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日々の隙間 砺波周平 | 連載 Life is Beautiful. 私の愛する暮らし

連載「Life is Beautiful. 私の愛する暮らし」。
大好きな場所で毎日を丁寧に過ごしながら、日々変わりゆく光や機微をすくいあげ、写真に写す──。自身の暮らしを愛する写真家やクリエイターたちが、日常の中で心動く瞬間とは?すぐそばにある美しさに気づくことの大切さを学びます。
全8回の連載、第4回は、八ヶ岳南麓を拠点に日々の暮らしを撮影する、写真家の砺波周平さんです。

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目次

プロフィール

砺波周平

フォトグラファー 1979年生まれ、北海道出身。日々の暮らしに潜む感動を、写真を通して見つめ続けている。私家版写真集『続 日々の隙間』、『LANDING LAND 透明な日常』(MOKUHON PRESS)が発売中。
愛用カメラ:Canon EOS R5、PENTAX 67II、FUJIFILM X-Pro3
愛用レンズ:RF50mm F1.2L USM、smc PENTAX 6×7 90mm F2.8、NOKTON 23mm F1.2 Aspherical

日々の隙間

日常にこそ心を動かされる瞬間があると信じて、撮り続ける

「妻と娘三人、甲斐犬、雑種の猫と暮らしています。今回の写真は、18年にわたる八ヶ岳生活の思い出の時間たち」。

「自作の子供部屋で笛を吹く長女。こうして見ると、大きくなったなと思う」。

「師匠の元から独立して八ヶ岳に移り住んで、初めての冬。寒いうえに写真の仕事も安定しておらず不安だらけでしたが、家族の温かさを実感しながら暮らしていました」。

「子供の一つ一つの動作が新鮮です」。

「子供にとって、通学は小旅行のようなものかも」。

「丁寧でもなく、無理せず、見栄を張らず、気取らない自分らしい暮らし。八ヶ岳南麓での生活は、今年で18年目になります。一年を通じて晴れの日が多かったり、水が湧き出る水源が近くにあったり、八ヶ岳や南アルプスがそびえていたり…地元の風土、人々の温かさなど豊かな世界が当然のように目の前にあることに安心感を抱くことができます。移住当初は、師匠の元を離れて写真を生業にしていくことへの不安や家族を養うプレッシャーが大きかったのですが、支えてくれる方や価値観が同じ友人などとの出会いに恵まれ、さまざまな方々の影響を受けながら日々勉強してきました。この場所に根を張れるように地元の行事などにもできる限り参加し、今では伝統ある祭りなどにも少しずつ受け入れてもらっています。僕はメインとなる撮影ジャンルを聞かれると、ハレとケの“ケ”(日常)の写真と答えるのですが、日常(足元)にこそ素敵な心を動かされる瞬間があると信じて、ずっと撮り続けています。シャッターを切りたくなるのは、子供や妻のふとした表情が美しく見えたり、壁に西日があたっていたり…見慣れた日常の中でも心が揺さぶられる時。撮ろうと思って作ったり、無理やり撮るということはありません。撮りたいと思う瞬間が来たら、撮ります。特別なことを求めなくても、普段の暮らしや日常を淡々と過ごしていくだけで十分だと思うからこそ、小さなほっとする瞬間や、胸が締め付けられる瞬間を撮りたいのです」。

特別でなくても、小さなほっとする瞬間や胸が締め付けられる瞬間を撮りたい

「縁側での三女の散髪風景。女子たちで役割分担して、あーだこーだと一大事」。

「それまで妻ばかり撮っていたのが、子供が生まれてからは“家族の関係”を撮るようになっていったような気がします」。

「寒い家の中では、みんな身を寄せ合って過ごします」。

「毎日、犬の散歩で訪れる田んぼの畦道。見慣れた風景も季節や時間で違って見える。日が暮れた後の青くなる時間が一番好き」。

GENIC vol.74 【Life is Beautiful. 私の愛する暮らし】
Edit:Satoko Takeda

GENIC vol.74

2025年4月号の特集は「It’s my life. 暮らしの写真」。

いつもの場所の、いつもの時間の中にある幸せ。日常にこぼれる光。“好き”で整えた部屋。近くで感じる息遣い。私たちは、これが永遠じゃないと知っているから。尊い日々をブックマークするように、カメラを向けてシャッターを切る。私の暮らしを、私の場所を。愛を込めて。

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