Chihiro Matsumoto
フォトグラファー、ビデオグラファー 1991年生まれ、長野県出身。カメラ歴4年。語学留学で海外に2年ほど住んでいたときに生活や料理、現地の文化などを撮影したのが写真を撮り始めたきっかけ。最初に購入したカメラは、RICOH GR。
愛用中のカメラ:Sony α7R Ⅲ
愛用中のレンズ:Sony FE 70-200mm F2.8 GM OSS、Sony FE 85mm F1.4 GM、SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
街灯が作り出す路上の絵
“暗闇の中の光に照らされる人”を切り取ることで自分らしさを表現
「駅から出たときがたまたま濃霧で、ストリート魂が一瞬で爆発しました。ちょうど信号かブレーキランプに人が重なったときにシャッターを切りました。霧が出ていたのはほんの15分ほどだったので、印象的な写真が撮れてとても嬉しかったです」。
「大雪の夜、長野駅前の昭和通りで撮影。そのときはとにかく”傘を差した人” ”ひとりだけ”というのにこだわっていました。なかなか思うように撮れず、真冬の夜に凍えながら1時間くらい撮り続けていました。それだけ撮りたかった一枚です」。
「ストリート写真を撮り始めたのは3年ほど前から。ファインダーを通して見たら、普段何気なく見ている景色がまったく違った世界に見えました。色や角度、タイミングで、こんなにも世の中がカッコ良く見えるのかと鳥肌が立ったのを覚えています。初めはモノクロ写真にハマっていて、街の光と影や、日中の陰影を生かした写真をよく撮っていました。それは今の写真にも引き継がれています。
かといって、ストリート写真を撮り続けたいと強く意識はしていないので、撮りたいときは撮るし、まったく撮らないこともあるスタンス。それでも撮り続けているのは、ストリートの写真がただただ好きだから」。
思い描くとおりに人が来るまで待ち続けるのもストリート写真の面白いところ
「大雪の日、橋の上で。とてもかっこいい橋で、ずっと撮りたかった構図のひとつ。歩道側のダウンライトが被写体をうまく引き立たせてくれました。思い描いていた写真が撮れたことと、ずっと人が来るのを待っていたので撮れたときには鳥肌が!」。
Matsumotoさんが街灯の写真を多く撮っている理由は?
「暗い中に灯る明かりが好きで、自然に街灯を撮るように。何もない暗闇にただポツンと街灯だけがあるシーンを見つけると、絶対にカメラを構えてしまいます。人を被写体にするときは、シルエットにするのか、光が当たったときに撮るのか。どうすればその被写体に目がいく写真になるのかを考えて撮影しています」。
「4月に善光寺で7年に一度の御開帳が行われ、その期間は善光寺下の仲見世通りが赤いライトで灯されます。本堂で待ち続けているとほんの一瞬、ひとりだけになった瞬間があったのでシャッターを切りました」。
「“頑張れウクライナ”の意味も込めて、ウクライナカラーの光と信号待ちをしている人を撮影。(本当は黄色と青が逆なんですが)時事的なものをストリートフォトに取り入れるのも好きです」。
夜の撮影が圧倒的に多いため、愛用するのは明るく撮れる単焦点レンズ。また、写真の質感や場所選びにもこだわりが。
「きれいな質感より、ザラっとした質感の写真が好きなので、ISOはかなり上げて撮影しています。また、見せたいところに目がいくようにしながら、レタッチであとから粒子を乗せることも多いです。撮りたいシーンは、あらかじめ歩き回って場所を決めておくのが自分流。そして、その場所で自分が思い描く画になるような人が通るまで、とにかく待つ。シンメトリーな構図のバランスを意識しながら、”ここに人が通ったらかっこいいだろうな”ということを常に探しています」。
GENIC vol.63 【街の被写体、それぞれの視点】
Edit:Izumi Hashimoto
GENIC vol.63
GENIC7月号のテーマは「Street Photography」。
ただの一瞬だって同じシーンはやってこない。切り取るのは瞬間の物語。人々の息吹を感じる雑踏、昨日の余韻が薫る路地、光と影が落としたアート、行き交う人が生み出すドラマ…。想像力を掻き立てるストリートフォトグラフィーと、撮り手の想いをお届けします。