目次
- ライカ・オスカー・バルナックアワード(LOBA)2025
- ファイナリスト
- リンゼイ・アダリオ(アメリカ)
- “Mom, I Want to Live” – A Young Girl Battles War and Cancer
- アルレット・バシジ(コンゴ民主共和国)
- Beyond Numbers
- アレハンドロ・セガラ(ベネズエラ)
- The Two Walls
- セルゲイ・ドゥヴェ(モルドバ共和国)
- Bright Memory
- ギデオン・メンデル (南アフリカ)
- Deluge
- スタニスラフ・オストロウス(ウクライナ)
- Civilians. The Gray Zone
- 2025年度ライカ・オスカー・バルナックアワード 情報
- おすすめ記事
ライカ・オスカー・バルナックアワード(LOBA)2025
ライカは1980年からLOBAを通じて優れた写真家の活動を称えています。例年通り、審査員が世界約50か国120名以上の専門家により推薦された写真家の作品を審査、ファイナリストを選出しました。各推薦者は、自身の見識と経験にもとづいて最大3名の写真家を候補者として推薦。また、新人部門の賞である「ライカ・オスカー・バルナック・ニューカマーアワード」については、世界17か国20の国際機関および高等教育機関との協力のもとで選出されます。最終的な受賞者は、一般部門・新人部門ともに10月9日にドイツ・ウェッツラーにあるライカ本社で開催される授賞式当日に発表されます。一般部門の受賞者には、賞金40,000ユーロと10,000ユーロ相当のライカカメラ製品が、新人部門の受賞者には、賞金10,000ユーロと「ライカQ3」がそれぞれ贈呈されます。授賞式の後には、2025年のファイナリストたちによる写真展が、エルンスト・ライツ・ミュージアムにて開催。また、受賞者とファイナリストの全作品および解説を紹介するカタログも出版されます。この写真展を皮切りに、LOBA 2025受賞者とファイナリストの作品は世界各地のライカギャラリーや写真フェスティバルでも順次展示される予定です。
ファイナリスト
リンゼイ・アダリオ(アメリカ)

Lynsey Addario(United States of America)© Sam Taylor Johnson
写真家 1973年、アメリカ生まれ。戦争や人道危機をテーマにした作品で知られている。特に中東、アフリカ、南アジアでの紛争や、女性や難民に関する取材を数多く行っている。ピュリツァー賞やマッカーサー・フェローシップを受賞しており、報道写真界で非常に高い評価を得ています。
“Mom, I Want to Live” – A Young Girl Battles War and Cancer
アメリカ人写真家 リンゼイ・アダリオは、2020年、2歳で希少な眼腫瘍が見つかったウクライナの少女の運命を中核に据えた写真シリーズを制作しています。治療可能とされるその病は、戦争の影響で中断を余儀なくされました。戦火に引き裂かれた国で、諦めることなく必死に生きるための闘いを続ける幼い少女とその家族の胸を打つ物語です。



アルレット・バシジ(コンゴ民主共和国)

Arlette Bashizi(DRC)/© Daniel Bitita
写真家 1999年、コンゴ(DRC)のブカブ生まれ。現在ゴマを拠点に活動。主に女性と若者を被写体に据えて、文化・環境・健康・社会的課題をテーマにした報道写真を制作している。Joop Swart Masterclass(World Press Photo財団)2024年選出
Beyond Numbers
コンゴ民主共和国(DRC)出身のアルレット・バシジは、自身の手掛けるプロジェクトで、現地における反政府勢力と軍隊間の紛争が残す傷跡を、写真を通じて発信しています。同国では600万人以上のコンゴ人が避難を強いられました。バシジは、2021年以来、戦火に苦しめられるコンゴ東部の北キブ州の日常を、自らも住人の一人として記録しています。カメラによる記録を通じて、バシジは統計の中の「数字」としてしか扱われない人々に顔と名前を与えています。



アレハンドロ・セガラ(ベネズエラ)

Alejandro Cegarra(Venezuela)/© Elsa Acare
フォトジャーナリスト・ドキュメンタリー写真家 1989年生まれ。現在メキシコシティを拠点に活動。World Press Photo Award(複数回受賞)、W. Eugene Smith Fund Fellowship、Pictures of the Year Internationalなどを受賞。
The Two Walls
かつて、亡命希望者にとって安全が保証される避難先として知られていたメキシコ。しかし近年、本国へのさらなる流入を阻止しようとする米国の移民排斥政策を支える形で、その立場は大きく変わりました。ベネズエラ出身で現在はメキシコに住むアレハンドロ・セガラは、モノクローム写真のシリーズで、メキシコ国境地帯で厳しい現実に翻弄される人々の運命を描いています。



セルゲイ・ドゥヴェ(モルドバ共和国)

Serghei Duve (Moldova)/© Alexander Duve
フォトジャーナリスト 1999年、モルドバ共和国 キシナウ生まれ。現在はドイツを拠点に活動。2021年よりVisual Journalism & Documentary Photography 修士課程在籍。
Bright Memory
「明るい記憶」というロシア語の表現に込められた感情を、写真というかたちで捉えたシリーズ。 日常のひとコマに「郷愁」や「分断」の記憶が滲む作品です。モルドバ生まれのドイツ人写真家 セルゲイ・ドゥヴェは、ロシア政府の支援を受ける国際的に未承認の地域 トランスニストリアにルーツを持つ家族の視点から、同地域との繋がりを写真で表現しています。トランス二ストリアは1990年、モルドバからの独立を宣言しました。



ギデオン・メンデル (南アフリカ)

Gideon Mendel(South Africa)© Jonathan Pierredon
フォトジャーナリスト 1959年生まれ。南アフリカ共和国出身。人権、HIV/AIDS、気候変動をテーマとした長期ドキュメンタリー作品で知られている。World Press Photo Award、Sony World Photography Award、Eugene Smith Grant in Humanistic Photographyなど受賞。
Deluge
南アフリカ出身の写真家 ギデオン・メンデルは、世界的な気候危機をテーマとした写真シリーズによって、気候変動の影響が富や階級、人種、地理的境界を超えてすべての人に及んでいることを伝えています。2007年からは気候変動による洪水被害をテーマとするプロジェクトを展開、世界13か国で洪水の現場を記録してきました。メンデルは、被災者の人々の姿をダイレクトに伝えるポートレート写真に、抽象的に表現された風景写真を組み合わせることで、新たな気候変動の類型を描き出しています。



スタニスラフ・オストロウス(ウクライナ)

Stanislav Ostrous(Ukraine)/© Tetiana Tkachenko-Radohuz
ドキュメンタリー写真家 1972年生まれ。ウクライナ出身。2012年よりフォトジャーナリズムの分野で本格的に活動開始。シリーズ:「Novovorontsovka. Century」により、2019年 PhotoCULT コンテストのファイナリストへ。
Civilians. The Gray Zone
容赦ない砲撃にさらされるウクライナのドネツィク、ヘルソン、ハルキウ。逃れることのできる人々はすでにその土地を去り、貧しく、年老いた人々だけが今もそこにとどまっています。店は閉まり、電力の供給も不安定な毎日。人々の運命は、ぎりぎりの状態が続く地帯で支援を続けるボランティアの手にかかっています。ウクライナ人写真家 スタニスラフ・オストロウスによるモノクローム写真シリーズは、戦争の厳しい現実、絶望に満ちた状況下に暮らす人々の姿を伝えています。



2025年度ライカ・オスカー・バルナックアワード 情報
・ウェブサイトでは、コンテストの概要が閲覧可能。
・過去の審査員と推薦者のインタビューも掲載されています。