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いきあたりばっちり。 on a whim,perfect. 高橋ヨーコの旅

「いきあたりばっちり。」とは、フォトグラファー 高橋ヨーコが自身の旅のスタイルにつけたタイトル。「とくに何も決めないことに尽きます。ひとまずどこかに行けば、今度はそのどこかの近くだったり、気になるところが出てくるものです。そうして、そこにも行ってみるかという感じで、旅をする。行けるときに行く、行きたくなったら行くという感じで、70か国くらいを訪れました」。どんな旅先が魅力的だと感じるのか?4つの視点を軸に“高橋ヨーコの旅”を語る、スペシャルインタビューです。

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目次

プロフィール

高橋ヨーコ

フォトグラファー 世界の生活文化を、フィールドワークするように撮影旅行を続けている。中でも旧ソ連を中心とした東ヨーロッパでの撮影を精力的に行い、静謐な写真表現と独自の色彩感覚によるカラー写真は国内外で高く評価を受けている。2010年、アメリカに移住し、Mid WESTを中心に全米を巡る旅をする。2020年にサンフランシスコより帰国し、現在は東京をベースに活動中。写真集に『WHITE LAND』、『グルジアぐるぐる/Georgia on My Mind』、『EAST SIDE HOTEL』、『SAN FRANCISCO DREAM』、『Along the Umatilla River』がある。

いきあたりばっちり。 on a whim,perfect. 高橋ヨーコの旅

1. 見たことがないものを、見てみたい。知らないことを、知りたい。旅とは、自分にさまざまにある欲求を、満たすもの。

「ロシアの有名なバレエ団のカフェにて。90年代のロシアは、すでにソビエト連邦は崩壊していたとはいえまだその時代を引きずっていて、社会主義国の怖さのようなものを感じました。今の時代はもう、そうでもないのですけれど」。

「旅先の写真はどれも、シンプルに“写真を撮りたいなあ”と思った情景です。この写真は、ロシア西部、サンクトペテルブルクの街スナップ。街行く人を撮ってみると、他人に対しての距離感がなんとも不思議だと感じます」。

異なる社会システムを持つ場所

「自分とはまったく違う社会のシステムの中で生きてきた人々を観察して、その違いとはいったい何なのか、社会の相違が人々の暮らしに何をもたらすのかを実際に見て感じたいし、知りたいという欲求があります。その欲求は、そのまま旅先としての魅力になります。長く共産主義のシステムが続いたロシアは、共産主義を生きた経験がない自分にとって、ミステリアスな場所でした。鉄のカーテンの向こう側を見てみたい、という思いに突き動かされて訪れてみると、知らない人に笑顔を作る必要がないことに気がつきました。接客をしたり、サービスをしたりする必要がないシステムに生きていたからだろうと思います。他人に興味がないのか、それとも興味を持たないようにしているのか。笑顔を向けてくれるような人はほぼいませんでした」。

2. どこかに行けば、また次のどこかへと続いていく。あとのことは、ひとまずどこかに飛んでから考える。

「アメリカは、車を走らせているとこのような景色がいくらでも見られます。この写真は、カウボーイたちが暮らすワイオミング州のどこか。彼らはよそ者の気持ちがわかっているようなところがあり、アジア人にも優しいです」。

「テネシー州のどこかのダイナー。人種問題や宗教の問題などが色濃く残るアメリカ南部は、中西部ともまた全然違っていて興味深いです。沿岸部の州では見られないものがまだまだたくさんあります」。

アメリカの、何でもないところ

「案外、何でもないところって行かないので、やはり行かないと、と思います。ニューヨークやロサンジェルスなどは訪れる人が多くて情報も豊富ですが、アメリカはそうではない場所のほうが大部分を占めています。それならばなおのこと、知らないものは見ておかないと、と思うのです。どこかを目指すわけでもなく、東の方へ行ってみよう、やっぱり北もよさそうだな、などと移動をしていると、魅力がないものに魅力があるような、そこにある空気感のようなものに出会える。いまだに禁酒法の名残が残るアラバマなど、南部では今ではあまり目にしないような習慣を目撃できます。中西部は何もない更地のようなところがたくさんあって、そこに忘れ去られたかのような街が点在します。そしてアメリカは、車を走らせていると宇宙のような景色がよく現れます」。

3. 行ってみたいなあと思ったら、それが行先になる。あとは、雪が降っていそうなところとか。

「アゼルバイジャンのナゴルノ・カラバフ。紛争の絶えなかった地で、焦げた建物がたくさんあります。ここで暮らすとはどういうことなのかと思い、どうしても行ってみたかったのです。写真は、冬のある日、子供達の通学風景を撮ったもの。大変なときを過ごしてきたであろう人々、小さな子供たちですらありえないぐらい優しくて、感動したのを覚えています」。

「南極のどこか。もっと氷の世界を想像していましたが、温暖化の波が南極にも押し寄せていて、氷も結構溶けていました。とにかく行くのが大変で、上陸するためのゴムボートも寒くてかなりつらかった。でも晴れ間が出ると本当に美しい氷の塊などを見ることができます」。

寒い、場所

「寒いのが好きというわけではないけれど、寒さという厳しい自然を写したいといつも思っています。ただの風景にしても、その場所で暮らす人々にしても、厳しさは美しいものだと感じます。また、単純に白い世界というのも美しいです。ロシアのポロナイスクの港では、寒すぎて波が凍っていました。私もそのとき初めて見たのですが、海岸の波が鱗のように連なっている様はちょっと不思議です。アムール川では、外気温よりも水温の方が高いため川から湯気のような煙が立ち込め、それがなんとも素敵です。なかなか難しくはありますが、寒さの厳しい場所では、いつも張り詰めたような空気感が写っているといいなと思いながら写真を撮っています」。

4. 過去には戻れないけれど、古い風景やシステムが残っているのなら、記録しに行かないとって。

「キューバ・ハバナ市内で、写真を撮らせてくれないかと声をかけた女の子の家。物が全然なく、建物も古いままでした。あまりに何もないので家族が住んでいるのかさえもわからなかったけれど、小さな弟が現れ、家族で暮らしているんだなと推測しました。家に入れてくれた後は撮影会みたいになって、たくさん撮らせてくれました」。

「ハバナ市内にある、キューバ人が行くバー。キューバは外国人とキューバ人では場所も通貨も分けられていますが、ローカルな写真を撮りたくて行きました。外国人用のお金しか持っていなかったけれど、みんな面白がってくれて、写真も撮らせてくれました」。

ノスタルジーを、感じる場所

「実際に昔のままの風景が残っていたり、古いものや昔のシステムがいまだにある、ノスタルジーを感じられる場所に惹かれます。過去には戻れませんが、まだそういう風景が残っているのなら記録しに行かないと、と思うのです。キューバは、中身はもう変わってきていますが、見た目は古いままの場所が残っています。ハバナでタクシーを頼んだら、ものすごい古いサイドカー付きのバイクがやって来て、それに乗って空港まで行きました。配給手帳は持っていないけれど配給の列に並んでみたら、パンをくれました。そのパンは、10年後に行ったときも同じものでした。また、ラオスのビエンチャンは、何年も、何も変わっていないのがわかる街でした。人口が少なく労働力がないため、発展できないと言われています」。

旅は移動に近く、場所は“旅の記憶”として残る

「最初の旅は、ポートフォリオを作るために訪れたシベリアでした。旅から帰ってきて、写真を壁に並べて貼っていたら、なんかいいなと単純に思いました。自分の人生が豊かでカラフルなものになった気がしたのです。以降も、行けるときに行く、行きたくなったら行くという感じで、70か国くらいを訪れました。旅をしていくと、旅は自分にとって、いろいろな欲を満たすために必要なものだと感じます。知りたい欲、見たい欲がすごくあります。見られないものこそ見てみたい、と強く思うのです。最近は旅先で友達ができることもあり、それはそれで楽しいですし、友達ができることによって知らない世界の扉が開く感じもしています。とはいえ、旅そのものではなく、私は写真があるから旅をしています。写真がなかったら旅はしていません。いつも撮りたいものを探していて、旅のスタイルはとくに何も決めないことに尽きます。ひとまずどこかに行けば、今度はそのどこかの近くだったり、気になるところが出てくるものです。そうして、そこにも行ってみるかという感じで、旅をする。アメリカなら車でキャンプをしながら移動したり、ヨーロッパだと夜行列車で移動しながら国境を越えるような旅が好きです。旅は自分にとって移動に近く、場所は“旅の記憶”として残っています」。

GENIC vol.77【いきあたりばっちり。】
Edit:Chikako Kawamoto

GENIC vol.77

2026年1月号のテーマは「写真家が選んだ、最高の旅先」

どんな旅をしたらいい?
その答えは、As you like. お好きなように、自分らしく。ルートを持たない余白たっぷりの旅でも。行先を詰め込んだ時間割びっしりな旅でも。
だって、旅は表現だから。
さて、旅人でもある写真家たちが選んだ「最高の旅先」はどこでしょうか?何かがあなたの心を撫でたなら、そこは次の目的地かもしれません。
永久保存版、GENICらしい、新しい旅のガイドブックの登場です。

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Cover Photo:高橋ヨーコ

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