愛おしき“鎌倉Days”
自分の中の好きという気持ちを表現
「七里ヶ浜にて突然目の前に現れた、壊れた花壇。不思議な壊れ方をした花壇が、優しい光に包まれて生き物のように思え、儚さと愛おしさを感じて撮った1枚です。強い西陽が当たっていたので、遮らないよう自分の立ち位置を決定」。
「同じく七里ヶ浜にある自動販売機が、草花に埋もれそうになっていることに驚き、すぐにカメラを構えました」。
「散歩中、鎌倉高校前で日が暮れ始めて空がオレンジがかってきた時間、これをどう撮ろうかと考えていたらバイクが通りかかり、咄嗟にシャッターを切りました。海の見える道を二人乗りで駆け抜けていくというシーンが、終わることのない青春を表しているように見えます」。
「生まれ育った場所であり今も暮らす鎌倉を中心に、身近にいてくれる人、街中にある自然や光、海などを撮っています。暮らしの中で、潜在的に自分が気になるものや好きなシーンを被写体に選んでいるので、自分の中の好きという気持ちを表現しているのがスナップ写真と言えるかもしれません。自然とカメラを向ける先には、自分にしか見えていない愛が存在していると感じています。例えばいつものように笑っている大切な友人、今を逃したら消えてしまいそうな光と人の行き交う街、そんな瞬間に愛おしさを感じ、シャッターを切っています。自分にとって写真は自己の投影であり、生きる記録。だからこそ、ずっと暮らしてきた鎌倉に何かを残したいという気持ちを強く持って、撮り続けている気がします」。
スナップ写真には、愛と余白を込める
「鎌倉のスペイン料理屋で、初めて幼馴染とお酒を飲んだときのエビのアヒージョ。他愛のない話の最中、オリーブオイルの跳ねる音と共に置かれたことに二人で感動した、その瞬間も記録したくて撮影」。
「鎌倉の古民家のご主人と会話する友人。窓から柔らかい光が二人を照らしていたのが微笑ましくて撮影。見た人がこの空間を味わえるよう、覗き込んでいるような構図に」。
「スナップ写真でこだわっているのは距離感と編集。被写体と物理的な距離を空けることで、見た人が考えられる余白を残すよう意識しています。距離を取りすぎると薄い写真になりがちなので、中望遠のレンズを使って被写体を見せつつ周りの情報も取り込んで、思考と時間の余白を与えられるように。また見せたい被写体が生きるように、1枚ずつ土台となる色を変えたり、白飛びも黒潰れも恐れずに編集することも。そんな風に表現した愛と余白のある写真は、数年経って見返したときにもさらに愛おしさが増し、まだ知らなかった自分と出会える面白さがあるように思います」。
ありのままの暮らしを写真に残し、未来の自分へ伝える
「学生時代に大切な決断を迫られていたタイミングに、藤沢駅でこの優しい光の風景に出会い、何か答えが見つかったような気持ちになって撮った写真。分岐する線路の先は見えていなくて、もっと自由でいい、自由な選択があるということを感じました」。
「現在のありのままの暮らしとして、未来の自分へ伝えたい1枚。仕事仲間であり幼馴染である友人を写真に残しておきたくて、よく撮っています。鎌倉にある自分たちの古民家オフィスで、休憩中に爆笑している姿が自分たちらしくお気に入り」。
モロイ ユウダイ
写真家 2000年生まれ、神奈川県出身。高校3年のとき、初めて一眼レフを購入。1年間のイギリス留学から帰国後、本格的に写真の世界へ。大学に在籍しながらクライアントワークやSNSの活動を行い、2022年には初の個展「青に生きる」を地元鎌倉で開催。卒業後はTV番組をメインとした映像制作会社を経て、現在は鎌倉の古民家オフィスを拠点に写真と映像の仕事を中心に行なっている。
愛用カメラ:FUJIFILM X-Pro3、OLYMPUS PEN S/OM1
愛用レンズ:Voigtlander NOKTON 35mm F1.2、フジノンレンズ XF23mm F1.4R、NIKKOR-S.C Auto 50mm F1.4
GENIC vol.69【“暮らし”の中にカメラを向けて】
Edit:Satomi Maeda
GENIC vol.69
1月号の特集は「SNAP SNAP SNAP」。
スナップ写真の定義、それは「あるがままに」。
心が動いた瞬間を、心惹かれる人を。もっと自由に、もっと衝動的に、もっと自分らしく。あるがままに自分の感情を乗せて、自分の判断を信じてシャッターを切ろう。GENIC初の「スナップ写真特集」です。