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CP+主催フォトコンテスト「ZOOMS JAPAN 2025」ショートリスト8作品が決定 vol.1(佐藤幸浩、柴田祐希、竹腰隼人、藤井ヨシカツ) 

「ZOOMS JAPAN」は、フランスのフォトコンテスト「Les Zooms(レ・ズーム)」にCP+が賛同し、新進写真家の世界進出を応援するため2015年から開催、今回で8回目を迎えるフォトコンテスト。昨年11月末で応募を締め切り、応募総数331作品の中から、フランス写真界の第一線で活躍する審査員の厳正な審査により、最終選考作品であるショートリスト8作品が決定しました。本記事 vol.1では佐藤幸浩、柴田祐希、竹腰隼人、藤井ヨシカツ、4名の作品をご紹介します。
グランプリ受賞作品は、CP+2025会場及び、本年10月にパリで開催される写真映像機器ショー「Salon de la Photo(サロン・ドゥ・ラ・フォト)」会場で展示。さらに、同イベント期間中に現地パリに招待され、フランス写真界のキーパーソンから、アドバイスを受ける機会を獲得できます。グランプリは、2月21日(金)に発表予定。

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目次
CP+主催フォトコンテスト「ZOOMS JAPAN 2025」ショートリスト8作品が決定 vol.2(松本成弘、宮田草介、村岡亮輔、村上賀子)

ショートリスト

佐藤幸浩

アノニマススケープ

「性的な姿態を撮影する⾏為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(令和5年法律第67号。以下「性的姿態撮影等処罰法」といいます。)が成⽴。

「撮影罪」。2023年7⽉13⽇から施⾏された性的姿態等撮影罪の略称。テレビ等のメディアと同じく、多くの⼈間によって「性的姿態等」という部分を切り取られてミスリードを⽣み、拡散される。字⾯だけが1⼈歩きし、表現の⾃由は脅かされ、私のような路上で撮影する者が萎縮せざるを得ない状況に加えて、個⼈情報保護法への意識の⾼まりも起因し、路上で撮影するのが憚れる⾵潮。私⾃⾝、堂々とカメラを構え、時に声を掛けて撮影させて頂いているからか、被写体とのトラブルを経験していないが、ここ最近はカメラをぶら下げて歩いているだけで職質される事が増えたと⾝を持って実感している。

⾳楽は全ての⾳符とコードは使い果たされたと⾔われているが、その組み合わせや⾳⾊の違い、乗せるメロディーによって新たな曲は⽣まれ続けている。写真も様々な事柄を受け⼊れ、組み合わせる事でまだまだ創造の余地はあるはず。⾃分の写真に写る被写体を切り抜きanonymous(匿名性)を作り出し、⾃分が撮ったscape(⾵景)を当てはめ、肖像権などのトラブルをscape(回避)する。社会に抗うのではなく、逆に流れに乗って楽しむ。路上撮影は私にとって、社会の⾵潮という敵から逃⾛するゲームのようなもの。

柴田祐希

-family- gajog 가족 / kazoku 家族

柴田祐希

写真家 名古屋を拠点に活動。名古屋造形大学 写真家 山田亘氏に師事。2012年に​フリーランスのフォトグラファーとして活動を始める。インターナショナル・フォトグラフィー・アワード2021 エディトリアル/プレス部門 第3位受賞。プロバスケットボールBリーグ・名古屋ダイアモンドドルフィンズ オフィシャルカメラマンを務める。

私は⽇本⼈の写真家です。でも少し前までは「韓国⼈」でした。⽇本で⽣まれ育ち、在⽇韓国⼈としてのアイデンティティに向き合うことを避けてきたように思います。しかし、家庭の事情を機に⽇本国籍を取得した際、在⽇韓国⼈について深く知りたいと思うようになり、それがこのプロジェクトの始まりでした。私は韓国にルーツを持つ⻘年たちが集う在⽇本⼤韓⺠国⻘年会を訪れ、交流を深めていきました。彼らは⻘年会に参加する理由も、韓国との向き合い⽅も皆それぞれ違いますが、互いに受け⼊れ合い学びを続けています。そして、私は⻘年会⽀部会⻑を務める⻘年の祖⺟と出会うことになりました。彼⼥は在⽇韓国⼈2世で、裕福な家庭ではなかったため、若いうちから働かなければなりませんでした。当時、⽇本で韓国⼈がまともな仕事を⾒つけるのは難しく、60年前の彼⼥の仕事は元⾵俗店だった旅館の経営を⼿伝い、朝から晩まで働き続けました。今はその場所をビジネスホテルにして孫と共に営んでいます。彼⼥は働きすぎで曲がってしまった指を眺めながら、淡々と、時に笑いながら過去の⼈⽣を語りました。夫はギャンブル中毒で、韓国に追放され、その後⾏⽅不明になりました。息⼦の⼀⼈は⾃殺し、もう⼀⼈は経済的に成功した⽣活を送っていますが、⻑い間会っていません。孫は優しく、仕事を⼿伝ってくれていますが、彼が事業を営むにはあまりにも優しすぎると⼼配しています。元々はビジネスホテルに⻑期滞在していた⼥性がパートタイムで働き、12年間⼀緒に過ごしています。彼⼥は私にワカメスープを作ってくれました。韓国では誕⽣⽇に⾷べるものです。私は18歳のときに亡くなった⾃分の祖⺟のことを思い出しました。とても強く、厳しく、そして愛情深い⼈でした。彼⼥もまた壮絶な⼈⽣を送ってきました。そのワカメスープは、私の祖⺟が作ってくれたものと同じような味がしました。

竹腰隼人

寂として

竹腰隼人

個展
・2024 愛知県 ジェイアール名古屋タカシマヤ「鎮守天降る所」
・2023 愛知県 ジェイアール名古屋タカシマヤ「寂として」
・2023 東京都  Double Tall – Art and Espresso Bar「世界を反転させて - hide and seek -」
・2016 愛知県  NIAgallery「FIGMENT」
・2015 愛知県  TORIDE「暉の森」

受賞歴
・2024 アメリカ New York Art Competitions「第6回 チェルシー国際写真コンペティション 2024」Cash Prizes Awards 受賞
・2022 イギリス「Quality Art Foundation Award」写真部門優勝
・2017 東京都 EMON PHOTO GALLERY「7th EMON AWARD PhotoCompetition」ショートリスト
・2017 東京都 The Artcomplex Center of Tokyo「ACTアート大賞展」優秀賞
・2016 東京都 国立新美術館「アジア創造美術展2016」新人賞
・2015 全国29展示会場「FUJIFILM“PHOTO IS”」小山薫堂推薦 100選入賞

脳の障害により意識の消失を起こす私は、記憶の無い⾃⼰の存在を定義できずにいます。現実も疑わしく感じられ「確かなものとは何か」という疑問が頭を埋めるのです。この疑問を明らかにする⽅法が、⽊々を主とする⽣命に向けたネガポジ反転という技法でした。⽣命から感じた印象は、視点を変えても変わらずにそこに在り、私⾃⾝の存在を⽰すものだったのです。写真とは対象を正確に描写するものとされますが、私の写真は感覚を可視化することで⾃⼰認識を促し、アイデンティティを問うものです。

私は写真技術の発展に伴い可能となった⼿法を活⽤しながらも、カメラが捉えた現実という描写を壊すことで、存在の確認を試みます。反転技法を施し、デジタル現像を重ねていく中で画像情報は壊れ失われていき、伝統和紙にプリントすることで滲み不鮮明な像となります。写しとった現実が崩れていく中で、確かに感じた「命の印象」だけが抽出されるのです。写真もデータやAIで補正できてしまう時代の中で確かだったことは「私が感じた」という事象だったのです。そして思わされる「⾃分とは何か」という問いの正体を知るために、写真を通して感覚や印象の根源に迫り、新たな視点から思考を刺激することを⽬的とします。

藤井ヨシカツ

ヒロシマ・グラフ – 永遠の流れ

藤井ヨシカツ

写真を表現主体としたビジュアル・ストーリーテラー。記憶、家族、事件や歴史をテーマとした長期プロジェクトに取り組んでいる。少部数限定の手製本による写真集を主な発表媒体とし、2014年パリフォト・アパチャー財団写真集賞ノミネート、2015年Self Publishing PHOTOLUX Award受賞、2018年The Anamorphosis Prize受賞。ニューヨーク近代美術館(MoMA)図書館やヴィクトリア&アルバート博物館をはじめ、各国の美術館や大学図書館に収蔵されている。

真夏の早朝、真っ⻘に晴れ渡った空から⼀発の爆弾が落とされた。⼀瞬にして街は⽕の海と化し、全てが失われた。80年近く経った今も原爆症に苦しむ⼈々。そして、それが遺伝するのではないかという恐怖⼼が、何世代にも渡って植え付けられてきた。戦後、⼀部の被爆者が語り部となり、彼らの悲惨な経験が世界中に発信されてきた。しかし私の祖⺟は、⾃⾝の被爆体験や苦労を家族にすら語って来なかった。思い出したくもないという感情と、⽣きていることが申し訳ないという気持ちもあるという。しかし奇跡的に⽣き延びた祖⺟がいたからこそ、今ここに私がいる。広島が背負った歴史の証明として、私が祖⺟の物語を私が語り継がなければならない。爆⼼地から1.2㎞圏内で被爆した⼈々は、その⽇のうちにほぼ50%が死亡したと⾔われている。祖⺟が被爆したのは、ちょうど爆⼼地から1・2㎞にある⾃宅だったので、50%の確率で⽣き残ったことになる。ほんの些細なことが⼈間の⽣死を分け、祖⺟はかろうじて⽣き残った。しかし、⾃分が助けることができたかもしれない⼈のことを語る祖⺟の表情は、データだけでは想像できない、重く暗いものだった。⼤きな傷跡の残る左脚さえ⾒なければ、彼⼥が被爆者だとは気付けないだろう。同じように、広島の街には⾼層ビルが⽴ち並び、被爆者から直接体験を聞ける機会も減少した今、過去の出来事を感じ取ることは難しい。しかし今も健康被害を持つ⼈がいるし、結婚や就職で差別されてきた⼈々も存在する。それら全てがヒロシマの記憶であり、祖⺟と私達家族の歴史もその⼀端である。思い出すことの⾟さを押し殺して、私や未来の誰かのために話してくれた祖⺟。彼⼥への尊敬と愛情を込めて、私はこの作品を後世のために遺す。被爆者が負った傷と⼼の痛みを忘れてしまわないために。

総評

ZOOMS JAPAN 2025写真賞の8人のファイナリストの作品には、「アイデンティティ」という共通のテーマが見受けられます。柴田祐希は、自らのルーツを辿ることでアイデンティティを探求し、佐藤幸浩はアイデンティティの奪取という視点からその問題に迫ります。同時に、宮田草介の作品は、すべての人間が同じ源から生まれ、凍りついた白い風景を流れゆく川として表現され、「余白」と呼ばれる反省の場を提示します。藤井ヨシカツは広島の記憶を通して、戦争の惨禍とその後の世代に与えた深い影響を描き、村岡亮輔は物体を人間と同じように分類し、それらが新たなルールに従ってハイブリッドな存在に変容する様を表現しています。村上賀子は、家庭という空間における女性たちを捉え、個性が顔か身体か、あるいはその両者の関係によって決まるのかという問いを投げかけます。竹腰隼人の作品では、個人的な記憶がネガポジ反転を通じてシュールな風景として表現され、現実とは見た目のものではなく、感情や感覚に基づく印象であるという視点が示されています。松本成弘の幻想的なセルフポートレートは、デジタル技術の進歩を駆使して、彼の子供時代の記憶を、時を超えた風景として再構築します。これらの作品群は、現代社会における自己の位置づけとその役割を模索する個人的な探求の跡を示しており、同時にその過程での疑念や不安、恐れが色濃く表れています。この現象は日本独自のものではなく、今日の写真表現における普遍的な傾向としても捉えることができます。
※敬称略

── サイモン・エドワーズ
Les Zooms/ZOOMS JAPAN 審査統括責任者 

CP+主催フォトコンテスト「ZOOMS JAPAN 2025」ショートリスト8作品が決定 vol.2(松本成弘、宮田草介、村岡亮輔、村上賀子)

ZOOMS JAPAN 2025 概要

賞と特典

グランプリ

受賞人数:1名
・Salon de la Photo(2025年10月・パリ)で特別展示
・渡航準備金10万円
・Salon de la Photo参加のための東京⇔パリの往復航空券、およびパリ現地宿泊(4泊6日想定)
・CP+2025(2025年2月・横浜)で特別展示

グランプリ発表

2025年2月下旬

※プレスリリースおよび、オフィシャルウェブサイトにて発表。
※CP+2025にて、グランプリ受賞作品とあわせて、ショートリストに選出された作品も展示。

ZOOMS JAPAN 2025 WEB

CP+2025 情報

CP+ 2025

開催日時

2025年2月27日(木)〜3月2日(日)10:00〜18:00
※最終日のみ17:00まで
※2月27日(木)10:00〜12:00はVIP・プレス・インフルエンサー入場時間

入場料

無料(事前登録制)

会場

  • パシフィコ横浜
  • WEB
  • 〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1
  • Google Map

行き方・アクセス

<電車>
みなとみらい線「みなとみらい駅」クイーンズスクエア連絡口、クイーンズスクエア2F通路直結
みなとみらい線「みなとみらい駅」2番出口から徒歩で5分
京浜東北・根岸線「桜木町駅」東口から徒歩で12分

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