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いつか撮れなくなる、その日まで。 はらかずあき

構えずに、そこにある日常に焦点を当てシャッターを切ると、愛しい日々が溢れている。最も身近な存在ともいえる我が子を撮り続けることは、表現者にとってごく自然な行為なのかもしれません。撮り続けることで刻まれていく記憶と記録の断片を少しだけ見せてもらいました。
「愛しき記録と記憶。我が子を撮り続けるということ」2人目は、週末フォトグラファー・会社員の、はらかずあきさんです。

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目次

いつか撮れなくなる、その日まで。

「次女は工作が大好き。大きなダンボールで窓付きの自分専用部屋を作りました。末っ子長男は、お姉ちゃんが作った部屋に興味津々。覗き込む姿に惹かれました」。

「夏休みのある日、庭に水を撒くお手伝いをしてくれました。末っ子長男がとにかく自分でやってみたくて、ホースを渡された瞬間に水を撒き始めたので、お姉ちゃんたちがびっくりしています。私にとっては、カメラが捉えた決定的瞬間です」。

子供たちが子供でいられる時間も、子供たちと一緒に過ごせるときも、きっとそれほど長くないと気づいた

同じ被写体を同じ場所で何年も撮り続けられるのが家族の魅力

「トンボを捕まえようと二人で走り回っていましたが、いつしか別の遊びになりました。自分もしたことあるなと思いながらシャッターを切りました」。

「おばあちゃんと同居しているため、子供たちはおばあちゃんが大好きです。よく絵本を読んでもらいます。真剣な面持ちで絵本を見る子供たちが印象的でした」。

自分の本当にやりたいことは何かを考え、5年ほど前から写真を撮り始めたんだそう。「一番身近にいた被写体だったので自然と子供たちを撮っていました。成長していく姿や生活を、記録として残すのはもちろん、同じ人物を同じ場所で何年も撮り続けられるのが、家族を撮る魅力です。私は子供の表情を主題にするのではなく、行動や佇まいを主題とした写真を撮っているのですが、それが自分らしさだと感じています」。
はらさんにとってスナップ写真とは「“心が動いた瞬間をありのまま切り取った写真”、“2度と見ることが出来ない奇跡の瞬間を捉えた写真”、“絶景でも映えでもないが、見る人の心を動かす写真”だと思っています。だからこそ、子供のありのままの姿を撮影出来たときに嬉しくなります。その一方で、家族を撮り続けるうちに、子供たちが子供でいられる時間は、そんなに長くないことに気づきました。写真を撮っていなかったら気づけなかったかもしれません。時間は限られているので、撮れなくなるそのときまで撮り続けるのだろうと思います」。

「近所の駅へ電車を見に行きました。田舎なので1時間に1本くらいしか電車が来ません。電車を1回見て、家へ帰ろうと話をしたら、もっと見たいと言ってこの格好になりました」。

Q.どのようなスナップ写真が撮れたときに喜びを感じますか?

A.子供のありのままの姿を撮影出来たとき。

「なぜ、こうなったかは忘れてしまったのですが、タイトルを付けるなら“全身で表現する不満”。次女ならではの仕草がとても面白かったです」。

「階段の狭いスペースにハマっている姿が次女らしい。子供でなくては出来ない仕草だと思います。“全身で表現する不満パート2”です」。

Q.家族を撮り続けてよかったことは?

A.子供たちが、どんな生活を送ったのか、そして子供たちの成長していく姿を記録として残すことが出来るところ。

「私の家では、秋になるとおばあちゃんが干し柿を作るのが恒例です。末っ子長男は、そのお手伝いが出来てとても満足そうでした。その表情に心が動きました」。

Q.「最強のスナップシューター」だと思うカメラは?

A.自分が使用してきたカメラの中では、FUJIFILM X100Fです。

「熱が出て寝ている息子。今元気だからこそ見返せる写真です。子供の元気の無い姿を撮るということが、親として正しい行為なのか、自分の中でまだ整理出来ていません。子供の写真を撮り続けているから、シャッターを切れたのかもしれません」。

Q.ご自身にとってズバリ、写真とは?

A.私という人間が存在していたという証。

「玄関でぼーっとしていた、末っ子長男。左足を上げた瞬間にこれだと思いシャッターを切りました。まさに子供にしか出来ないポーズだと思いました」。

「この瞬間を見たとき、自分も子供の頃、カゴやダンボールに入るのが好きだったことを思い出しました」。

はらかずあき

週末フォトグラファー・会社員 1972年生まれ、長野県出身。仕事での行き詰まりをきっかけに、自分の本当にやりたいことは何かを考え続け、写真を始めることを決意。家族(主に長女、次女、長男の3人の子供たち)を被写体に写真を撮っている。
愛用カメラ:Sony α7 II、Sony α7C、FUJIFILM X100F
愛用レンズ:SIGMA 50mm F2 DG DN、NOKTON classic 35mm F1.4、FE35mm F1.8

はらかずあき Instagram
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GENIC vol.69【愛しき記録と記憶。我が子を撮り続けるということ】
Edit:Megumi Toyosawa

GENIC vol.69

1月号の特集は「SNAP SNAP SNAP」。
スナップ写真の定義、それは「あるがままに」。
心が動いた瞬間を、心惹かれる人を。もっと自由に、もっと衝動的に、もっと自分らしく。あるがままに自分の感情を乗せて、自分の判断を信じてシャッターを切ろう。GENIC初の「スナップ写真特集」です。

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