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MOMENTS WILL FADE 阿部裕介

「ランドスケープを撮るときは、そこにいる人たちが見ているだろうな、という景色を表現しようとしている」と話す阿部裕介。約10年前に撮った、ある海での家族の出来事を、2024年夏に作品集として発表。一緒に遊びながらシャッターを切ったという「家族目線の風景写真」を紹介します。

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目次

プロフィール

阿部裕介

写真家 1989年生まれ、東京都出身。大学在学中よりアジアやヨーロッパを旅し、写真家として活動を開始。女性強制労働問題が残るネパールで撮影した「ライ麦畑にかこまれて」、パキスタンの辺境に住む人々の生活を写した「清く美しく、そして強く」などの写真展を開催。2019年によさこい祭り写真集『ヨサリコイ』を刊行。インドの電車旅の記録とバラナシの街を撮影した最新写真集『Relagaadee』&『Shanti Shanti』を限定発売中。
愛用カメラ:Leica M11、Leica M7、Hasselblad 503CW
愛用レンズ:Summaron 35mm DR、Summicron 50mm

MOMENTS WILL FADE

かつての純粋な視線が、今また、新鮮に感じられる。

人物は瞬間を狙い、風景は瞬間にこだわらない。

「モノクロの写真って情報が少ない分、顔の表情など細かいことにすごくフォーカスできる。例えば汗とか、笑顔とか。また、色がないからこそ色を想像して、かえって色が見える気がします。この時はモノクロにこだわった訳ではなく、若くてお金がなかったから、単にモノクロフィルムの方が安いし、家の風呂場で手軽に現像できるし…どっちにしようかな、モノクロでいいや、って感じでした。今回新たに一からプリントし直したら、そういった思い出も蘇りました。一度もプリントしていないネガもあったりして、10年前に見たドラマのまだ見てない部分をもう1回見る、みたいな感覚です」。

一緒に遊びながらシャッターを切った、家族目線の風景写真

「今回の写真は10年ほど前に撮った、日本のある海での家族の出来事。僕は大学を卒業してまもなく、まだ作品集などを手掛けたことがない時の写真です。僕自身がその家族の一員のように、一緒に遊びながら家族目線でシャッターを切っています。10年経って改めて見返すと純粋に楽しみながら撮っていることが新鮮に感じられて、この度『MOMENTS WILL FADE』という写真集にまとめました。僕がランドスケープを撮る時は、そこにいる人たちが見ているだろうな、という景色を表現しようと思っています。だからこれは、家族目線の風景写真とも言えます。日本らしい夏休みのランドスケープ。僕はランドスケープを撮る時は瞬間にこだわらず、人を撮る時は瞬間を狙っています。風景というのは、天候などの状況が変わらなければ、今だろうが5秒後だろうが大して変わらない。だから、自分の作為的な意図などは入れず、ありのままを切り取ります。人を撮る時は、動きや表情の“瞬間”というものがあるので、そこを狙います。そして、風景でも人物でも共通しているのは“記録する”ということ。これは僕の写真に対してのコンセプトです。写真家としての抱負は、今後もいろいろなものを記録し続けたい。飽き性なので作風や手法にはこだわらず、変化を楽しみながら自由に撮り続けます」。

GENIC vol.72【MOMENTS WILL FADE】
Edit:Satoko Takeda

GENIC vol.72

9月6日発売、GENIC10月号の特集は「Landscapes 私の眺め」。
「風景」を広義に捉えた、ランドスケープ号。自然がつくり出した美しい景色、心をつかまれる地元の情景、都会の景観、いつも視界の中にある暮らしの場面まで。大きな風景も、小さな景色も。すべて「私の眺め」です。

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