Hiroaki Goto
会社員、フォトグラファー 東京都出身。2016年より写真を撮り始める。SNSを主な活動の場とし、現在の総フォロワーは15.8万超。本業の会社員のほか、企業撮影、PR案件や執筆など幅広く活動。
ストリート・風景写真を主な被写体とし、日本独特の日常感を切り取った美しい光景を世界中へ発信している。
愛用カメラ:Leica M10-P、Leica Q2、RICOH GR Ⅲ
愛用レンズ:Summilux 50mm f1.4 1st、Summicron 35mm f2.0 6element、Summilux f1.7/28mm ASPH
「対比」と「線」
光と影、白と黒と線を組み合わせて見せたいものを提示する
「光と影の明暗がはっきりしていて、正午くらいに行くと面白い写真が撮れる有楽町のスポット。特に快晴の日は光が強いので、よりコントラストがはっきりした写真に。光のラインを人が通り過ぎる瞬間にシャッターを切り、スポットライト的な効果を狙いました」。
ストリート写真は当たり前な光景や瞬間に物語を紐づけする手段
「渋谷のスクランブル交差点で信号待ちをする、“群衆対ひとり”の対比を表現してストーリー性が出るように工夫しました。手前の人の手をなるべく対角に配置し、構図のまとまり感を演出。信号待ちをする群衆がわかりやすいように、横断歩道も見えるように」。
ストリート写真を撮るときは、常に”対比”と”線”を意識して撮影しているというGotoさん。テーマは、”何気ないありふれた光景を美しく切り取ること”。「例えば、光と影、白と黒などが”対比”にあたり、それを線と組み合わせて区切るイメージ。そうすることで写真にメリハリが生まれるのと、見る側に見せたいものが何なのかをはっきりと提示できる効果があります。また、今回のようなストリート写真を撮影するときは、必ずモノクロで撮ります。色がないことで、余計な情報に惑わされることなく、構図の組み立てに集中できるからです。光と影の表現のためにシルエットを撮ることも非常に多いですね。シルエットで被写体の感情が表現できる瞬間や、動きのある瞬間を狙ってシャッターを切るようにしています」。
「日傘をさした女性が横断歩道に差し掛かったシーン。人を手前に配置し、横断歩道の横線を平行にすることで平面的な絵に、立体感と奥行きをプラス。また、『前に一歩ずつ進まなければならない』というメッセージ性も込めて」。
「ガラスへのリフレクションが狙えたので撮影。あえて上半身は写さず、どんなシーンなのかは写真を見る人の想像力にゆだねました。実像側と映り込み側の境界を対角線で配置する構図で、ぱっと見で対比がわかるように」。
「構図重視の撮り方をした作品。白い歩道橋の柱で半分を隠し、2分割の白黒の対比を作りました。柱にカメラを持った自身の影を写すことで被写体と撮影者を分離し、写真を撮った際の臨場感やリアルさを表現」。
ストリート写真を撮るようになったきっかけは?
「久々に訪れた地元の街が様変わりしていて、自分の記憶にあった光景が無くなっていたんです。すごく寂しい気持ちになり、自分が育った街を写真に残したいと思ったことが、ストリートを撮り始めたきっかけでもあり、そもそも写真を始めた理由でもあります。僕が撮るストリート写真には必ずと言っていいほど”人”が写っています。”人”は僕の撮る写真に意味を持たせるために、絶対に必要な要素だからです。街には人の生活が溢れていますが、その意識しなければ見逃してしまうような、当たり前でありふれた自然な状態を切り取ることで、写真に物語性を持たせているんです。身近なシーンであるからこそ、人の感性が介入しやすく答えが無い。そこがストリート写真のおもしろさでもあると思います」。
GENIC vol.63 【街の被写体、それぞれの視点】
Edit:Izumi Hashimoto
GENIC vol.63
GENIC7月号のテーマは「Street Photography」。
ただの一瞬だって同じシーンはやってこない。切り取るのは瞬間の物語。人々の息吹を感じる雑踏、昨日の余韻が薫る路地、光と影が落としたアート、行き交う人が生み出すドラマ…。想像力を掻き立てるストリートフォトグラフィーと、撮り手の想いをお届けします。