Kenta Hayashi
Photographer兼空調機材卸 1980年生まれ、東京都出身。結婚を機に日常や子供の成長記録用にカメラを購入。家族写真と並行して風景写真や街並みを撮影していたところ、ある船宿の軒先で見かけた屋形船の光跡写真に目を奪われ、長秒露光写真の世界へ。その後、流し撮りを行うように。現在は『Tokyo in the Rain』というキーワードのもと、雨の東京を中心に都市景観とストリートの融合写真を撮影。
愛用カメラ:Sony α7R III
愛用レンズ:SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN/50mm F1.4 DG DN/14-24mm F2.8 DG DN
Q.「流し撮り」の成功の秘訣は?
A.スローシャッターで被写体を追尾するように撮影する
「秋葉原で撮った一枚。背景と被写体の親和性を感じて撮影しました。自転車カゴに犬を入れて走っていた、目立つ被写体でした」。
動いている被写体のみにピントが合い、動いていない背景が流れることで成功する
「流し撮り撮影の基本設定は、シャッター速度を遅くすることが前提です。スローシャッターで被写体を追尾するように撮影することで被写体のみにピントが合い、背景が流れることで成功となります。絞り値やISOに関しては撮影地によって変わりますが、オーバーやアンダーにならないよう注意する程度でOK。例えば、都心部で車や自転車を撮影するときのシャッタースピードは1/10~1/20(焦点距離により変動)、絞り値はf/4~9、ISO値は100〜400ほどに設定し、白飛びしないように気を付けて撮影しています。手持ちで撮影する場合は、しっかりと脇を締めてカメラを固定し、被写体の動くスピードにあわせて、腰を軸に上半身ごとひねるように、被写体を追尾して撮影するのがコツ。オートフォーカスでAF-S・中央固定だと、被写体を捉えやすくなります。ただ、最新のカメラは追尾性能が優れているのでこの限りではありません。必要機材は特にないですが、被写体や場所によっては三脚を使用したほうが有利な場合も。その際はマニュアルフォーカスで置きピンしたほうが簡単に撮影できるかと思います。流し撮りのおもしろさは、高速で迫りくる被写体をガチピンで撮れたときの充足感と、それに伴う高揚感を得られること。流し撮りは失敗するのが当たり前の撮影方法なので、100枚撮って1枚成功すれば大成功。何度も失敗を繰り返し、練習を重ねることによって撮れるようになるので、諦めずに楽しんで撮影してみてください」。
流れている感を一層表現したいならPhotoshopのモーションブラーエフェクトで
「水平ではなく右下に流れるように撮影。そのため、流れた光源が少し斜めに見えてしまいインパクトが薄れると感じました。それならばいっそのこと角度を付けてモーションブラーをかけたほうが疾走感が生まれるのでは、と思い編集して仕上げた作品です」。
「撮影後に必ずPhotoshopを使用するわけではありませんが、通常の編集のあとにモーションブラーをかけた状態を想像し、より良い表現ができそうと思ったときには使用しています。モーションブラーは背景の流れている感をより一層表現できるので、使用することによって被写体がさらに引き立つんです。モーションブラーの適用量によって見え方が変わるので、いろいろと試して違いを楽しむのも面白いです」。
GENIC vol.67【撮影と表現のQ&A】Kenta Hayashi/Q.「流し撮り」の成功の秘訣は?
Edit:Izumi Hashimoto
GENIC vol.67
7月号の特集は「知ることは次の扉を開くこと ~撮影と表現のQ&A~」。表現において、“感覚”は大切。“自己流”も大切。でも「知る」ことは、前に進むためにすごく重要です。これまで知らずにいたことに目を向けて、“なんとなく”で過ぎてきた日々に終止符を打って。インプットから始まる、次の世界へ!
GENIC初のQ&A特集、写真家と表現者が答える81問、完全保存版です。