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ヴィンテージのある暮らし Nana* | 連載 Life is Beautiful. 私の愛する暮らし

連載「Life is Beautiful. 私の愛する暮らし」。
大好きな場所で毎日を丁寧に過ごしながら、日々変わりゆく光や機微をすくいあげ、写真に写す──。自身の暮らしを愛する写真家やクリエイターたちが、日常の中で心動く瞬間とは?すぐそばにある美しさに気づくことの大切さを学びます。
全8回の連載、第6回は、料理やプロダクトの魅力を最大限に引き出す、フォトグラファーのNana*さんです。

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目次

プロフィール

Nana*

フォトグラファー スティルライフフォトを中心に、広告撮影、動画撮影、アートディレクション、プロップスタイリング、グラフィックデザインなどのクリエイティブ制作に携わる。パーソナルワークとして2013年から暮らしをテーマに写真を撮り続けている。2018年よりNHK文化センター青山教室「AURORA写真塾」講師。著書に『the moment of SLOW LIVNG 写真で紡ぐ、暮らしの時間』がある。
愛用カメラ:Sony α7 IV、Nikon F3
愛用レンズ:FE 85mm F1.4 GM II、Planar T* 1.4/50 ZF.2、Makro Planar T* 2/100 ZF.2

ヴィンテージのある暮らし

ミッドセンチュリーへの憧れを写真でも表現したい

「2月の朝、光が入るリビングで朝食を撮影した時の1枚。実は左のピローシュガーはヴィンテージもののちょっとした演出。日常のワンシーンでありながらも、テーマであるヴィンテージ感を出したくて。Eamesのテーブルに合わせたお気に入りのヴィンテージのテーブルウェアを使って。白いテーブルは光と影を美しく表現できるので、朝の光で朝食を撮影する機会が増えました」。

「『フィルムカメラで切り取る、ヴィンテージのある暮らし』をテーマに写真をセレクトしました。昔からミッドセンチュリーへの憧れが強く、それを写真でも表現したいと思っています。憧れの対象は、インテリアだけでなく、プロダクト、ファッション、音楽なども。まだまだ未完成ではありますが、当時を自分なりの表現で再現できれば良いなと思っています。タイムスリップしたかのような錯覚に陥ることができれば、それが完成と言えるのかもしれません。家具や食器などは流行には左右されず、自分が本当に好きなもの、一生好きでいられるようなものを選ぶようにしています。インテリアは特にこだわりが強く、20年の時を経て購入に至るようなこともあります。ヴィンテージのものは、逃すと二度と手に入らないこともあるので、出会い(縁)も大切にしています。日常の写真は誰かに見せるのが目的ではないのであまり公開していませんが、暮らしの愛用品など、ものを撮る時にはそのものの魅力を伝えたいので、それが最大限に伝わるよう意識して撮影しています」。

タイムスリップしたかのような錯覚に陥ることができれば、それが完成と言えるのかもしれない

「4月の朝。光がリビングの奥まで差し込んでいたので、慌ててEames LCWの記念撮影。これは学生の頃に憧れていたチェアで、チェリーは現在は製造終了となってしまったカラー。当時はまだ高価な家具を買う余裕がなく、後回しにしていたら手に入らなくなってしまったところ、偶然の出会いで手に入れることができて、その記念に撮影した1枚」。

「3月の朝、使用した器をテーブルの上で乾かしていたところ、ブラインドから漏れる光が当たって綺麗だったので並べ直して撮影。1950年頃から変わらず作り続けられているブランドの現行品と、ヴィンテージのもの。今はもう別のブラインドに変えてしまったので、二度と見ることのできない光景です」。

「Jean Prouvéのスツール、Tabouret Solvay(現Tabouret Bois)が、左に置かれた鏡からの反射光によって美しく照らされていたので撮影。コーヒーカップはスウェーデンのGefleのヴィンテージ」。

日常の写真は、整えすぎずその時の空気感も切り取りたい

「3月の朝、ブラインドからの朝の光が綺麗だったので、購入したばかりのグラスを置いて。グラスは現代のものですが、ヴィンテージのものとも相性が良く、ブラインドの影とも相まってお気に入りの1枚。直射光を生かした撮影では、光と相性の良いグラスを被写体に選ぶことが多いように思います」。

「お香立ては現代の作家さんのものですが、自宅のインテリアによくマッチしていて、リビングのキャビネットの飾り棚が定位置です。ガラスの影を美しく表現できる直射光で撮影しました」。

暮らしを写真に残していくことは、ライフワークそのもの

「ブラインドから漏れる光が描く模様が綺麗でシャッターを切った1枚。シェルフはCees Braakmanデザインの1960年代のPastoeのもの。毎回同じシーンを切り取っても同じ光の模様にはならず、日常の中で何度も繰り返し撮ってしまうリビングの光景です。時計やカレンダーをディスプレイしていると、撮影日時ごと記録できて、見返した時の参考になります」。

「毎朝コーヒーをドリップで淹れるのですが、それはその時の自分のコンディションを知るバロメーターになっています。また、ゆっくりと丁寧にコーヒーを淹れることで心を整えられる大切な時間だと思っています」。

「美しい吹きガラスのボトルを写真に収めたくて、位置を調整して撮影。お気に入りのものを撮る時には、ポートレートと同じで、対象物が最も魅力的に見えるように切り取ります。寂しく見えないよう、自然に余白を埋めてくれるiittala Alvar Aaltoのベースを背景に使って」。

ルールで固めすぎないことがルールかもしれない

「現在、フード系の撮影をメインにしています。2年近く毎月撮影しているものでは、広告らしいフード写真というよりも暮らしの中にある『食』をテーマに調理シーンなどを切り取っていて、自分のライフスタイルの延長線上のようで、とても楽しく撮影しています。仕事は客観的な視点で細部を詰めて丁寧に撮りますが、日常は心が動いた瞬間に主観的な視点で切り取ることが多いです。ありきたりですが、光が美しいと感じた時にシャッターを切りたくなります。また日常での写真は、あえて整えすぎず、その時の空気感を切り取りたい。普段のテーブルフォトとは違い、その時流れる空気感を大切にしたいので料理を撮っていても美味しそうに料理を撮ることが目的ではないことが多いです。ルールで固めすぎないことがルールかもしれません」。ズバリ、写真とは?「暮らしそのもの。ライフスタイルを表現するための手段であり、また自分が大切にしているもの、好きなもの、良いと思うものなどの魅力を伝えるための手段の一つです」。

GENIC vol.74 【Life is Beautiful. 私の愛する暮らし】
Edit:Megumi Toyosawa

GENIC vol.74

2025年4月号の特集は「It’s my life. 暮らしの写真」。

いつもの場所の、いつもの時間の中にある幸せ。日常にこぼれる光。“好き”で整えた部屋。近くで感じる息遣い。私たちは、これが永遠じゃないと知っているから。尊い日々をブックマークするように、カメラを向けてシャッターを切る。私の暮らしを、私の場所を。愛を込めて。

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