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特別ではない何か 斉藤有美

目の前に広がる光景に対し、何を感じ、どのように向き合い、切り取っているのか?
6名の写真家それぞれが心を揺さぶられたランドスケープの写真と、その想いに迫ります。
「写真家それぞれのランドスケープ」4人目は、旅先の日常を写し出すフォトグラファー、斉藤有美さんです。

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目次

プロフィール

斉藤有美

photographer 神奈川県出身。カメラ歴18年。桑沢デザイン研究所卒業。日本写真芸術専門学校を卒業し、谷内俊文氏に師事した後、旅や食、人物、風景、生活を中心としたフォトグラファーとして活動中。鎌倉のローカルブリュワリーYOROCCO BEERの2人と旅をしたzine「EXIT」が発売中。YOROCCO BEER、stucks bookstore などで購入可能。
愛用カメラ:Canon EOS 5D Mark IV、CONTAX TVS、Konica HEXAR、FUJIFILM NATURA、iPhoneなど

写真家それぞれのランドスケープ

特別ではない何か

「夕暮れ時までのんびり過ごした、ベニスビーチの近くの街路樹」。

「南下する車からの眺め。建物よりも育つ椰子の木に惹かれて」。

その土地や時間に身を委ねて何かを強く感じた一瞬を

「今年2月に行ったLAの旅の写真です。友人のYOROCCO BEERの2人がビールとメキシカンフードを目的に旅をする、と聞いてすぐに同行を決めました。現地では行きたい場所をマップにピン留めしておき、その時の気分で行き先を選んでいたので、目指していない場所に辿りつき、思いがけない風景に出会ったことも。なんでもない日常を過ごすような旅でしたが、日常からの脱出でもある時間。その中でしか見えないこと、言葉では言い表せない何かを強く感じる瞬間がたくさんありました」。

気持ちのいい瞬間に含まれる風や温度、空気感まで全部閉じ込めて

「陽が沈む頃のサンディエゴ。夕方になると何をするでもなく海にやって来る人がたくさん。会話がなくてもいいのが海の時間」。

「夕暮れと共に人が集まる人気のブリュワリー『Highland Park Brewery』。『Hello,LA』というビールがとても美味しかった。夜になる前のひとときもロマンティック」。

人の日常に溶け込み、その一部となって撮る

「ここはどこだったか。夕暮れの時間は心がぎゅっとする」。

「シルバーレイクのAirbnbで使用していた3人分のタオル。毎日、鏡越しのこの光景を見るのが好きだった」。

「夜のバーで、うっすらと酔っ払いながら見た光景」。

「普通の美しさ」を伝えたい

「ふと見かけて、可愛いなと思った瞬間」。

「私にとってのランドスケープ写真とは、日常の普通の景色です。撮りたいと思う気持ちのいい瞬間。そこに含まれる風や温度、空気感。写真では感じられないはずのものが、不思議と表れる気がします。撮影するときの私のルールは、その土地や時間に身を委ねる、撮ろうとしない、そして感じること。レンズは、見た目と同じ距離の50mm単焦点が好きです。目で見た方が絶対的に美しいものは撮れないと思っていますが、見たまま感じたままが写真に表れていたときはうれしいですね。旅先であっても、普通の美しさを伝えられたらと思います。私の場合、撮りたい眺めがあるからその場所へ訪れるのではなく、行きたい場所に旅して、特別ではない何かに惹かれて撮ることがほとんど。行き先は気分とタイミングとチケットの価格で決めていて、旅の最中もあまり予定を決めず、生活するように旅するのが好きです。旅は非日常の時間ですが、そこでは自然と日常として過ごすようにしているかもしれません。逆に普段の生活は日常でありながら、突然輝いた瞬間に見えることがあり、そんなときは無意識のうちに視点を変えて、非日常を感じている気もします。だから私がシャッターを切りたくなるのは、特別な眺めというより、何か感じたときですね。特別ではないけれど、私にとっては特別ということなのだと思います。どこへ行っても心を動かされるのは、人の生き方や在り方。人の日常に溶け込んで、その一部になって写真を撮りたい。いつもそう思っています」。

GENIC vol.72【写真家それぞれのランドスケープ】

GENIC vol.72

9月6日発売、GENIC10月号の特集は「Landscapes 私の眺め」。
「風景」を広義に捉えた、ランドスケープ号。自然がつくり出した美しい景色、心をつかまれる地元の情景、都会の景観、いつも視界の中にある暮らしの場面まで。大きな風景も、小さな景色も。すべて「私の眺め」です。

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