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CP+主催フォトコンテスト「ZOOMS JAPAN 2025」ショートリスト8作品が決定 vol.2(松本成弘、宮田草介、村岡亮輔、村上賀子)

「ZOOMS JAPAN」は、フランスのフォトコンテスト「Les Zooms(レ・ズーム)」にCP+が賛同し、新進写真家の世界進出を応援するため2015年から開催、今回で8回目を迎えるフォトコンテスト。昨年11月末で応募を締め切り、応募総数331作品の中から、フランス写真界の第一線で活躍する審査員の厳正な審査により、最終選考作品であるショートリスト8作品が決定しました。本記事 vol.2では松本成弘、宮田草介、村岡亮輔、村上賀子、4名の作品をご紹介します。
グランプリ受賞作品は、CP+2025会場及び、本年10月にパリで開催される写真映像機器ショー「Salon de la Photo(サロン・ドゥ・ラ・フォト)」会場で展示。さらに、同イベント期間中に現地パリに招待され、フランス写真界のキーパーソンから、アドバイスを受ける機会を獲得できます。グランプリは、2月21日(金)に発表予定。

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目次
CP+主催フォトコンテスト「ZOOMS JAPAN 2025」ショートリスト8作品が決定 vol.1(佐藤幸浩、柴田祐希、竹腰隼人、藤井ヨシカツ) 

ショートリスト

松本成弘

自分に話す

松本成弘

写真家 実写 記録

実写にこだわるのは僕の⽬で⾒たいからです。脳内のイメージを2D から3D に⽴ち上げる時には、沢⼭の失敗や予想外のズレが⽣まれます。失敗やズレに直⾯するといつもニヤけますどうやったら浮くのか、どう影を作るか、どう空の⾊を変えるか、そんなテクニック的な事は始めだけ、⽴ち上がったイメージが出来上がると「ソレ」と僕との関係が始まります。実際に僕の⽬で⾒られるあの時間が、僕の作品です。写真はその記録です。制作中は「時間」という概念を考えずにいます。⼩学⽣の懐かしい記憶が頭を巡る時は「思い出した」「戻ってきた」ではなく、その時が来た。と捉えています。⼣⽇、海、⼭際、揺れ、⾒えない向こう側を⾒ると“その時”が来て頭を巡りますその景⾊のことを「Eternity(永遠)」と⾔っています⽇本語の「永遠」はイメージと違うから、今は「Eternity」としています。昔のこと、夏の改札⼝に⽴つ⺟親、デパートの屋上、プールでオンブして貰ったこと、昔住んでいた家、その何気ない過去の時間、僕にとって⼤事な“その時“を頭に戻すための制作です。

宮田草介

宮田草介

写真家 群馬県高崎市出身。10代で音楽制作に目覚め単身米国ニューヨークへ渡る。以後、音楽アーティストとして活動し海外を遍歴する中で写真表現に出会う。2019年に初個展。インドラダック地方の少女との長年に渡る交流をテーマにした作品を発表。パンデミックの影響を受け帰国後、国内に留まる中、日本の伝統的な芸術文化に傾倒。2022年に俳句をテーマとした作品を発表。展示では写真、音楽、映像など複数の表現方法を用いた独自の空間表現を行う。2024年、宮田裕介から現在の作家名へ改名。

それぞれ形は異なっていますが、これらの写真はカメラドローンを⽤い⼀つの同じ川を写しています。雪の釧路湿原で撮影を⾏いました。⽇本の伝統的な美術表現に余⽩というものがあります。観る側に想像する余地を与え、作品に広がりを与える⼿法です。⾒えないものを⾒つめ、その内⾯を理解しようとする⼼は、相⼿を敬い、思い遣る「和の⼼」に通ずるものだと思います。この作品をつくるきっかけとなったのは、⼈種という問題に直⾯したことでした。その時、ふと⽬に⼊った⼿⾸を流れる静脈がこの問題と向き合う⽷⼝になりました。私たちは⼀つの流れから岐れた⽀流であり、また独⾃の可能性を与えられた本流でもあります。そして、無数の流れがつながり合って多様な流れを作り出しています。摩擦が⽣じるのはごく⾃然なことに思えます。余⽩と向き合うためには、私たちの中にもまた描かれていない余⽩が必要となります。思い込みや決めつけをなくし、謙虚に向き合うことのできる「⼼の余⽩」を、私はここに提案します。

村岡亮輔

COLONY

村岡亮輔

写真家 広島県生まれ。日本写真芸術専門学校・肖像写真科卒業。広告写真スタジオの勤務を経てフリーランスとして独立。以後、雑誌・書籍・Web・広告での撮影を手掛ける。主な個展に、「蒼氓」新宿ニコンサロンJuna 21(東京、2002年)、「Leaf」芦屋写真展準グランプリ(芦屋、2020年)など。

⼩さなものが寄り集まることで、まるで別の存在であるかのように⾒えたりする事があります。単細胞⽣物が繋がりあって群体となり、また新たな個体としての振る舞いを⾒せるように。私たちが⽣きる世界というのも、もしかしてそうではないかと、ふと思うことがあります。国、社会、情報、価値、常識、道徳というものにはっきりとした実体というのはそもそも存在せず、ずっと現か幻の曖昧な連続の中にいるのではないかと。捉え⽅によっては恐い話かもしれません。逆に⾔うと、様々な因果で結びついた集合体と⾔うのは、ある特定の意味や役割を果たすために⽣まれた⼀過性の集まりであって、何かしらの意図や必然性のために⽣まれたのかもしれません。そう考えると、この世に存在するエネルギー体の邂逅というのは、⼀つの神秘や奇跡的な出来事のように思えます。これらの作品は上記の内容のさまざまな⽐喩的な表現であり、⾝近な素材を扱った群体を集める事で、また新たな世界観やユニークなビジュアルを作ることが出来ないだろうか。そういった試みの作品群になります。

村上賀子

Known Unknown

村上賀子

写真家 1986年、宮城県仙台市生まれ。2012年、武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程デザイン専攻写真コース修了。2022年、「Known Unknown」で第23回三木淳賞を受賞。
コンセプチュアル・フォトのパイオニアとして知られる写真家・山崎博氏に師事。記憶やアイデンティティーを社会的出来事や生活環境と相関的に捉えながら、可視と不可視のイメージを交錯させる写真プロジェクトに取り組む。東京を拠点に活動。
主な個展に「Anonymous Danes」ニコンサロン(2024)、「Known Unknown」ニコンサロン(2022/2021)・Gallery TURNAROUND(2022)、「HOME works 2015」トーキョーワンダーサイト渋谷(2015)、グループ展に「『言葉とイメージ』 Vol.3 写真は語る 倉谷卓 村上賀子」Kanzan Gallery(2017)など。

Known Unknownとは、“知らないということを知っている”という認知の状態を意味する。この写真プロジェクトにおける撮影の条件は、⼥性が⾃宅などで――カメラがないかのように――いつも通りに過ごす様⼦を撮るというものだ。彼⼥たちは顔がはっきりと写されていない。かたや⾝ぶりや⼿ぶり、⾝につけている⾐服、室内に置かれた家具や⼩物といった細部は鮮明に写し出されている。⼥性のいる室内というありふれた題材であっても、顔が⾒えないというだけで、私たちが写真を⾒る作法はがらりと変わる。⼀般的に、顔という情報は、ポートレート写真の意味を決定的に⽀える。だがこの作品では、意識的に⾃分⾃⾝を“⾒せる”という表現が放棄される⼀⽅で、個としての強さと危うさの両⾯が⾒出されるような姿――“⾒る/⾒られる”という主体と客体の関係に収束しない、ただそこにあるということだけを頼りにしたイメージを提⽰する。彼⼥たちが誰のためでもない⾃分⾃⾝を率直に解釈して表現しようとするとき、それはどのように写真に現れ、写真はその⼀連の現象をどのように主導し、私たちの⽣に影響を与えるのだろうか。⽉⽇の中で、あのときあそこにいた彼⼥とそれを⾒ていた私は、毎⽇少しずつ古い過去になっていく。髪型が変わり、住まいが変わり、そして妻に、⺟になった⼈もいる。彼⼥たち⾃⾝でも、かつて写された⾃分の姿を、別⼈と⾒間違えることがあった。⾃分の完全な⾝体は、鏡像や写像でしか⾒ることしかできない。もっとも⾝近な他者は、⾃分⾃⾝なのだ。その⾝体は、⾃分があつかう対象でありながら、⾃分そのものでもある。写真の中の彼⼥たちは――両義的な不可視の⾝体で――⾃分⾃⾝へ、カメラの向こうの私へ、そして鑑賞者という⾒えない他者へ向かって、⾃⼰を表現している。そのイメージを媒介する写真に、私たちは彼⼥の肖像を、いかに⾒出すだろうか。

総評

ZOOMS JAPAN 2025写真賞の8人のファイナリストの作品には、「アイデンティティ」という共通のテーマが見受けられます。柴田祐希は、自らのルーツを辿ることでアイデンティティを探求し、佐藤幸浩はアイデンティティの奪取という視点からその問題に迫ります。同時に、宮田草介の作品は、すべての人間が同じ源から生まれ、凍りついた白い風景を流れゆく川として表現され、「余白」と呼ばれる反省の場を提示します。藤井ヨシカツは広島の記憶を通して、戦争の惨禍とその後の世代に与えた深い影響を描き、村岡亮輔は物体を人間と同じように分類し、それらが新たなルールに従ってハイブリッドな存在に変容する様を表現しています。村上賀子は、家庭という空間における女性たちを捉え、個性が顔か身体か、あるいはその両者の関係によって決まるのかという問いを投げかけます。竹腰隼人の作品では、個人的な記憶がネガポジ反転を通じてシュールな風景として表現され、現実とは見た目のものではなく、感情や感覚に基づく印象であるという視点が示されています。松本成弘の幻想的なセルフポートレートは、デジタル技術の進歩を駆使して、彼の子供時代の記憶を、時を超えた風景として再構築します。これらの作品群は、現代社会における自己の位置づけとその役割を模索する個人的な探求の跡を示しており、同時にその過程での疑念や不安、恐れが色濃く表れています。この現象は日本独自のものではなく、今日の写真表現における普遍的な傾向としても捉えることができます。
※敬称略

── サイモン・エドワーズ
Les Zooms/ZOOMS JAPAN 審査統括責任者 

CP+主催フォトコンテスト「ZOOMS JAPAN 2025」ショートリスト8作品が決定 vol.1(佐藤幸浩、柴田祐希、竹腰隼人、藤井ヨシカツ) 

ZOOMS JAPAN 2025 概要

賞と特典

グランプリ

受賞人数:1名
・Salon de la Photo(2025年10月・パリ)で特別展示
・渡航準備金10万円
・Salon de la Photo参加のための東京⇔パリの往復航空券、およびパリ現地宿泊(4泊6日想定)
・CP+2025(2025年2月・横浜)で特別展示

グランプリ発表

2025年2月下旬

※プレスリリースおよび、オフィシャルウェブサイトにて発表。
※CP+2025にて、グランプリ受賞作品とあわせて、ショートリストに選出された作品も展示。

ZOOMS JAPAN 2025 WEB

CP+2025 情報

CP+ 2025

開催日時

2025年2月27日(木)〜3月2日(日)10:00〜18:00
※最終日のみ17:00まで
※2月27日(木)10:00〜12:00はVIP・プレス・インフルエンサー入場時間

入場料

無料(事前登録制)

会場

  • パシフィコ横浜
  • WEB
  • 〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1
  • Google Map

行き方・アクセス

<電車>
みなとみらい線「みなとみらい駅」クイーンズスクエア連絡口、クイーンズスクエア2F通路直結
みなとみらい線「みなとみらい駅」2番出口から徒歩で5分
京浜東北・根岸線「桜木町駅」東口から徒歩で12分

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