飯田エリカ(Iida Erika)
少女写真家 1991年生まれ、東京都出身。日本大学芸術学部写真学科卒業。2013年より少女写真家として活動を始め、自らの少女時代の記憶をもとに”少女写真”という表現を追い求め作品を制作。女性のポートレートを中心に映画・ドラマ関係、雑誌、写真集の撮影をしている。
愛用カメラ:Nikon FE 、CLASSE W、KONICA AUTOREX 、ROLLEIFLEX
愛用レンズ:NIKKOR 35mmF2、NIKKOR 85mmF1.8、micro-NIKKOR 105mmF4micro、HEXANON AR 50mm F1.7
戸田真琴(Toda Makoto)
AV女優、文筆家 2016年にSODクリエイトからデビュー。趣味の映画鑑賞や、性愛、女性についてのコラムやエッセイを多数執筆。著書に『あなたの孤独は美しい』(竹書房)『人を心から愛したことがないのだと気づいてしまっても』(KADOKAWA)。
私が私で在るために
飯田「モデルは役者の中尾有伽さん。以前、中尾さんが”人が求める像を演じてしまい、帰ってから本当の自分は違うのにと思うことがある”という話をしてくれて。そういう女の子の心の動きや痛みを追ったストーリー仕立てのシリーズです」。
心がピュアで、だからこそ傷つきやすい。そんな複雑さを、素敵だと思う
この春、“グラビア” を見つめ直すプロジェクト「I'm a Lover, not a Fighter.」を立ち上げた、飯田さんと戸田さん。Instagram とnote をベースに展開するこのプロジェクトは、毎回1人の女性にフォーカスし、オールフィルム撮影&全カット公開というルールのもと、男性目線ではないグラビアの姿を模索していきます。このプロジェクトを始めたきっかけは?
飯田 「以前から、グラビアがカメラマンから編集者まであまりにも男性主体なことに、戸田さんは撮られる立場で、私は撮る立場として、考えるところがあって。実際にグラビアの現場へ行くなかで、あまり女性が大事にされてないな、と感じることもすごく多くて。被写体のその子自身よりも、とにかく肌が出ていることや、胸の大きさが強調されることの方が優先されるというか」。
戸田「 すでにある女性像に当てはめていってる感じだよね。例えば“この子は元気系だから、海で笑っている写真を撮ろう”というように、キャラクター化されたイメージに女の子を当てはめていて、ルーティーンみたいになってしまっている。私は、女の子が肌を晒して写真に写る覚悟を決めることって、大変なことだと思っているので、そのうえで大事にすべきことはもっと根本のことなんじゃないかなと思うんです」。
飯田 「グラビア誌を否定するわけじゃないけれど、だったら私達はこういうのがいいと思ってるよ、というのを表現したくて2人で始めました」。
女の子が肌を晒して写真に写るのは、覚悟がいることだから
戸田「下着姿で泣いている女の子。彼女が傷ついていることを視覚的に伝えたかった一枚です。羽を使うことで傷ついてる姿も美しいということを表現しました」。
飯田「ひとりで落ち込んでワー!ってなっているときって、ものを投げたり何かに当たったりもしちゃう。どんどん感情を出してもらいたいなと思って、この小道具を用意しました」。
飯田「男の人の理想像としての女性像を、“清純”そうなワンピースで表現しました」。
怒りは誇り。私は私のままで美しい
飯田「消費されていること、差別されていること、生きていて感じる怒りを炎で表現したくて。可愛くてキラキラしているだけじゃない、炎をまとい怒りと誇りを持った美しい女性像」。
私たちのための“魂のグラビア”を求めて
戸田「絶望した翌日の朝のイメージ。そもそも肌を晒すということは傷つくリスクがあることです。けれど、今のグラビアはそういう生々しさをどんどん麻痺させているんじゃないかな。この中ではハムという、加工されて生々しさを失ったお肉でそのことを表してみました。それでも、女性として生きていくんだという力強いシーンです」。
お2人の思う、理想のグラビアとはどんなものなのでしょうか。
飯田 「本当のエロって、ただお尻や胸が写っているようなこととは、もっと違うところにあるんじゃないかな。その子の心の大事なものを見せられているということのほうが、私たちはセクシーだなと思っていて。それを撮れたら、ただ性的消費の対象だけではない“なにか”になるんじゃないかと思うんです」。
戸田 「すべての女の子は、複雑でめんどくさくて面白いところが、可愛い。分かりにくいところこそが、もっと素敵。私たちはそこを写したいんです」。
Information
「 I’m a Lover not a Fighter.」
男性の目線のみの「グラビア写真」のあり方を再定義し、「誰にも見つけられないあなたを愛する」をテーマにした新しいグラビアプロジェクト。月額制のnoteとInstagramを中心に写真作品を公開中。
Podcast「戸田真琴と飯田エリカの保健室」
学校のなかで、ひざをすりむいたり、気持ちがなじめなかったりするとき、私たちには保健室という場所があった。「普通」という言葉も、同調圧力も及ばない、社会のなかにつながりながらも、ただ安全に居られるだけの場所が、もっとあったらいいのに──。 あなたと、私たちのためにつくってみた、保健室がほしいひとのための場所。
GENIC VOL.59 【女性写真家が見つめる女の子の世界】
Edit: Yoko Abe
GENIC VOL.59
特集は「だから、人を撮る」。
最も身近にして最も難しい、変化する被写体「人」。撮り手と被写体の化学反応が、思ってもないシーンを生み出し、二度と撮れないそのときだけの一枚になる。かけがえのない一瞬を切り取るからこそ、“人"を撮った写真には、たくさんの想いが詰まっています。泣けて、笑えて、共感できる、たくさんの物語に出会ってください。普段、人を撮らない人も必ず人を撮りたくなる、人を撮る魅力に気づく、そんな特集を32ページ増でお届けします。