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パン屋さんの歴史を紡ぐ日々 四釜明拓 | 連載 仕事と生活がリンクする “〇〇屋さん”の暮らしの風景

仕事をすることと、暮らすこと。かけ離れている人もいれば、ふたつがお互いに関係しあい、ひとつの人生のようになっている人もいます。そこには、より良い暮らしのヒントが隠されているかもしれません。“〇〇屋さん”の暮らし、を見せていただきました。全4回の連載、第1回はさいとう製パン店主の四釜明拓さんです。

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目次

プロフィール

四釜明拓

さいとう製パン店主 パン職人 福島県出身。29歳の時に札幌市内のパン屋に勤めていたことがきっかけで、齋藤正勝さん・タキ子さん夫妻が1953年にニセコ町で創業した老舗の「さいとう製パン」を継ぐことに。北海道産の小麦粉、羊蹄山の湧水を使って焼かれたパンは絶品。
愛用カメラ:FUJIFILM X-T5
愛用レンズ:FUJIFILM XF35 mm F1.4、FUJIFILM XF 90mm F2

さいとう製パン

住所:北海道虻田郡ニセコ町字本通 106
営業時間:10:00〜16:00
定休日:月、火曜日

パン屋さんの一日

03:00〜04:00 パン屋の2階に住んでいるので起きたら支度をしてパンを仕込み、焼き始める
10:00 開店
16:00 閉店。片付けや明日の準備。毎日徒歩10分の温泉へ

パン屋さんの歴史を紡ぐ日々

70年以上変わらずあるこの場所でパンを焼き、物語を続けられることが嬉しい

「焼きたてのコッペパンが朝の光に包まれてキラキラしていたので撮影。食べたいなって思って貰えたらうれしいです」。

「木でできたコッペパンは北海道のデザインユニット、ネクタイさんが作ってくれたもの。お店の前にあったら開店、しまってあったら閉店の合図。お客様にとても好評でみんなそれぞれのポーズで写真を撮ってくれるので嬉しいです。この写真は常連のお客様ふうちゃん(@___okinu)。ふうちゃんママが撮ってくれた1枚です」。

@___okinu

「雪が積もり始めたお店。周りの景色は変わっていくけど、さいとう製パンは70年以上前から変わらずこの場所に。ここでパンを焼き、物語を続けることが出来て嬉しいなと思います」。

「50年ほど前から使われているパン用のミキサー。大事に使われてきたのでまだまだ現役です。いつもありがとうという気持ちで使っています」。

「ドーナツにシュガーをまぶして袋に詰め道の駅にもっていくところ。タオルの色で全体が引き締まってバランスがよいのと、富士フィルムのフィルムシミュレーション“クラシッククローム”が雰囲気をよくしてくれた1枚」。

パンは自分の分身。心や身体とつながっているからこそ、日々の暮らしも穏やかに過ごしたい

北海道のニセコ町で長く愛されてきた老舗パン屋『さいとう製パン』。2016年に先代のご夫婦から引き継ぐことになった四釜さん。「巡りめぐって自分のところに話が来て、このお店や物語に惹かれ、協力したいと思ったんです。古くからあるお店なので、50年以上使い続けているオーブンがあるのですが、先代のご主人が亡くなられた後も、錆びて使えなくなるのが嫌だからと、おばあちゃんがパンを焼き続けていました。機械だけじゃなく、その気持ちも受け継いでパンを焼き続けること、今あるものを大事に使っていくことを大切にしています」。好きな時間は朝だそう。「気温が安定しているのでパンが作りやすいのと、空気が澄んでいて景色が良く見えます。ニセコは豊かな自然があり湿度が少なく夏も涼しく暮らしやすい土地です。羊蹄山という富士山によく似た山があり、四季折々素晴らしい姿を見せてくれます。休みには山に登って朝日を見ることも。パンは自分の作品であり、分身。心や身体を良い状態に保つことで、美味しくて形もきれいなパンが焼き続けられると信じているんです。だからこそ、日々の暮らしもなるべく穏やかに過ごしたいですね」。写真を撮りたくなる瞬間は?「一人でやっているのでパン作りが忙しく、手も小麦粉まみれなので中々カメラを触れないのですが、パンやドーナツが焼きあがった瞬間は湯気が上がりキラキラしているのでシャッターを切りたくなります。以前取材で訪れてくれたカメラマンさんが、今の自分に光を照らしてくれるような素敵な写真を撮って下さったことがあったんです。それから自分も誰かに喜んでもらえる写真が撮れたらと思うようになりました。写真を通してニセコに来てみたい、パンを食べたいなって思ってもらえたら嬉しいです」。

GENIC vol.74 仕事と生活がリンクする “〇〇屋さん”の暮らしの風景
Edit:Megumi Toyosawa

GENIC vol.74

2025年4月号の特集は「It’s my life. 暮らしの写真」。

いつもの場所の、いつもの時間の中にある幸せ。日常にこぼれる光。“好き”で整えた部屋。近くで感じる息遣い。私たちは、これが永遠じゃないと知っているから。尊い日々をブックマークするように、カメラを向けてシャッターを切る。私の暮らしを、私の場所を。愛を込めて。

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