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ときめく瞬間の見つけ方 古性のち

スナップ撮影が大好きなのに、自分の手グセのようになってしまった切り取り方に飽き飽きして、撮る手が止まってしまっている。
そんな悩みを抱えていませんか?
そこから抜け出すために、スナップが素敵なフォトグラファーたちから、新たな視点を頂戴しましょう。それぞれのスナップ写真との向き合い方から、多くのことが学べます。
写真家に聞く「スナップの腕をあげる3つの極意」2人目は、世界中を旅しながら「写真と言葉」で表現する写真家、古性のちさんです。

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ときめく瞬間の見つけ方

今、この場所で良いと思ったものを閉じ込めず、ずっと好きだと胸を張れるのが、私にとっての良いスナップ写真

「タイ人と中国人の友達とタイのチェンマイにあるカフェに行ったとき。多国籍な人たちで行くとみんなとにかく自由で(笑)。絵を描き出したり眠り出したり、川で遊びはじめたり。なんかその自由さが心地良くて記録に残しておきたくてシャッターを切りました」。

「ふいに、そこに物語を感じるときが、私のときめく瞬間です。例えば葉っぱからのぞく木漏れ日や電線の上で寄り添う鳥たち、微笑み合う夫婦や、雲の尾を引く飛行機。そういう『なんだか物語のようだな』と感じる瞬間が日常の中にはたくさん溢れています。普段から『今日という日は2度とないから、できるだけロマンチックに生きたい!』と思っているので、キョロキョロしながら歩いています(笑)。私にとってスナップ写真は、作品というよりも今自分がこの場所で、良いと思ったものを閉じ込める行為。大袈裟にいってしまえば、ここにいた証明、生きた証みたいなものなのかなと感じています」。

【TIPS 01】日常にあるロマンチックを見逃さないようにアンテナを張る

写真家のコハラタケルさんと行ったお気に入りの喫茶にて。「ホットケーキにアイスとバターを塗りたくった様子がわかるように、真上からパチリ。なんか子供みたいにやんちゃにホットケーキを食べる姿が自由で気ままで良いなー!と思って撮りました」。

「スナップ撮影には、目の前にある事実を小さな枠で切り取って訴求する、いわゆる“日々のスポットライト”と“収集”のような役割があると思います。だからこそ、なるべく作り込まず、目の前にある事実や自然体を大切にする。写真は作り込めばいくらでもロマンチックになるし、より物語性が出ると思うのですが、そういうものより“誰もが遭遇するかもしれない、でもつい見逃してしまうような日常にあるロマンチック”を私は好みます。見逃さないよう意識してアンテナを張っているので、毎日道をただ歩いているだけでもハッピーな気持ちになれるんですよね。もしかしたら、日々をワクワクして生きるためのTipsとも言えるのかもしれませんね」。

【TIPS 02】何を置いてもまずは自分のためのものであること

日本からチェンマイへ戻る飛行機の窓から。「“やっとチェンマイに帰れるぞ!”の嬉しさを閉じ込めた一枚。向こう側の景色がやけにはっきり見えて写真のようにも絵のようにも見えるのが良かった」。

「なるべく誰かに見せるための作品にしないこと。それが結果、誰かにとって大切な一枚になる場合はあれど、何を置いてもまずは自分を最優先に置いています。スナップ写真は時が経ってもずっと思い出せる写真。そのときの感情や空気、匂いも閉じ込めて未来へ届けてくれること、私の代わりに覚えて保存してくれること。そんなところがスナップ写真の素晴らしさだと感じています。誰かに評価される、されないはあまり関係なくて、自分自身がずっと好きだと胸を張れる写真が良いスナップだと思います」。

【TIPS 03】良い瞬間に出会うためにたくさんシャッターを切る

岡山の自宅のそばにて。「三日月と桜のシリーズを毎年撮っています。この写真は、桜って昼間や夜遅くのライトアップされた時間に撮られることが多いけれど、夜が来たばかりのころも素敵だよ、というのを伝えたかったのだと思います。ただ、お散歩中に“無意識に”シャッターを切っているので、写真を撮ったときはそこまで考えてないかもです(笑)。猫の気分で思いっきり上を見上げて撮りました」。

「スナップ撮影って気を抜くと“あれ?10枚くらいしか撮ってないな”とか、“何を撮ろうか決めかねているうちに時間が経ってしまった”みたいなことがよく起こるんです。私は良い瞬間に出会うためにはたくさんシャッターを切るのが一番だと思っているので、普段から『よし、今日は100枚撮るまで帰らないぞ』みたいに自分にタスクというか、ゲームを課して楽しんだりしています。そうすると“ときめく瞬間”に出会えることが多いんです。極意というか、普段あまりシャッターを多く切れない人へのアイディアかもしれませんね」。

古性のち

写真家 1989年横浜生まれ、タイ・チェンマイ在住。飾らない日々をドラマチックに表現することが得意。言葉と写真の作品を中心に、企業やメーカーとのタイアップ、商品撮影などを手掛け、SNS上では「美しい日本語と写真」を組み合わせたフォトワークで若い女性を中心に人気を集める。『雨夜の星をさがして 美しい日本の四季とことばの辞典』(玄光社)が発売中。
愛用カメラ:Nikon Z 6II、FUJIFILM X-T3
愛用レンズ:FUJINON XF 23mmF1.4 R LM WR、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

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GENIC vol.69【写真家に聞く「スナップの腕をあげる3つの極意」】
Edit:Izumi Hashimoto

GENIC vol.69

1月号の特集は「SNAP SNAP SNAP」。
スナップ写真の定義、それは「あるがままに」。
心が動いた瞬間を、心惹かれる人を。もっと自由に、もっと衝動的に、もっと自分らしく。あるがままに自分の感情を乗せて、自分の判断を信じてシャッターを切ろう。GENIC初の「スナップ写真特集」です。

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