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奇妙な世界 磯部昭子

写真は生き様が反映されるアート。何を感じ、何を受け取って生きてきたのか。写真に投影されるのは、自分自身です。私の写真世界へようこそ。
作家活動に積極的に取り組む写真家たち、各人の写真世界に足を踏み入れてください。
「My World, My Essence 私の写真世界」2人目は、広告や雑誌、CDジャケット等の撮影を手がける傍ら、作品制作を続けている、フォトグラファーの磯部昭子さんです。

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目次

プロフィール

磯部昭子

フォトグラファー 武蔵野美術大学造形学部映像学科卒業。広告や雑誌、CDジャケット等の撮影を手がける傍ら作品制作を続けている。最近の展覧会に「透明人間」(SOM GALLERY、2023)、KG + 2022、松本市美術館×松本PARCO「パルコ de 美術館」(2021)。主な写真集に『VIDEO LOOP』『ALTER EGO』などがある。
愛用カメラ:Canon EOS R5
愛用レンズ:RF24-70mm F2.8 L IS USM

My World, My Essence 私の写真世界

奇妙な世界

自分らしい作品を創り上げる要素の一つとして、「絞って撮るのが好き」と磯部さん。「“らしさ”が欲しいならあえて表面的なことから取りかかるのはありですよね。あらかじめ条件を自分で決めてしまえば、それはらしさにつながるかもしれない。絶対下からあおって撮るとか、レンズの焦点距離を決めるとか。そのルールが自分を追い詰めないといいな、とは思いますけれど」。

「時間をかけているのはテーマを決める段階。テーマとは、個人的なものをどう世の中とつなげていくかの作業。そのなかで、じゃあこういうものを撮ろう、こうして展開しようと決めていきます。でも撮り始めると全然違う方向に向かうこともあって。それはそれで、なんでそちらが良いのか、そういうことも考えながら違う道を進んでみたりもしています」。ニューポートレート・アクリルコレクションより。

「私にとって、自分らしく表現することは作品制作の最重要点じゃないんです。だからそこに迷いや葛藤というものはなく、あるとしたら何をテーマにするか、そういうことに時間をかけています。いつも作品ごとにコンセプトを書き出しているのですが、読み返してみると、『幻想』『幻』『幼少期の怖かったもの』といった言葉が多く出てきます。それを端的に言うのなら、『ロマンティック』なのかなって最近思いました。生きていることや死ぬまでの記憶って雲を掴むような話ですよね。そのふわふわしたものをどうやって形に残すか、ということに夢中になって、撮り続けているだけなのかもしれません。子供の頃にやっていた遊びの延長のまま、表現の手段の一つとして今、写真がある。そして作品は、伝えたいというより生きていくなかでの提案に近いです」。

写真は表現の手段

最近撮影している作品のなかでお気に入りなのが、息子さんの夢日記から選んだ言葉をもとに物撮りしたシリーズ。「息子は朝起きると自分が見た夢の話をよくします。私も息子の夢にお邪魔して想像してみます。息子の見る夢はどんなものだろうか。それを撮影してみたくなりました。息子が収穫した紅あずまを携えて、夢の世界を想像して撮影した最初の一枚」。

息子の夢シリーズより。「作品の撮影に他者を介入させ、他者とはいえそれが息子であるということ。私の意思ではない言葉と、息子という私の身体から出てきた一番近くて特別な、だけどやはりあえていうと他人の夢。そこには私の意思はないけれど何かつながりがあるのか。そんなことを考えながら、息子が見た夢の世界にお花を加えて撮影しました」。

「捉えどころのない感情をいかにクリアに表現するか、一見矛盾したことを面白く表現できたらいいなあと思っています。作品を撮るときに気をつけているのは、被写体となる人が嫌な思いをしないことに尽きます。楽しんでもらえたらと思いますね、それがどんな内容であれ(笑)」。ニューポートレート・アクリルコレクションより。

「その上で、現在の作風に至るターニングポイントとなったのが、2016年の後半、産後すぐに始まった雑誌『サイゾー』の表紙と巻頭の撮影だったのかなと思います。当時のデザイナーさんはディレクションから全部、やりたいことをやらせてくれる方でした。スタジオ撮影で予算の少ないなかでどこまで作り込めるか、自分のアイデアをいろいろ投影して、今思えば産後ハイのなか一年通してやってみた結果、自ずと奇妙な世界観の作風ができ上がりました。自分らしさを言い換えると、癖とも言えると思っています。私は、それが癖になってしまっていないか、飽きてしまっていないかを、常に自分に問いかけていきたいなって思っています」。

GENIC vol.71【My World, My Essence 私の写真世界】
Edit:Chikako Kawamoto

GENIC vol.71

2024年7月号の特集は「私の写真世界」。
写真は生き様が反映されるアート。何を感じ、何を受け取って生きてきたのか。写真に投影されるのは、自分自身です。自分らしさとはいったい何なのか?その回答が見つかる「作品」特集。私の写真世界へようこそ。

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