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【#写真家が撮る日常:3 】大畑陽子

光がきれいだから、今が楽しいから、撮る理由はいたってシンプル。なにげない日々のなかで、大切な時間や場所を記憶にとどめ、未来に残してくれる日常写真。写真家6名が捉えた日常、それぞれの切り取り方をご紹介します。
今回は、人となりや表情を自然なまま写し出すフォトグラファー 大畑陽子さんです。

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大畑陽子

photographer 1983年生まれ、埼玉県出身。カメラ歴20年弱。大学卒業後、スタジオアシスタント、フリーアシスタントを経て独立。現在は雑誌や広告を中心に活動中。 
愛用カメラ:Canon EOS R5
愛用レンズ:SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM/35mm F1.4 EX DG HSM、EF24-70mm F2.8L II USM

家族のいる風景

自然体のなかにこそ美しいものがある

「冬の夕方に自宅で。家の奥まで差し込んでくる西日がきれいだなと思って撮りました」。

「私がいいなぁと思うのは特別なことをしている瞬間ではなく、見慣れた景色にちょうどよい光が入ってくるとき。いつもの風景が特別美しく見える、それはいつも突然、不意に起こるので、カメラはいつも近くにあります」という大畑さん。
日常のなかで撮りたくなるのは「人ばかり。人の表情、あとはきれいな光と影かな。愛おしい、と感じる瞬間、何も考えずにシャッターを切ります。何かを発信しようなんて、大げさなことは考えていません。かっこつけず、肩ひじ張らず、自然のままを撮るのは、自然体のなかにこそ美しいものがあると思うから。いいな、写真に残したいなと思う瞬間を記憶として撮影します。演出は自分が嘘っぽく感じてしまい、写真を大事に思えないので、家族を撮るときも自然のままを私が追いかけるようにしていますね。情報量が多く写る35㎜くらいの広角レンズが向いているのかなと思いながら、つい50㎜で撮ってしまうのだけど」。
そんな大畑さんが日常写真を見直すのは?「何年も経ってからがいいですよね。不意に写り込んでいるものが、何年後かには懐かしい思い出になるから。そのときは何とも思わなくても、月日が経ち、環境や状況が変わったら、過去の写真が大切な大切な1枚になると思います」。

いいなぁと思う、愛おしい瞬間を記憶として撮影する

リノベ中の仮住まいで。
「光の入り方が面白くて撮った写真。いつもと違う光が新鮮でした」。

暑い夏の日の1枚。
「お行儀よく座って、朝からアイスを食べているのが愛らしくて」。

「私が帰宅すると息子がハンモックで寝ていました。その姿が愛おしくて撮った写真」。

「何があったのか忘れてしまいましたが、いじけた甥っ子が階段にちょこんと収まっているのが可愛かったです」。

家族と過ごす日常のなかで、大畑さんがカメラを持っているのはごく自然なこと。
「小さい子供がいるとカメラを持って外出するのは大変。落としたり、ぶつけたりしたらどうしようと心配しながら、カメラにまで気を使っていられないこともしばしば。だからこそ、家のなかではカメラはすぐに取り出せる場所に。息子は私に撮られることが日常なので、カメラを向けても変に構えず、自然のまま。子供は忖度ないですから、ありのままを撮らせてくれる、そこが面白いです。彼は母=カメラだと思ってくれているようで、カメラの絵をかいてくれたり、工作してくれたり、カメラ柄の洋服も喜んで着てくれます」。

そこに家族がいる日常はいつまでも続くものではないから、今、その瞬間を写真で残したい

リノベ前のご実家で。
「リノベ前のほうが息吹みたいなものを感じて、写真の背景としては好きですね。ここは祖母のお気に入りの場所。腰の曲がった祖母は、いつだってこの座り方で外を眺めていました」。

「庭や畑も広いので、子供も公園にも行きたがらないし、休日のたびに誰かが来てくれるので、どこに行かずとも満足」。

「夏は入らない光が、冬になると家の奥まで差し込みます」。

「父は酔っぱらうといつもこのポーズでウトウト」。

ご実家をリノベーションして、その空間やそこで暮らすご家族の様子をInstagramに投稿されている大畑さん。
「家づくりは、自分がどんな風に生きたいか、家族とどんな時間を過ごしたいか、自分が好きな、長く愛せるものを極限まで突き詰めることでした。今ではもう手に入らない材木、昔の大工さんの腕の良さなど、この家を知るごとにさらに好きになり、今では家=自分たちだと思っています。そこに家族がいて、いつも通り過ごしていることに感じる日常。そんな瞬間が愛おしく、そしてそれはいつまでも限りなく続くものではないと知っています。だからこそ、今だけのその瞬間を写真で残しておきたいと思うのです」。

ただただ日々に寄り添ってシャッターを切る。“狙い”がないのが私の日常写真

親子3人でコタツのなか。
「ひとりだけ起きていて、いたずらな目線で笑っているお兄ちゃん。妹はよく寝る子で、母から眠り姫と呼ばれています」。

「父はいつも本を読みながら、煌々とライトに照らされながら寝てしまいます。お酒を飲んで頬が赤いのも、いつもの風景」。

「ただただ日々に寄り添って、シャッターを切る。そこには気負うものもプライドも何もありません。意図もコンセプトもないのが、私の日常写真だと思います」という大畑さん。「プライベートは粘りません。諦めます。無理しない写真です」。

大畑陽子 Instagram
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GENIC VOL.60 【写真家が撮る日常】

GENIC VOL.60

特集は「とある私の日常写真」。
当たり前のようでかけがえがなく、同じ瞬間は二度とないからこそ留めておきたい日常を、表現者たちはどう切り取るのか。フォトグラファーが、クリエイターが、私たちが、それぞれの視点で捉えた日常写真と表現、そしてその想いに迫ります。

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