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プロフィール

濱田紘輔
写真家 1990年生まれ、三重県出身。東京を拠点にクライアントワークを手掛けるかたわら、『Between Me & the US』(全国取扱店舗にて販売中)や『THE LAUNDRIES』など写真集を出版し、全国各地で個展を開催。WOOLRICH JAPAN がシーズン毎に発行する写真集『WISH YOU WERE HERE』の撮影を継続。(WOOLRICH代官山店にてノベルティとして配布し、同店舗では同作品プリントが常時展示)。
愛用カメラ:PENTAX67II、Nikon F100、FUJIFILM GFX50SII
愛用レンズ:PENTAX67 90mmF2.8
写真家それぞれのランドスケープ
十勝で紡がれる継承の物語

北海道 十勝の大自然とともに、人の営みを写し出す

「北海道には何度か行ったことがありましたが、十勝平野がずっと遠くまで広がっている光景は新鮮でした。アメリカでよく撮影をしていますが、土地の雰囲気がアメリカ郊外に似ている印象もあります」。
「今回の掲載写真は、WOOLRICHの写真集『WISH YOU WERE HERE』の出版に向けて、北海道 十勝で撮影したもの。たまたま十勝に実家がある友人から聞いた、ひいおじいちゃんが昭和初期に十勝へ開拓移住した際に植樹したカラマツを、50年に一度、今でも伐採しているという途方もない歳月の話が強く記憶に残っていました。友人家族だけではなく、十勝ではまだ100年ほどの浅い歴史の中で開拓移住が行われ、先祖が切り拓いた土地を受け継ぎ、家を建て、農業や林業が行われています。そこで『未来の家族にギフトが贈られる』ような、十勝で紡がれる継承の物語を描きたいと思いました。十勝の大自然を切り取っているように見えるかもしれませんが、農業や林業など、人の営みが垣間見えるように撮影しています。また、人の営みが見えない写真でも、その土地の土着的な特有の情景を撮ることにこだわっています。ランドスケープ撮影は、その場所やそこで生活する人の歩みを写すものであると考えているからです。人や歴史、自然に興味があるためにたどり着いた作風だと思います」。

そこで生活する人の歩みを写し、土着的な特有の情景を切り取る


「自分の作品としてはポートレート撮影が多いのですが、そこには人とのコミュニケーションが介在します。ランドスケープの場合は自分のタイミングで撮影できるので、より感覚的に撮ってはいますが、撮りたい瞬間を逃さないよう、その場所と対話をしている感じかもしれません。そして自分がその時、その場所にいることを大切にしてシャッターを切ります。ポートレートに比べるとランドスケープは変化が見えにくいものですが、都市でも地方の自然でも、環境の変化によって今撮らないと二度と撮れないような切実なものを、今後も撮影したいと思っています」。


GENIC vol.72【写真家それぞれのランドスケープ】
Edit:Satoko Takeda
GENIC vol.72

9月6日発売、GENIC10月号の特集は「Landscapes 私の眺め」。
「風景」を広義に捉えた、ランドスケープ号。自然がつくり出した美しい景色、心をつかまれる地元の情景、都会の景観、いつも視界の中にある暮らしの場面まで。大きな風景も、小さな景色も。すべて「私の眺め」です。