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カメラが繋ぐ焦点距離/古屋呂敏のFocal Length Vol.24

古屋呂敏<連載コラム>第3月曜日更新

その瞬間を永遠にしたいと願いながら、シャッターを切る。
心の揺れるままに、心の色のままに。
自分だけに見えていたその一瞬の世界は、
写真に残すことでさらに愛しく想えるものになる。
だから僕は、きっと永遠に写真を撮り続ける。

───俳優、カメラマンとして活躍する古屋呂敏の「Focal Length」。
連載を通して、写真だけではなく、
人との距離感、 生きるスタンスなど
さまざまな「焦点距離」をお届けします。
【撮影&テキスト:古屋呂敏 撮影機材:Nikon Zf】

  • 作成日:

Focal Length
今回のテーマは「カメラが繋ぐ焦点距離」。

この記事は、これまでとは少し違ったアプローチになる。
写っているのは、ただ一枚の何気ないカメラの写真だ。

古屋呂敏(ロビン)がNikon Zfで撮影した写真 作例

Zf + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II

写っているのは ニコマートFTN。
1967年に発売された、機械式駆動・フルマニュアルのカメラだ。
「ニコマートってニコンと何が違うの?」と思う人もいるだろう。
当時、ニコンが“普及機”として展開していたブランド名で、今も中古カメラ店で比較的手頃に見つけることができる。

古屋呂敏(ロビン)がNikon Zfで撮影した写真 作例

Zf + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II

このカメラが僕の手元にやってきたのは今年の夏。
ニコンプラザ「THE GALLERY」で写真展「MY FOCAL LENGTH」を開催し、トークイベントのために関西へ帰ったときだった。

久しぶりに実家へ顔を出したその夜、父が食事を終えたあと、自分の部屋からそっと持ってきた。
そして「これ使うか」と、差し出したのが、このカメラだった。

父は長年、教師をしていた。
写真を撮っていたことも、カメラを持っていたことも、僕はまったく知らなかった。

父はハワイで育ち、アメリカ本土の大学を卒業。
その後、イギリスや中東を仕事をしながら旅したことがある。
そして最終的に日本に来て教師を始めた。
そんな断片的な話は聞いたことがあった。

古屋呂敏(ロビン)がNikon Zfで撮影した写真 作例

Zf + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II

このカメラは、まさにその旅の相棒だったらしい。
砂漠をバイクで走ったこと。
さまざまな国でフィルムを買い集めたこと。

芸術やクリエイティブとは無縁だと思っていた父から、そんな話を聞く日が来るとは思わなかった。

長年眠っていたカメラには、
少し埃を含んだ匂い、擦れたレザー、
旅の記憶を刻む傷がある。

古屋呂敏(ロビン)がNikon Zfで撮影した写真 作例

Zf + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II

古屋呂敏(ロビン)がNikon Zfで撮影した写真 作例

Zf + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II

写真を撮ることをやめた父がずっと手元に置いていたのは、いろんな想いがあるからだろう。

誰が見ても特別ではない一台。

古屋呂敏(ロビン)がNikon Zfで撮影した写真 作例

Zf + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II

けれど、僕にとっては値段をつけられないほど大切で、かけがえのないカメラだ。

古屋呂敏(ロビン)がNikon Zfで撮影した写真 作例

Zf + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II

カメラが繋いでくれた、父との距離。

いつか自分も、父がしてくれたように
愛用する Zf を誰かに手渡せる日が来たら
それほど嬉しいことはない。

プロフィール

古屋呂敏

俳優・フォトグラファー 1990年、京都生まれ滋賀/ハワイ育ち。2016年より独学でカメラを始める。NikonZfを愛用。父はハワイ島出身の日系アメリカ人、母は日本人。MBS/TBS「恋をするなら二度目が上等」(2024年)などに出演。俳優のみならず、フォトグラファー、映像クリエイターROBIN FURUYAとしても活動。2022年には初の写真展「reflection(リフレクション)」、2023年9月には第2回写真展「LoveWind」、2025年6月、ニコンプラザ東京 THE GALLERY、2025年7月、ニコンプラザ大阪 THE GALLERYにて、写真展「MY FOCAL LENGTH」を開催。

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