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【撮影と表現のQ&A】助川康史/Q.撮り鉄の面白さを教えて!

さまざまな写真家、フォトグラファー、クリエイターが登場するQ&A企画。
「知ることは次の扉を開くこと」。
今回は、鉄道に関するオールラウンドの撮影を網羅されている鉄道写真家、助川康史さんに質問です。

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助川康史

鉄道写真家 1975年生まれ、東京都出身。真島満秀氏に師事し、業界で生きるための商業鉄道写真と、表現者としての鉄道写真の両方を学ぶ。現在はマシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ勤務。
愛用カメラ:Nikon Z 9/Z 6II
愛用レンズ:NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S/Z 24-120mm f/4 S/Z 100-400mm f4.5-5.6 VR S

Q.撮り鉄の面白さを教えて!

A.素晴らしい光景と列車が組み合わさった、一期一会の瞬間を撮れた時が喜びのマックス

撮影機材:Nikon D850 × AF-S NIKKOR 2 0 0 -5 0 0mm f/5.6E ED VR
中央本線 山梨・勝沼ぶどう郷~塩山。
「勝沼ぶどう郷駅の隣には甚六桜公園があり、春には見事な桜並木が広がります。夕方、桜並木を駆け抜ける特急『あずさ』を撮影。普通に撮ると列車が桜に埋もれるので、超スローシャッターで流し撮りをし、桜の中に列車のディテールを浮かび上がらせました」。

撮影機材:Nikon Z 9 × NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
五能線 青森・追良瀬~驫木。
「風光明媚な観光路線である五能線の一番の魅力は、日本海に沈む夕日。この日の狙いは日没20分後。マジックアワーとなり、空と海が美しいグラデーションを見せる中、『リゾートしらかみ号』が登場。俯瞰撮影することでヘッドライトが線路を照らし出すことを考えて、線路が正面になる場所にカメラをセットしました」。

撮影機材:Nikon Z 6II × NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
近鉄南大阪線 大阪・矢田~河内天美。
「大和川橋梁の土手いっぱいに咲いていたクサフジの中に寝っ転がり、夕日と一緒に撮影。逆光の透過光によってクサフジの紫色がより鮮やかに出るような方向を選んで。狙いはレストラン列車『青の交響曲(シンフォニー)』。特別な列車を、特別な光景で美しく描き出すことができました。不審者と思われがちな体勢で、必死にベストアングルを探しながら撮影(笑)」。

アイドルに会えたような感覚でシャッターを切る。愛に理由はない(笑)

「鉄道写真に目覚めたのは、7歳頃。物心がつく頃から鉄道好きでしたが、母親がコンパクトカメラを買ったことをきっかけに、時折それを借りて近くの線路に撮りに行ったのを覚えています。今では鉄ちゃんが大好きな列車中心の"編成写真"から、テクニカルな"流し撮り"、四季折々の鉄道風景など、場面と状況に応じた撮り方で最も良いシーンを切り取るオールマイティな鉄道写真家だと自負しています。鉄道写真の魅力とは、一期一会の素晴らしい光景と列車が組み合わさり、思い描くような作品として撮れた時の喜びに凝縮されます。鉄ちゃんが多く集まるのは、非常に珍しい列車が来る場合が多いのですが、それは普段会うことが叶わない有名人に出逢える機会や、引退間近のアイドルの最後のステージを見届けるのとまったく同じ感覚です。愛に理由はありません(笑)。鉄道写真は、編成写真はもちろん、鉄道風景写真でも列車が来た瞬間しかシャッターチャンスがありません。自然現象などがいくら良い条件でも、列車が来なくては鉄道写真にならないのです。大自然などはさまざまな条件で風景が変わり、不変なものはありません。そんな刻々と変わる条件の中で『まだか、まだか』とドキドキしながら列車を待ち、自分の思い描いていた構図や風景の作品が撮れた時、さらには想像以上の光景に出逢えた時は至福の瞬間です。鉄道車両や鉄道施設はもちろん、季節の彩りや風土、地勢や人など、鉄道を取り巻くすべてのことに興味を持ち、それを理解して感動することを大切にしています」。

撮影機材:Nikon Z 9 × NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
奥羽本線(山形新幹線) 山形・高畠~赤湯。
「霧を予想し現場近くで車中泊。予想通り雪原に朝霧が発生し、霧の状態を心配しながら待機。待った甲斐があり、東京行きの『つばさ』が霧の中に消えていく一枚が撮れました。通常の鉄道風景写真は先頭部がこちらを向くように撮りますが、霧の中に向かっていく様子を表現すべくこの向きで。一生のうち、もう一度出逢えるかどうかの奇跡に近い光景です」。

撮影機材:Nikon Z 9 × NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
田沢湖線(秋田新幹線)秋田・赤渕~田沢湖。
「奥羽山脈を越えてきた『こまち』が、紅葉に染まる仙岩峠を下っていきます。実は紅葉の最盛期に少し出遅れて、メインアングルとなる山は葉を落とし気味だったのですが、まだ鮮やかな手前の木々を生かしたアングルに変更。晴れると逆光になりすぎて影の部分が多くなるので、ひたすら曇るまで待ちました」。

撮影機材:Nikon Z 9 × NIKKOR Z 100-400mm f4.5-5.6 VR S
東海道新幹線 岐阜・岐阜羽島~米原。
「列車の顔は動物や人と同じく、カッコ良かったり可愛かったりと個性豊か。それを証明写真ではなく、イメージポートレート風に仕上げます。朝日を受けて、雪を巻き上げながら迫ってきた一番列車の『こだま』。ヘッドライトが切れないように、かつ先頭部の顔の下側と右側をあえてフレームアウトさせて」。

撮り鉄初心者におすすめの撮影機材

「初心者には、高速で走る列車を撮るのに適したカメラがおすすめ。AFが強く、高速連写ができる2000万画素クラスであれば十分です。また、緻密なバランスの構図を取るためには、手持ちではなく三脚が必須です。ただし、駅や人が多い公共の場所では使用を控えて」。

助川康史 Twitter

GENIC vol.67【撮影と表現のQ&A】助川康史/Q.撮り鉄の面白さを教えて!

GENIC vol.67

7月号の特集は「知ることは次の扉を開くこと ~撮影と表現のQ&A~」。表現において、“感覚”は大切。“自己流”も大切。でも「知る」ことは、前に進むためにすごく重要です。これまで知らずにいたことに目を向けて、“なんとなく”で過ぎてきた日々に終止符を打って。インプットから始まる、次の世界へ!
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