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撮りたい人を撮り続ける 東 京祐

作品を撮って、それを自分らしい形で発信する、自身のメディアを持つ写真家たち。スケジュール調整もオファーも自身でこなし、さらに制作費用も自分持ち。それでも好きな作品を撮って、自分流に発信する。クリエイティブな自己表現を続ける理由、作り続ける意味に迫ります。
「フォトグラファーが創るメディアの世界」第1回は、女優を撮り下ろしたWEBマガジン「人色」を主宰する、東 京祐さんです。

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目次

プロフィール

東 京祐

フォトグラファー 1989年生まれ、北海道歌志内市出身。
大学卒業後スタジオに勤務し、2015年独立。2016年、写真展「family tree」を開催。2020年、WEBマガジン「人色」を始める。作家活動の他、女性のポートレートを中心にファッション、音楽など幅広いジャンルで活動中。

フォトグラファーが創るメディアの世界

撮りたい人を撮り続ける

倉科カナ/2024.APR

いつまで経っても追いつかない
いつまでも追いかけるばかり
それもいいかもね

WEBマガジン「人色」を始めた理由は?

撮りたい、面白いことをしたい、ただそれだけでした

見上愛/2021.NOV

寄り道しながら
迷わず進む、
自身だけが私を駆り立てる

「動機は単純で、撮りたい人を撮って誰かに見せたいっていう至極純粋なもの。きっかけはスタイリストさんが『この子撮りたいよね』って声をかけてくれたことでした。ただ、作品撮りをインスタとかHPにのせるだけだともったいないなと思っていて。撮る目的を探していたのと、面白いことができたらって想いが重なって始まったのが『人色』です。スタイリストさん、デザイナーさん、写真の途中にある文章を書いてくれる編集さん、そして僕、のワンチームで作っています。モデルが決まったら事前打ち合わせは特にせず、当日『この人は仕事に疲れて一人で離島にきて……』みたいな自分なりの撮影イメージというかストーリーを伝えるだけ。モデルさんを、『人色』チームに迎え入れて、いいなと思った衣装やメイクをして撮る。でもそれぞれの人が持つ色を表現したいと思っているので、おのずと良さが表れているんじゃないかなって思います。映画関係者が人色をキャスティングの参考にしているらしいよ、ってある方が教えてくれたこともありました。単純にうれしかったですね。それに、ただの作品撮りだとオファーしづらいけど、『人色』というメディアを持つことで出演OKをいただきやすくなったとも思います。アポ取りも自分でするのでマネージャーさんとの繋がりも増え、出たいと言っていただく機会もかなり増えました」。

見上愛/2021.NOV

愛おしいその手で触れてほしい

大変なことは?「1回の撮影で5、600枚くらいは撮るんですけど、そこから掲載する写真を50枚セレクトします。セレクトってこんなに大変なんだなって実感しました。あとはスケジュールとか、ギャラとか、朝ご飯をどうしようかとか、カメラマン以外の仕事が大変なことに気づきましたね。だけど嫌だなと思ったことはないです。とにかく楽しいので今のところ結構満足しています」。

WEBマガジン「人色」とは?

2020年にスタート。東さん自らが撮りたい女優に自らオファー&撮影し、毎月1回公開。被写体の色と東さん自身の色が織りなす“人色”を表現した作品に注目が集まる。

好きな人を撮るのは楽しい

佐久間由衣/2020.NOV

退屈に宿る欲望

ファインダーをのぞき込むと、
広がるのはあの子と自分の空間。
あの子の色に染まる。
自分の色にもすこしだけ染める。
そうしてあたらしい色を結ぶ。
あたらしい色を重ねて、
いつもと違う日常や、
世界を巡る小休憩の旅へ。

── 『人色』aboutより一部抜粋

白石聖/2023.NOV

昔のことは忘れて。
今を生きようよって
言いたいわけではないけど。

「僕が撮りたいと思った人に直接オファーをしています。写真を撮る原動力って“好きなものを撮ること”だと思うんです。例えば……、恋人でも家族でもいいので好きな人はいますか?その人の写真撮るのって楽しくないですか?この『人色』はそれの延長なんです。だから、撮っていて楽しいです。もともと『人色』は毎月一人を撮影して、月の初めにアップするようにしていたんですけど、今ちょっとだけ更新頻度がペースダウンしていて。なんでかっていうと、単純に撮りたい人がいないから。“月一回UPしなきゃいけないから撮る”ってなんか仕事みたいで嫌だし、本来の目的ではなくなっちゃうなって思って。だから『この人を絶対撮りたい!』って思う人が現れたら撮るっていうスタンスに立ち返っているところなんです。それがある意味『人色』のブランディングにも繋がる気がしているんですよね」。

自分発信することで自分の武器で戦える場面が増える

恒松祐里/2022.JAN

思い出にしたくない
瞬間がある

「自分が100%得意な分野で仕事できる機会ってそうそうないんですよね。『本当は足が早いのに、最近の仕事は走れない仕事ばっかり』みたいな。だけど自分で発信する分には100%得意な分野で勝負できる。そうすると、『この人ってこういう写真が好きなんだ、こういう写真を撮る人なんだ』って仕事を振る側の人に理解してもらえて、自分の武器で戦える場面が増えるんですよね。例えば倉科カナさんは『人色』チームにカレンダーの制作依頼をしてくださり、WEBマガジンにもご出演いただきました。『人色』っぽい雰囲気で撮影したいですと言っていただける場面も増えました。また、グラビアの仕事がきたりと思わぬ方向に広がることもあります。それがすごく楽しいです。とはいえ仕事に繋げたくて始めたわけではなく、結果として仕事に繋がった」。

恒松祐里/2022.JAN

「『人色』をスタートしたのは2020年なんですが、当時はWEBマガジンをやっている方が少なかったんです。だけど今はすごく増えていて、僕の個人的な意見ですけど、正直飽和状態だなって思ってます。だから若手のカメラマンが今からWEBマガジンを始めるのが得策かと言えばそうではない気もしています。自分の作品を公に見せることはやるべきだと思いますけど。僕自身『人色』をどんな風にしていくかはまだ分からないですし、答えは出ないんですが、仕事もこういうパーソナルワークも全部自分の作品だから、同じテンションで、同じくらいのラフさを持って撮り続けたいなと思っています」。

GENIC vol.71【フォトグラファーが創るメディアの世界】
Edit:Megumi Toyosawa

GENIC vol.71

2024年7月号の特集は「私の写真世界」。
写真は生き様が反映されるアート。何を感じ、何を受け取って生きてきたのか。写真に投影されるのは、自分自身です。自分らしさとはいったい何なのか?その回答が見つかる「作品」特集。私の写真世界へようこそ。

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