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「人」を撮りたいから 大辻隆広/フォトグラファー

第一線で活躍するプロたちに聞く、今までの道のりや仕事に対する想い。クライアントワークとは?撮ることを仕事にするとは?それぞれの向き合い方や姿勢を通して、そんな疑問への答えを探します。
「プロとして活躍するフォトグラファーたちの軌跡」。今回は、フォトグラファーの大辻隆広さんです。

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目次

プロとして活躍するフォトグラファーたちの軌跡

<BIOGRAPHY>
23歳 会社を辞めて写真学校に入学
24歳 写真学校と並行して、スタジオアシスタントに
25歳 フォトグラファー石黒幸誠氏に師事
30歳 独立
30〜40歳 ファッション誌、ジャケット写真の撮影をメインに活動
40歳〜 上記に加え、ポートレートなど被写体そのものを写す仕事が増える

吉岡里帆 Wアニバーサリー写真集『日日』(マガジンハウス)

「29歳の誕生日から1年間撮り続けて30歳の誕生日に写真集を発売することを、僕から吉岡さんご本人と事務所に提案。彼女のさまざまな表情を1年間追い続け、最終的に想像以上の仕上がりに。僕の人生で、最も印象に残っている仕事」。

山本美月/『SPRiNG』2024年2月号(宝島社)

「一緒にデートをしているような写真にしたくて、相手との距離感を縮められるようコンパクトフィルムカメラでパシャパシャと撮影。山本さんにはあまり指示せず、僕自身が動き回って撮りました」。

社会人になってから写真に挑戦したい気持ちが明確に

桐谷美玲/『GINGER』2023年11月号(幻冬舎)

「“秋カラーのファッション”というテーマ。大きく咲き誇る花の前で撮りたかったのですが夏も終わりに近づいていたため、その花を探すのが大変で…。撮影は午後からで、当日のギリギリまでロケハンし、家の近くの公園でこの百日紅を見つけて大歓喜」。

畑芽育/『ViVi』2024年1月号(講談社)

「テーマは“推しニットと私”。畑さんとは初セッションでしたが、彼女の感覚と僕の感覚の相性もよく、僕の要望を汲んで動いてくれる彼女に夢中になりました。完璧でした!」。

「最初にハマったカメラは、中学生の時に流行っていた『写ルンです』。いつも友達や恋人を撮っていたのを覚えています。その後、アメリカ留学中に風景や出会った人たちなど何気ない日常を撮り続けたのですが、のちにその写真を見返した時に当時のかけがえのない時間を思い出し、写真の素晴らしさを心の奥深くで感じたのを覚えています。社会人になってからプロのフォトグラファーの撮影現場に仕事で立ち会う機会があり、心のどこかにあった写真に挑戦してみたいという気持ちが明確になりました。そして写真学校、スタジオ勤務を経て、フォトグラファーアシスタントに。アシスタント時代は師匠と毎日現場に行き、撮影時間を共有し、夜な夜な話をし、そのおかげで仕事として自分が行くべき写真の道が見え、覚悟ができました。実際、今でも僕の表現方法は、影響を受けたさまざまなフォトグラファーの作品を自分なりに解釈して得たものを、そのまま表現している気がします。たとえば、大学時代にはアンドレアス・グルスキーのパノラミック・シンメトリーの作品から写真のアート性を感じ、写真学校時代にはアーヴィング・ペンやリチャード・アヴェドンの作品を見て、より人を撮ることに興味を持ちました。影響されたいろんなものを足して足して、割らずに足し続けたのが自分の写真じゃないかと思います」。

被写体の一番いい表情を、撮影しながら短時間で見つける

本田翼/『SPRiNG』2023年10月号表紙(宝島社)

「本田さんの誕生日付近の撮影で、サプライズでお祝いしてケーキを食べたり、笑顔が絶えない現場でした」。

乃木坂46『おひとりさま天国』【初回仕様限定盤(CD+Blu-ray)Type-A】

「スタジオ内に大きなプールを立て込み、丸2日かけて撮影した作品。このタイプAのジャケ写は初センターの井上和さんですが、20種類以上のビジュアルを撮りました」。

勝田里奈写真集『FLOWERING』(イマジカインフォス)

「表紙の一枚は、早朝の真冬の湖で撮影。立ち込める霧の中で日が昇り切るわずかな時間を狙い、緊張感と達成感がほぼ同時に来たのを覚えています」。

「仕事で多い撮影ジャンルは、タレントやアーティストを撮る“ファッションポートレート”。ファッション撮影はあくまでも服が主役ですが、ファッションポートレートは服と被写体の両方が大切です。被写体のモデルとしてのスキルと、その人の個性の両方を引き出すために、スタイリストさんやヘアメイクさんなどチームみんなと、まず洋服とモデルのバランスを見極めます。また、モデルさんの僕に対する信頼も必要になるので、コミュニケーションを積極的に取り、撮影時はずっとしゃべっています。特に求められるスキルは、被写体の一番いい表情を撮影しながら短時間で見つけること。僕は楽しくも、程よい緊張感を保ちつつ撮影する癖があるので、その点で向いていると思います。基本的にクライアントワークなので、限られた環境と時間で、的確に求められる写真を撮影することが重要です。そのためには目指すゴールを見極めるセンスが必要で、日頃からいろいろなフォトグラファーの写真を見たり、暇な時は誰かを誘って常に人を撮っていることが役立っている気がします」。

撮っている時から写真が世に出るまで喜びのピークは何度も訪れる

あの/『ROCKIN’ON JAPAN』2023年10月号

「アーティストとしてのあのちゃんの表情を引き出す、という依頼。スタジオ界隈の街中で次々と場所を変え、フィルムで撮影。徐々に心を許してくれた感じがしました」。

上白石萌歌/靴下屋 ビジュアル(2022年)

「靴下屋の撮影なので、基本的には靴下が画角に入ってないといけないのですが、顔のみの写真を撮る提案を受け入れてくれたチームに感謝しています。こういう面白さをわかってくれる感覚の人たちと、ずっと仕事をしていきたいです」。

「仕事の喜びとしては、“撮る”という行為自体が大好きなので、まずは撮っている時が楽しくて喜びのピークを迎えます。そして撮れた写真を見て満足がいくと、次のピーク。写真にデザインが乗って想像を超える仕上がりだった時、さらにその仕事が世に出てみんなに喜んでもらえた時…と、喜びのピークは何度も訪れます。本当に大好きな仕事に携われて、毎日が楽しいです」。

大辻隆広 プロフィール

大辻隆広

福井県出身。石黒幸誠氏に師事後、2007年独立。雑誌や広告をはじめ、写真展やプロダクト製作などブランドや企業とのコラボレーションもたびたび発信。
愛用カメラ:Canon EOS 5D Mark IV、PENTAX 645NII、FUJIFILM NATURA CLASSICA
愛用レンズ:Canon EF50mm F1.2L USM/EF 40mm F2.8 STM、smcPENTAX-FA 645 75mm F2.8

GENIC vol.70【プロとして活躍するフォトグラファーたちの軌跡】
Edit:Satoko Takeda

GENIC vol.70

2024年4月号の特集は「撮るという仕事」。
写真を愛するすべての人に知ってほしい、撮るという仕事の真実。写真で生きることを選んだプロフェッショナルたちは、どんな道を歩き今に辿りついたのか?どんな喜びやプレッシャーがあるのか?写真の見方が必ず変わる特集です。

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