国分真央
写真家 1990年生まれ、東京都出身。映像制作会社や写真事務所を経て独立。2020年に東京から山梨に移住したことをきっかけに、現在はフリーランスの写真家として首都圏にて活動中。鮮やかな色合いと人が自然に溶け込むような写真が特徴的で、美しい世界観を確立させている。
愛用カメラ:Leica M8、FUJIFILM X-S10、Panasonic DMC-GH3、Nikon F3など
愛用レンズ:Voigtlander NOKTON classic 35mm F1.4 II SC VM、Leica Summilux 50mmF1.4 1stなど
被写体が一番きれいに見える光を探して
「夕暮れの切ない感じを引き出したかったので、友人の自宅で西日の時間に撮影しました。もともと夕方の光を狙ってはいましたが、西日が当たった花の雰囲気が美しく表現できました。左からの半順光で撮影しました」。
光をうまく取り込み理想の世界へ近づける
光がとても印象的な国分さんの写真。
「昔から思うことは、影に支えられているからこそ光が生きるのだということ。それは人間も同じですよね。影や暗い部分が深みを増せば増すほどに光は輝くのだと私は思っていて、そういった部分を写していきたいなと常日頃考えています。光を入れたポートレートの魅力は“いつもそこにあるもの”ということ。その光をいかに取り込んで自分の考えている世界に近づけるか、そこが楽しさです。モデルさんには、“お花と会話してみて!”とか、“地球の一部になってみて!”など、ちょっと変わったお願いをしたりします。表現者同士、そこに生まれる化学反応を楽しむのが、ポートレートの醍醐味だと思っています」。
影が増せば、光はより輝く。それは、人も写真も同じ
「長野県の女神湖で、友人の立っている位置と水面の光の屈折を意識して撮影した一枚。順光で撮影しています。多重露光を使用して、水面の美しさを表現しました。人と水と光が溶け込む様がきれいでした」。
国分真央さんへ質問
Q1.光の向きについて教えてください。
「私がよく使う光の向きは、順光か半逆光です。順光は肌に光が当たる角度で撮ることが多いので、自分なりの表現力は残しつつ肌の質感がちゃんと出るようにします。逆光の場合は顔が少し見えるくらいの露出設定にして、オールドレンズを使っている場合はフレアを取り入れることも。半逆光は光と影のバランスや背景の光の差し方などで、後ろ向きの構図を引き立てることができます」。
「壁に射す光と木漏れ日の玉ボケがお気に入りです。光を使って刹那的な雰囲気を写したかったので、光の射し方とモデルさんのポージングがマッチした瞬間にシャッターを切りました。光は左からの反逆光です」。
Q2.光を取り入れる際に気を付けるべきことは?
「モデルの顔に影がかかりすぎると、表情が分かりづらくなる可能性があるので、どういう風に影が動いているのか、被写体にどのように影がかかるのか想像しながら、顔の角度による影をしっかり見ておくことです。また、逆光で撮る場合は、シルエットのバランスを確認しつつ、背景の景色にシルエットが溶け込まないように差別化を図るのが重要です」。
被写体との間に生まれるケミストリーがポートレートの楽しさ
「顔にかかる花の影をきれいに見せることに集中して撮影。初夏の暖かい雰囲気と花の影をモデルさんに乗せることで、繊細な印象に仕上げました。伏し目がちになった瞬間の、顔にかかる影がきれいでした。左からの半順光で撮っています」。
Q3.光を効果的に取り入れるためのガジェットや付属品は?
「光のプリズムや屈折を取り入れるときには、アクリル角柱や昔のシャンデリアのかけらなどを前ボケに利用することがあります。あとは今や有名な技法ですが、スマホの画面の反射を利用していたこともありました。角柱でなくても、水晶のアクセサリーやその日の手持ちのものなど、光を屈折させるのに使えるものは身近にもあります」。
「あえて期限切れのフィルムを使用しています。外から漏れる光がきれいだったので、手前の額のガラスに反射した光とシルエットを一緒に写して不思議な雰囲気に。額の花も入れることで女性らしさを込め逆光で撮りました」。
Q4.ポートレートに光を取り入れるための簡単なテクニックは?
「“ポートレート”というとハードルが上がるかもしれませんが、私も最初からポートレートを撮っていた訳ではありません。細かな違いはありますが、花や物撮りと同じように目の前の被写体の一番きれいに見える部分を探すことには変わりありません。また、LEICA Summilux 50mmF1.4 を手に入れたときの最初の感動は今でも覚えています。光を切り取るとクセ者なのですが、毎回撮るたびに現れる化学反応を楽しみに撮っています。お気に入りのレンズを見つけて光を楽しむのも、テクニックのひとつです」。
GENIC VOL.59
特集は「だから、人を撮る」。
最も身近にして最も難しい、変化する被写体「人」。撮り手と被写体の化学反応が、思ってもないシーンを生み出し、二度と撮れないそのときだけの一枚になる。かけがえのない一瞬を切り取るからこそ、“人"を撮った写真には、たくさんの想いが詰まっています。泣けて、笑えて、共感できる、たくさんの物語に出会ってください。普段、人を撮らない人も必ず人を撮りたくなる、人を撮る魅力に気づく、そんな特集を32ページ増でお届けします。
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Edit: izumi hashimoto