOS R8
上位機種の「EOS R6 Mark II」(2022年12月発売)の高い基本性能を継承しながら、小型・軽量を実現したフルサイズミラーレスカメラ。フルサイズならではの豊かな表現力と小型・軽量ボディーを両立し、また高速・高精度なAFや優れた被写体検出、トラッキングも素晴らしいカメラ。動画撮影においても静止画同様のトラッキング技術を搭載したAF性能を持ち、フルサイズならでのボケ味など、表現の幅を広げてくれる。
片渕ゆりの〈もっと、エモーショナル〉
リール動画_文字ナシ
「ソフィア・コッポラ監督の映画で、コマーシャル撮影のために来日した主人公たちの淡い恋を描いた『ロスト・イン・トランスレーション』があります。異国として日本が描かれているのが面白く、そこから着想を得て作ったのが今回の動画です。初めて日本に来た女の子と、その子の目に映る渋谷を、1本の動画にまとめることを目指しました」。
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たどり着いた動画撮影の在り方
ポートレート動画を撮るには——“写真集になるかどうか”
「動画撮影の一つのステップアップとして、漠然と“人物を撮りたい”と思っていました。どうやったら素敵な人物動画を作れるのか調べていたら、『ポートレート動画を短尺で撮る時は、写真集になるかどうかを意識する』という言葉が目に留まりました。各シーンをサムネイルで切り出した時に、1冊の写真集として成り立つかどうか」。
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「これまでは起承転結で考えてしまっていたのですが、写真集に置き換えてみたら、引きで空まで写し込んだ写真や後ろ姿、体の一部だけの写真も入れたいなど、違う視点から考えられるようになったんです。実際、その頭で改めて映画やドラマを見ると、一つのシーンを作り上げるのに何十テイクも撮っている。これはすごく大きな発見でした。これまで1ショットで満足していたのを、分解する作業に入りました」。
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実際の撮影に向けて——綿密な撮影リストを作成!
「クラウド型のメモアプリである『Notion』に、1シーンのポートレート撮影時に撮るべきテイクのチェックリストを作ることにしました。まだ動画に慣れていないのもあり、まずは思いつく限りの選択肢を上げ、最終的に『前』『後ろ』『斜め』『横』『引き』『寄り』『パーツの手』『パーツの足元』『パーツの足元スロー』『パーツの目元と口元』『小物として服・持ち物・アクセサリー』『角度違いで俯瞰とあおり』『アクションとして走る・振り向く・髪をかき上げる・小物を手に持つ』の項目が並ぶチェックリストに。また項目それぞれに、参考にしていた動画のキャプチャをスクショして添付。実際の撮影で、取りこぼしがないかどうか、撮りたいイメージで撮れているかどうかを確認するためのリストです」。
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よりシネマチックな動画を目指して——撮影時間を決める
「シネマチックな動画というものにずっと憧れがあって、最終回となる今回は、どうやったらよりエモーショナルでシネマチックな動画にできるか、さまざまな文献を読み調べました。多く書かれていたのが、“斜めに差し込む光がシネマチックな演出を強めてくれる”というもの。それで、撮影の時間帯は、斜陽が差し込む夕方に決めました」。
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撮影テーマに合う&自分の動きやすさを考えて——撮影場所を決める
「場所は、動画のイメージを決めた段階から渋谷一択。ふだんよくいく場所なので、撮りたい動画に対するロケーションにもあたりがつけやすく、何より今回の設定として、アイコニックな観光地にぴったりだと思ったためです。撮影当日に偶然目に留まり撮影したシーンもありますが、ほとんどは事前に“ここでこの画を撮る”と決めていたものです」。
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ポートレート動画撮影——何度も何度も演じてもらう!
「ここまで準備を進めると、あとはもう実践するだけ!お願いしたモデルさんに何度も何度も同じ動きをしてもらって、バリエーションをつけて撮っていく。一つの場所でひと通り撮影が済んだら、その場でチェックリストと付け合わせ、撮れていないカットがないかどうか、また被写体の距離感や角度などが目指すイメージから離れてしまっていないかどうかを確認します。不足していれば、もちろんリテイク(笑)」。
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登場人物の女の子が見たであろう風景の撮影——ふだんと違う視点を考えた
「渋谷って、自分にとって超日常。コンビニのおにぎりをはしゃいで食べていたり、すごく粘ってスクランブル交差点の撮影をしていたりする観光客たちを見ている側でした。でも今回の動画では、そういう人達の目で渋谷を見たいと思いました。ふだんは人であふれていて、ごちゃごちゃしていて汚くて…というイメージの渋谷を、新鮮な目でどう撮れるか考えた時、昨年地上波で放送していたドラマ『silent』が頭に浮かびました」。
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「『silent』は大事なシーンが渋谷で撮影されていて、当時から映像へのこだわりが話題になっていて。確かにドラマで見る渋谷は、すごくきれいな場所に見えました。観光客の視点も想像し、ドラマで印象に残ったシーンを思い浮かべながらロケ地を考えていきました。また、自分が渋谷をよく知っているというのは大きくて。撮りたいイメージを渋谷のどこなら撮れそうか、知っている街だからこそできたことかもしれません」。
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Canon EOS R8とRF135mm F1.8 L IS USMの組み合わせは最高でした!
「ドラマチックで、よりシネマチックな動画を撮る上で、EOS R8と望遠レンズRF135mm F1.8 L IS USMの組み合わせは最強でした! 135mmは、ポートレートを撮るために適した焦点距離だと思い使わせてもらったのですが、人物だけでなく、近影も遠景も、何を撮ってもやわらかくてきれいな空気感を勝手に演出してくれるんです。その描写が本当に素晴らしくて、今回の動画のテーマにもぴったりで、撮っているのは私だけれど、まさに他人の目を借りるような、ふだん見えているけれど見えていない世界を写し出してくれました。もう1本使った、RF85mm F2 MACRO IS STMも落ち着いた描写がとても素晴らしかったです。また、EOS R8も安定の素晴らしさ!フルサイズでありながらボディがとても軽いので、とくに鍛えているわけでもない私の腕でも、望遠レンズをつけて十分に歩き回りながら、撮影を続けることができました。交換レンズなど他にも荷物を持った状態でそれができるのは本当にすごい!と感激しました。ちなみに、RF135mm F1.8 L IS USM とRF85mm F2 MACRO IS STMはともに明るいレンズなので、白トビしないようNDフィルターを装着して使っていました」。
動画撮影にチャレンジする連載を終えて
「vo.1の時から、一番変わったのは私自身の心の持ちようです。写真はノンフィクション的な楽しみ方があるけれど、動画は違うんだなって。納得のいく動画を作るためには、事前に撮りたいイメージを持って、それに向けて香盤表など計画を立ててから撮影に入ったほうが、近道なんだなっていうのが、4回目でわかりました。それは同時に、動画ならではの “自分で作る”という感覚の体感でもありました。計画や撮影段階だけでなく、編集段階でも同じ。自分の視点がより強く深く反映されていくのが動画だと思いました。どんな音楽をつけるかでも、印象はガラッと変わりますしね。自分の演出や工夫の分岐点がたくさんある。これはまさに、4回という積み重ね、試行錯誤の中で知った感覚。そして今回やっと、上がってきた動画への手応えや、納得という部分を得ることができました。これまで、記録やメモ代わりに撮っていた旅の動画では、1回の旅をどうまとめたらいいのか想像がつかなかった。でも今は、どう撮っておけば短い旅の作品動画を作れるか想像がつくようになりました。その視野を持って、次の旅では動画にも挑戦してみようかなと思います」。
【今回使用したカメラとレンズ】
RF85mm F2 MACRO IS STM
オープン価格
RF135mm F1.8 L IS USM
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EOS R8・ボディー
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