プロフィール

「自分と向き合い、何かを見つけて欲しい」

「MY FOCAL LENGTH」は、古屋さんにとって3回目の個展ですね。開催が決定したときの、率直なお気持ちはいかがでしたか?
素直に嬉しかったです。写真を愛する一人のフォトグラファーとして、大きな写真を見ていただくということは、特別な喜びがあります。
今回の個展で展示している写真は、全て愛用しているNikon Zfで撮影した作品です。オールドレンズで撮影した写真もあればZマウントレンズで撮影したものもあります。心を込めて一枚一枚撮影しました。ギャラリー内では Zfで撮影し、自分で編集した動画も流しております。
今回のテーマ「MY FOCAL LENGTH」について、その意味や古屋さんの想いを教えてください。
「MY FOCAL LENGTH」ーー。
直接的な意味は『私の焦点距離』ですが、ここには僕自身がどんな世界を『今』見ているのか、どんな世界を『今』見たいのか、そしてその写真たちから自分を知りたい、そんな意味が込められています。
僕たちは誰しも、普段から無意識のうちに見るものを選んでいます。だから、それを写真を撮ることによってある種、自分を写し出しているような気になるんです。
この写真展に来てくださった方が、僕の見たい世界を通じて、自分が見たい世界はなんだろう、と考えるきっかけになってもらえたらとても嬉しいです。

古屋さんにとっての、Zfのお気に入りポイントは?
やっぱりZfの一番の魅力は、使っていてワクワクするということ。その理由は、Nikonの昔からの伝統的なヴィジュアルを継承したボディーデザインであることも影響していると思います。発売前からNikon FM2を使用していたので、手にしっくりくる感じも嬉しかったです。
ふと写真を撮りたい瞬間と、がっつり写真を撮りたい瞬間のどちらのケースでも活躍してくれていて、すっかり愛用しております。
撮影でよく使っているZfの機能は、ピクチャーコントロールの「ディープトーンモノクローム」。こちらのモノクロの色味や濃淡の具合が個人的に大好きです。モノクロの世界は昔から大好きで、モノクロだからこそ被写体に見えるものがあり、その表現にいつも魅了されています。Zfに出会って、さらにモノクロの世界が好きになりました。
展示写真もすべてモノクロ作品ですね。どのようにセレクトされましたか?
「MY FOCAL LENGTH」は、自分の好きを詰め込んだ写真展でもあるので、すべてモノクロの作品を選ばさせていただきました。
大きく分けて2つのグループに分けています。1つはポートレート写真、そしてもう1つがセルフポートレート。
今回の写真展において、セルフポートレートはとても大事な軸でもあります。自分が撮影した世界から、自分を見つめ直して、今の自分を知る。どんな世界が見たくて、どんな世界との距離感に自分はいるのか、その中でどう感じたものを写真に残すのか。など、今の自分を反映させています。
ポートレート写真は、今までGENICの連載で撮影をさせていただいた写真の中から、今回の写真展のテーマに近い写真をセレクトしています。どの写真なのか、ぜひギャラリーで見ていただけたら嬉しいです。


先ほどお話に出たギャラリー内の動画について、テーマやこだわりについて教えてください。
写真展の中で流す動画は、撮影も編集も自分でさせていただきました。投影している壁に、リアルなフレームをつけたのが、この映像作品のこだわりのひとつです。フレームは自分がいつも見ている景色。当たり前だと思っていた枠。でも世界にはもっと余白があるかもしれない、見方を変えれば全く違う世界に見えるかもしれない、貴方と私のフレームはサイズが違うかもしれない。そんな意味を込めて作ったので、ぜひ考えながら見ていただきたいです。画面上では再生できない、立体的な映像作品です。

展示会場全体は、どのようなイメージで作り込まれましたか?
大切にしたのは、来てくださった方々が集中して楽しめる世界観作りです。ギャラリー全体は、作品のモノクロームの世界観を大切にするために、黒を基調に。そして暗くすることによって、他の情報を遮断して作品を見てもらいたくて、照明をかなり落としています。ただ写真を見るだけではなく、来てくださった方が自分とも向き合える空間になれば嬉しいとも思っています。
こだわりポイントは、あえて素材の違う2枚の布を組み合わせた作品を、会場の真ん中に吊るしている点。2枚が重なることで文字や写真がズレる。どちらに焦点距離を当てるのか、ピントはどこに当たるのか、など視覚的にも楽しんでもらえるように意図的に“ズレ”を生み出したかったんです。

古屋さんおすすめの順路はありますか?
東京、大阪と、会場のサイズ感で少し異なるとは思いますが、まずは入ってすぐにある大きなステートメントパネルを読んで意識を写真展に向けていただき、そこからポートレート、映像、そしてセルフポートレートへと回っていただけたら嬉しいです。でも、来てくれた方が好きに見てくださってもいいかな。
2回目には、僕の声による音声ガイドを聞きながら見てもらうのも面白いかなと思うのでおすすめしたいです。音声ガイドを楽しむには、QRコードが読み込めるスマートフォンやイヤホンが必要なので、ぜひお持ちいただいて体験して欲しいです。
作品ごとのご自身の声による音声ガイド、素晴らしいですね。これをやろうと思われた理由を教えてください。
単純に作品への自分の想いを伝えたかったからです。僕自身、よく美術館に行きますが、音声ガイドによって全く違う旅になることをいつも感じます。もちろん、写真に色々な想いを込めてますが、見てくださる人の横で“一緒に見てるよ”とも言いたくて、自分の声で録りました。少しでも僕の想いや存在を感じていただけたら嬉しいです。

展示作品のプリントについて、実物を見られたときの感想を教えてください。
やっぱりプリントっていいなと思いました。パソコンや携帯で見るよりも、はるかに受け取れる情報がたくさん詰まっている。自分でも気づかなかった所まで目がいく。今の時代だからこそのプリントの魅力に気付けました。
写真のセレクトや世界観作り、どれも大変でしたが、どの準備の過程も今もずっと楽しいです。たくさんの方のご協力のもとできたことなので、皆さんに感謝を伝えたいです。本当にありがとうございます。
同名の写真集「MY FOCAL LENGTH」も6月13日に発売されましたね。写真集の見どころや、お気に入りのポイント、こだわった点などを教えてください。
写真集は、僕とZfの旅を詰め込んだ『今』しか作れない一冊です。僕と世界の焦点距離、どんな景色に心を奪われ、そしてどんな世界を見たいのか、を表現しています。テキストも自分で全部書きました。伝えたいこと、自分が大事にしていることを、そっと記しています。読者の方にも、僕と一緒に旅を体験していただければと思います。
展示と写真集には違う良さがあります。展示は、じっくり対峙する。写真集は、生活の中でふと寄り添う。どちらも素敵な魅力があり、違うからこそ楽しい。皆さんにはその違いも感じていただけたら嬉しいです!
ポスターと写真パネルの受注販売もありますね。
僕自身がデザインしたポスター5種と、写真パネル5種を受注販売します。本音を言うと、個人的に欲しかったので作りました。それくらい、今回の受注作品に入れた10点の写真は大切な存在で大好きなんです。
家の中の景色ってとても大事だと思うので、ポスターのデザインは、自分の家のインテリアを想像しながら考えました。皆さんも余白を楽しみながら好きなように飾っていただけたら嬉しいです。

最後に、今回の展示で、特に注目してほしいポイントや、お客様に伝えたいことなどを教えてください。
一番伝えたいのは、この写真展の中で自分と向き合い、何かを見つけて欲しいということ。
今の時代、周りのことが気になったり、目に入ったりすることも多いと思います。だからこそ、自分と少し向き合うきっかけをこの写真展で発見していただけましたら、本当に嬉しいです!

古屋呂敏 写真展「MY FOCAL LENGTH」

ニコンプラザ東京、ニコンプラザ大阪にて「MY FOCAL LENGTH」写真展が開催。
古屋呂敏がNikon Zfで撮影した本連載の掲載作品に加え、新たに撮り下ろした作品も展示しています。
写真展の入場は無料です。是非、お誘い合わせの上ご来場ください。
<ニコンプラザ東京 THE GALLERY>
2025年6月17日(火)~6月30日(月)10:30~18:30 ※最終日は15:00まで
休館日:日曜
<ニコンプラザ大阪 THE GALLERY>
2025年7月10日(木)~7月23日(水)10:30~18:30 ※最終日は15:00まで
休館日:日曜
また、写真展「MY FOCAL LENGTH」の開催を記念して、同名の写真集、古屋呂敏自身がデザインしたポスター5種と、写真パネル5種も販売。
表現の幅をさらに拡げてくれる「Zf」

フィルム時代を代表する「FM2」からインスパイアされたクラシカルなデザインで、表現への探求心を掻き立てるフルサイズミラーレス「Zf」。レバーひとつでモノクロームの世界へ切り替えられるなど、表現の可能性を拡げてくれる1台です。
2025年4月に公開されたファームウェアのアップデートで、「フレキシブルカラーピクチャーコントロール」機能に対応。公開されているイメージングレシピや、自分好みに作った色レシピをカメラに登録して、撮影を楽しめるようになりました。