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【#写真家が撮る日常:4 】安藤瑠美

光がきれいだから、今が楽しいから、撮る理由はいたってシンプル。なにげない日々のなかで、大切な時間や場所を記憶にとどめ、未来に残してくれる日常写真。写真家6名が捉えた日常、それぞれの切り取り方をご紹介します。
今回は、レタッチ技術によって“裸”の東京を写真で生み出すレタッチャー&フォトグラファー 安藤瑠美さんです。

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安藤瑠美

レタッチャー&フォトグラファー 1985年生まれ、岡山県出身。2010年、東京藝術大学美術学部先端芸術表現科卒業。2015年、アマナグループ 株式会社アンに入社。2021年に独立後、レタッチャー&フォトグラファーとして活動中。安藤瑠美写真展「TOKYO NUDE」開催。作品集「TOKYO NUDE」(Toka Publishing House)発売中。
愛用カメラ:Sony α 7 III

TOKYO NUDE

日常のなかのふとした瞬間に私の視点を追体験してほしい

「虚構の東京を写真で作る」というコンセプトのもと、合成や加工などのレタッチ技術を使って街の“ノイズ”をすべて消し、裸の状態へと変換する作品群「TOKYO NUDE」。
どこか違和感があり、それでいてなんだか心地よい、東京のビル群を捉えた不思議な写真は虚構の風景でありながら、ある意味、安藤さんならではの“日常”の再解釈です。

身近な人も街も生活もすべて過ぎ去っていくもの。写真に収めておけば人生が豊かになる

「高校から大学1年までは絵画を専攻していたのですが、構図が苦手だったので写真を撮るようになりました。そのうち写真に夢中になり、レタッチャーとフォトグラファー両軸で制作を行うスタイルになったんです」という安藤さんが目指しているのは、「絵画のように、一瞬にして永遠のような写真。普段、撮りたくなるのは雑多な街中の景色が多いのですが、日常の風景に均整の取れた完璧な構図が見えた瞬間、うれしくなって思わずシャッターを切ります。仕事だと、まず目標があって撮りますが、“日常”は、すでにそこに存在するものと出会う喜びがあるように思いますね」。

作品に込めているメッセージとは?
「日常のなかのふとした瞬間に、私の視点を追体験してもらえるとうれしいです。今、身近にいる人、身近にある街、生活はすべて過ぎ去っていくもの。ふと気になった瞬間に写真に収めておくと、その後の人生が豊かになると思います」。

目の前に広がる東京の風景の意味とは?対峙する気持ちで作った

「都内に群生するビルや住宅を見たとき、その中にいる人々のことを想像した瞬間があって、この作品を思いつきました。リアルな対話・物質・場所よりも、バーチャルなそれの方に価値があったりもする。では、目の前に広がる東京の風景の意味とは何なんだろう?と改めて東京と対峙する気持ちで作りました」という「TOKYO NUDE」。

岡山ご出身の安藤さんにとって、東京を題材にする面白さとは?
「今も昔も東京は人間の生と欲を飲み込み、新陳代謝を繰り返しています。そうして生まれた風景は、何か意思を持った生き物に見えるところが、とても魅力的です」。

「撮影するのは日常的な場所ばかりですが、死角がいろいろあるような風景に惹かれます。広告看板の文字や、ビルの窓、室外機…、都市の“ノイズ”となるような視覚情報をできるだけ除去し、色彩や配色を変えて、カットによっては雲や建築物を合成することも。そうすることで、心地よさと違和感が混在し、まるでパラレルワールドに迷い込んだかのような感覚にすることを狙っています」。

日常の風景に均整のとれた完璧な構図が見えた瞬間、うれしくなって思わずシャッターを切る

みずから撮った写真を自分でレタッチして“虚構の東京”を作り出す安藤さん。
「レタッチは視覚情報に絞った分、とても高度な視覚処理。一方で撮影は、もっと包括的に五感の感性をフルに使った行為。それぞれに良さがあると思っていますが、両方を経験すると、1枚の写真への理解度がより高まると思います」。

写真を撮るときのMY ルールは「無理はしない。人に迷惑をかけない。運次第」。
「TOKYO NUDEとして撮影する場所は自分が暮らす東京の一場面です。観光地のような場所は避け、匿名性のある場所を選ぶようにしています。撮影は光がフラットになる時間帯に、できるだけ建物と自分が水平になるように。質感を残しつつ、より抽象的な絵になるようレタッチしています」。

安藤瑠美 Instagram

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当たり前のようでかけがえがなく、同じ瞬間は二度とないからこそ留めておきたい日常を、表現者たちはどう切り取るのか。フォトグラファーが、クリエイターが、私たちが、それぞれの視点で捉えた日常写真と表現、そしてその想いに迫ります。

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